Voices from the Shadows 「 闇からの声なき声」

ME/CFSの啓発ドキュメンタリー映画

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New dvd cover frontこのドキュメンタリー映画は、20年以上も重症の患者さんを介護されているご家族によって2011年にイギリスで製作され、すでに八ヵ国語に翻訳されています。暗闇と沈黙の中で伏し、忘れ去られようとしてきた重症患者たちは、病院に行くこともできず、存在していることすらほとんど誰にも知られることなく、その声は闇に葬られてきました。孤立した中でやむにやまれぬ思いにかられて、このドキュメンタリー映画は生まれました。その声なき声にどうか耳を傾けてください。

この病気は1950年代にイギリスで集団発生し、1956年5月の医学誌「ランセット」の匿名の論説欄で、筋痛性脳脊髄炎 (ME)という疾患概念が世界に紹介されました。映画の中には世界的権威の3人の専門医が登場し、この病気の歴史的背景を説明します。世界保健機関(WHO)は1969年以来、MEを神経系疾患と分類しているにも関わらず、70~80年代にこの病気を、心因性疾患または精神疾患と再分類する試みがありました。そこで違う病名が必要になり、1988年にアメリカの患者達の反対を押し切って、慢性疲労症候群(CFS)という病名がアメリカで導入されました。

研究が進んでいたイギリスでも、MEはやがて精神科で扱われるべき病気とみなされるようになり、次々と悲劇が・・・ この病気は多系統に及ぶ複雑な慢性疾患で、脳と中枢神経に影響を及ぼします。通常 ウイルス感染後に発症し、免疫系や神経内分泌系、循環器系や筋骨格系、自律神経系など全系統が影響されるため、機能障害は全身に及びます。これほど深刻な病気なのに、医学界はその深刻さを理解しません。なぜこんなにも汚名がつきまとい、疑われ、激しく衰弱する病気にかかっているのに仮病を使っていると思われるのでしょうか。

映画の中で、前国際ME/CFS学会副理事長のレオナード・ジェイソン博士と、イギリスのサンダーランド医化学大学名誉教授は、「オクスフォード診断基準やフクダ診断基準は、分類の幅が非常に大きいために、この病気ではない人もMEの範疇に入ってしまう可能性があることが問題です。MEの重要な定義は『多系統に及ぶ複雑な慢性疾患』だということであり、この病気の診断や理解のために、そのことが反映されている最も良い診断基準はカナダの診断基準ですので、この基準を起用すべきです。また、有酸素運動や段階的運動療法、活動プログラムを少しずつ強化すると、大うつ病性障害の方は回復しますが、ME患者は悪化しますので、大うつ病性障害とMEをはっきり識別した研究が必要です」と語ります。

andrew小児患者やその家族は、近年の医学的無知と不信が存在する風潮のなかで、特に弱い立場に追いやられています。多くの場合、通常の検査結果に異常がないと、疑いの目にさらされます。時に 小児科医は診察を拒否し、一般医に送り返すか、精神科医への片道切符を渡します。極めて不運な少数の症例においては、専門家の矛先が家族に向けられ、「代理ミュンヒハウゼン症候群」などを疑われ、「母親が自分のニーズを満たすために子供を病気にさせている」と言われたりします。イギリスにおいて、児童保護機関の介入によって家族が引き離されたり、里親に出されるケースもあることが、映画の中で明るみに出されます。

ソフィアは病院に強制入院させられ、親が取り戻したときには衰弱し、経管栄養になり、静かに息を引き取ります。死後の脊髄検査の結果、明確な病理学的変化が同定されました。調べた4つの脊髄後根神経節のうち、3つに神経節炎が発見され、激痛と過敏症はそこから生じていたことがわかります。他のME患者の検死からも、類似した神経組織の炎症の証拠が発見されています。勇気あるご家族によって、小児筋痛性脳脊髄炎の患者の実態が次々と明かにされます。イギリスの医療制度や福祉制度が、患者とその家族に負わせた悲劇を描いたこの衝撃のドキュメンタリーを、一人でも多くの方にご覧頂きたいと思っています。2011年にカナダで開催された国際ME/CFS学会においても上映されており、同年の米国ミルバレー映画祭で、国際ドキュメンタリー部門観客賞を受賞しています。

2011年 イギリス作品(63分)
製作 ナタリー・ブールトン&ジョシュ・ビックス
翻訳 まーくハウス&ぷろじぇくと

英語の正式なウェブサイトはこちらをご覧下さい。
http://voicesfromtheshadowsfilm.co.uk/

各地で上映会を企画しております。詳細はホームページの「今後のイベント」をご覧ください。

cover image このDVDは、重度のME/CFS患者の非常に厳しい現状や衝撃的な内容を取り上げたものです。ME/CFS患者がこれを見て励まされるという内容ではないことをご了承ください。成人による鑑賞のみが許可されており、未成年者の視聴には配慮が必要です。

