ME/CFSとは

【筋痛性オレンジjpeg脳脊髄炎/慢性疲労症候群とは】

この病気の中核症状は、日常生活における最小限の活動や簡単な知的作業などによってさえ、著しく急激に症状が悪化して身体が衰弱し、回復が非常に困難なこと。

中核症状の他に、睡眠障害、頭痛・筋肉痛、思考力・集中力低下、筋力低下、起立不耐性、体温調節障害、光・音・食物・化学物質等への過敏性などの症状が長期にわたり持続し、社会生活が送れなくなる神経難病。

通常、ウィルス感染後に発症するというのが欧米諸国における共通認識で、慢性疲労が重症化すると発症するわけではない。

脳と中枢神経に影響を及ぼす複雑な慢性疾患で、機能障害は全身に及び、癌や心臓病、エイズのような他の極めて重症な疾患と同様に、患者の生活の質を著しく低下させる。

1969年よりWHOで神経系疾患(ICD-11 8E49)と分類されており、国際的に認められた診断基準があり、疾病概念が確立している病気だが、詳しい病態は未だ不明で有効な治療法もなく、成人が発症前のレベルの身体機能を取り戻す率は0~6%との報告がある。

国内の患者は人口の0.1%と推定され、子供でも発症する。

日本では2015年に神経内科医による本格的な研究が開始され、現在、日本医療研究開発機構(AMED)において、「ME/CFSに対する治療・研究ネットワークの構築」と題する研究班と、「ME/CFSの血液診断法の開発」と題する研究班の2つが採択されている。

「ケータイ家庭の医学」に掲載されたME/CFSについての記事

【世界で最も信頼されているカナダの診断基準】

ME/CFSかどうかお悩みの方はカナダの診断基準をご覧下さい。ME/CFSと診断されるためには、その中の「ME/CFSの実用的臨床症例定義」を全て満たす必要があります。

【日本のME/CFS患者の実態を描いたドキュメンタリー映画

当法人ではME/CFSをさらに良くご理解頂くためにドキュメンタリー映画「この手に希望を」を製作。

【国際ME/CFS学会発行の臨床医のための手引書】

病気の説明や診断・治療法について書かれた国際ME/CFS学会発行の「ME/CFS 臨床医のために手引書}

【治療法について】

段階的運動療法と認知行動療法がME/CFSの効果的な治療法であることを示すエビデンスはどこにもないと、2016年に米国医療研究・品質調査機構(AHRQ)は結論付けている。

2017年末に研究班によってME/CFS治療ガイドライン案が出され、それに対する当法人の反対声明はこちらから。このガイドライン案の発表は中止された。

この治療ガイドライン案に対する国際ME/CFS学会の正式見解はこちらから

2019年10月に出版された上記の国際ME/CFS学会の見解に反する「手引き」に対する当会の評価はこちらから

病名について

日本では慢性疲労症候群(CFS:Chronic Fatigue Syndrome)と呼ばれているが、イギリス・カナダ・ヨーロッパでは、筋痛性脳脊髄炎(ME:Myalgic Encephalomyelitis)と呼ばれている。ただし、近年では世界的にME/CFSと両名併記されることが多い。

1955年にロンドンで集団発生し、1956年に医学誌「ランセット」に、筋痛性脳脊髄炎(ME)と名付けることが提案された。疾患により重度の身体障害を引き起こす患者が多いことから、後に「良性」を削除し、筋痛性脳脊髄炎(ME)として疾患の定義発表。

1984~86年の米国ネバダ州での集団発生後、1988年のアメリカの会議で患者の反対を押し切って慢性疲労症候群と命名。

【日本の患者の置かれている現状】

日本においては、ストレスが原因の疲労の病気としての研究が長年続いている。

世界保健機関で神経系疾患と分類されているにも関わらず、今まで神経内科の研究がほとんどなかったことは大きな問題。

治療薬の研究に国の予算が投じられてこなかった。

ほとんどの患者は通常の日常生活が送れず、職も失い、経済的に非常に困窮している。

慢性疲労症候群という病名ゆえに疾患の深刻さが矮小化され、ほとんどの医療関係者が「疲労の病気=怠けている」と思い込んでおり、患者たちは偏見と誤解に苦しんでいる。

指定難病の対象疾患からも、障害者総合支援法の対象からも外れており、介護が必要な状態でも福祉サービスが受けられないために、必要な休養を取ることが出来ずに症状が悪化。

専門医がほとんどいないために、診断すら受けられない人が日本中に数多くいる。

平成26年度厚生労働省の実態調査から浮かび上がってきた患者の深刻な実態】

寝たきりに近い重症患者が約3割。

家事が「できない」、「少しだけ」と回答した患者は7割近く
⇒これらの7割の患者が居宅介護を必要としているものと推察される。

軽症患者でさえも、86.9%の患者が家事後に症状が悪化し、44.6%が症状の悪化の回復に24時間以上を要し、寝たきりになることがあると回答。

通院後に寝込む患者が全体の76.7%、軽症でも58.0%。
⇒通院すら困難である状況で、必要な医療を受ける権利が保障されていない。

「通院以外の外出がほとんどできない」、「全くできない」患者は全体の46.3%、中等度の患者でも半数近い方が通院以外はほとんど外出できない。

20歳未満の発症は全体の19.1%、6割弱の就学患者が就学・通学を継続できなかった。義務教育の生徒17名中、特別支援教育を受けていた生徒は2名、6名が通学できなかったと回答。⇒義務教育を受ける権利すら保障されていない。

仕事を継続できたのは2%のみで、重症や中等度の患者のほとんどは働けず、現在働いている人はパートやアルバイトの方がほとんど。

【研究の進んだ海外の現状】

米国では1988年にアンプリジェンの治験を開始、2016年にはアルゼンチンにおいて承認。2015年10月に米国の研究拠点である国立衛生研究所(NIH)は、世界保健機関で神経系疾患と分類されているME/CFSの研究を強化するために、神経疾患のセクション主導で研究を行うと発表

2004年にノルウェーにおいて、ME/CFSにも罹患している患者の悪性リンパ腫の治療のためにリツキシマブを使用した結果、ME/CFSの症状にも効果があることが認められた。ME/CFSの治療薬としてリツキシマブの治験が開始され、医学誌「プロスワン」に2つの論文が発表。第三相試験が2017年9月に終了し、解析が進んでいる。

2016年にNIHの研究の詳細が発表され、急性感染症を示唆する症状の後に急激に発症した患者のみを研究対象とし、免疫の観点からの研究の重要性を明確化。ウィルス感染が免疫機能を変化させ、その結果、脳に機能障害が起きるという仮説を立てた。免疫機能障害を標的にした治療薬の効果を確かめ、国の承認を得ることを目指している。

【米国国立衛生研究所(NIH)のHPより】

ME/CFSは、いかなる種類の労作によっても激しい症状の再発につながる全身性の労作不全によって特徴づけられる、後天的な多系統にわたる慢性疾患で、本疾患には免疫障害・神経機能障害・認知機能障害、睡眠障害、様々な基本的な身体機能を調整する自律神経系の機能障害を含み、これらの症状によって、激しい疲労を伴う著しい機能障害が引き起こされる。

その他の症状として、広範囲の筋肉痛・関節痛、咽頭痛、リンパ節圧痛や頭痛などがみられ、少なくとも4分の1の患者は病気のある時期において、寝たきりか家から出られず、多くの患者は発症前のレベルの身体機能を取り戻すことは二度とない。