「ノーマライゼーション」に実態調査の報告

img073篠原 三恵子
月刊誌「ノーマライゼーション~障害者の福祉」7月号の「フォーラム2015」というコーナーに、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群患者の実態調査の報告~深刻な実態が明らかに」と題する、3ページの記事を掲載して頂きました。

国際ME/CFS学会は、患者の約25%は重症患者であると発表しており、国際学会や患者団体が推奨するカナダの診断基準には、「成人が発症前のレベルの身体機能を取り戻す率は、0~6%と報告されている」と厳しい現実が記載されており、日本においても同様の状況が危惧されていましたが、日本における重症患者の日常生活困難度は一度も明らかにされたことがありませんでした。この度、厚生労働省より委託を受け、聖マリアンナ医科大学によって、平成26年度厚労省「慢性疲労症候群患者の日常生活困難度調査事業」が実施されました。

対象は医療機関においてME/CFSと診断された患者で、重症患者は医療機関でその実態を把握することが難しいため、HPやメディアを通して広く市民に呼びかけ、通院すらできない重症患者にも、訪問や電話での聞き取り調査を行いました。最終調査解析人数は251名、患者の平均年齢は41.8歳でした。患者全体の30.2%は、「常に介助がいり、終日就床が必要」か「しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床」の重症患者、「通常の社会生活や軽作業は不可能」か「調子のよい日は軽作業可能だが、週のうち50%以上は自宅にて休息」の中等度の患者も約35.1%おり、日常生活が極めて困難な患者がいかに多いかが、明らかになりました。

家事が「できない」、「少しできる」と回答した患者が7割近くおり、軽症群においてさえも、86.9%の患者が家事後に症状が悪化し、44.6%が症状の悪化の回復に24時間以上を要し、寝たきりになることがあると回答しました。このことは、患者の日常生活困難度がいかに深刻であるかを示し、居宅介護の必要性を強く示唆しています。通院後に寝込む患者が76.7%もおり、「通院以外の外出がほとんどできない(40.2%)」、「全くできない患者(6.6%)」は全体の46.8%に上り、重症患者の約85%、中等度の患者でも半数近い方が通院以外はほとんど外出できず、いかに患者の社会参加が困難で、社会的に孤立しているかも明らかになりました。

発症時通学していた患者は61名(24.3%)で、20歳未満の発症患者は、48名(小学生9名、中学生8名、高校生21名、大学・専門学校生等10名)で、患者全体の19.1%でした。発症後、なんとか通学を続けられたのは26名(42.6%)のみで、義務教育の生徒17名のうち、特別支援教育を受けていた生徒は2名しかおらず、6名が通学できなかったと回答しており、義務教育を受ける権利すら保障されていない現状が明らかになりました。聞き取りに応じた選挙権のある回答者118名中、選挙権を行使できたと答えたのは35名(約29%)であり、重症になるほど選挙権を行使できないことが明らかになりました。

症状を悪化させる要因のトップは「無理をせざるをえない状況」で、7割の患者が要因としてあげ、「無理しても家事をしなくてはならない」、「経済的な理由から働かざるをえない」、「職場や学校で配慮が得られない」などの回答が寄せられました。一番困っていることのトップには「症状が耐え難い」があげられ、患者がいかに深刻な症状に悩まされているかがわかります。他には、「専門医がいない」、「社会的孤立」、「経済的困窮」、「周囲の無理解」等が続きます。

難病新法が成立し、対象疾患が約300に拡大されようとしていますが、ME/CFSは客観的な指標を含む診断基準が確立していないため、障害者総合支援法の対象疾患にも医療費助成の対象にもなりませんでした。患者の深刻な実態が明らかにされた今、対象を病名や患者数で区切らず、生活の困難さに応じて支援する仕組みへ抜本的に変えることが必要ではないでしょうか。日々「制度の谷間」に置かれて苦しんでいる患者が、希望を持って生きていかれるようになることを願います。

 

広告