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【売り切れ】
イギリスの製作者の希望で、DVDの販売は「まーくハウス&ぷろじぇくと」が一括して扱っておりましたが、製作者側も売り切れのため、再入荷の予定はないそうです。

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このドキュメンタリー映画には、世界的に有名な3人のMEの専門医の方が登場し、この病気の歴史や最新情報を話して下さいます。その3人の先生方をご紹介致します。

レオナード・ジェイソン博士
アメリカ、シカゴのデポール大学心理学部教授。
2006~2012年 アメリカ政府によるCFSに関する諮問員会の委員。
2004~2009年 国際ME/CFS学会の副会長。

ニゲル・スパイト博士
イギリス、ダラム市の顧問小児科医を25年以上務める。
イギリスME協会、25%グループ(重症患者の患者団体)、若いME患者のための委員会、ウェールズME協会の顧問医師。
MEのための国際的合意に基づく診断基準の共著者の一人。

マルコム・フーパー博士
1993年よりイギリスのサンダーランド大学医薬品化学部名誉教授。
ME/CFSについてイギリス国内はもとより国際学会などでも講演。

お話くださっている中からいくつかご紹介いたします。

Dr. Jason-4-300x168ジェイソン博士
◎MEは、癌や心臓病、エイズのような、他のいかなる極めて重症な疾患と同様に重大な病気です。
◎患者には信じ難いほどの機能制限があると、科学の分野では意見が一致していますし、これらは多くの研究によって裏付けられています。
◎なぜこんなにも汚名や不信が存在するのか、実際には激しく衰弱する病気にかかっているのに、なぜ仮病を使っていると思われるのか、私はその理由を見つけることに関心があります。これは心因性疾患ではなく、器質的疾患です。
◎MEは極めて破壊的な病気で、患者に信じがたいほどの機能制限を課します。「疲労」という言葉はあまりにも一般的で、重篤性を伝えきれません。
◎オックスフォード診断基準やフクダ診断基準は、イギリスや他の国でよく使われていますが、重要な問題点は、これらは分類の幅が非常に大きいために、この病気ではない人もMEの範疇に入ってしまう可能性があることです。
◎もし有酸素運動や段階的運動療法をさせたり、主要な治療法として活動を取り入れ、少しずつ強化すると、大うつ病性障害の人は実際に回復しますが、ME患者は悪化します。

Dr. Speight01-300x168スパイト博士
◎患者は20以上の症状を抱えていることもあり、それには明かなパターンがあります。つまり身体的及び精神的労作によって、疲労感や他の諸症状が悪化しうることこそが、この病気の中核症状です。
◎全ての問題がそこから派生している根本的な問題は、医療者側がMEは身体的疾患であるという事実を信じようとしないことにあると思います。
◎重症の領域の患者達こそは、これが本当の病気であり、精神疾患的な原因によっては到底説明がつかないことを示す、最も説得力のある証拠の一つです。
◎少数の非常に重症な患者の存在を認識することが重要です。最もひどい扱いを実際に受けているのが重症患者で、専門医から見放される危険性に最もさらされており、一般医に任され、医療制度やメディアからも無視されています。
◎小児期MEの極めて不運な少数の症例においては、専門家の矛先が家族に向けられ、「代理ミュンヒハウゼン症候群」などの卑劣な説明を持ち出してきて、「母親が自分のニーズを満たすために、子供を病気にさせている」と言われたりします。
◎今、私達に必要なことは、医師がMEを正しく理解し、身体的疾患として診る責任を受け入れ、その生物学的原因を探る研究をさらに行い、精神医学を強調しないようにし、この方向性で医学教育を進めることです。

Dr. Hooperフーパー博士
◎MEは精神疾患ではありませんし、精神及び行動障害と関連する病気でもありません。
◎1969年にWHO(世界保健機関)は、筋痛性脳脊髄炎を神経系疾患の項目に入れ、MEを認知しました。この病気に対する研究を認め、今もG93.3に神経系疾患として、神経学の章に記載されています。ですから、これが何を意味するかは明確に理解されており、MEとは筋肉痛を伴う脳と脊髄の炎症を意味します。
◎70年~80年代にこの病気を、心因性疾患または精神疾患と再分類する執拗な試みがあったのです。そこで異なる病名が必要になり、アメリカの患者達の反対を押し切って、始めてアメリカにおいて、その病名が導入されました。この「慢性疲労症候群」こそ、私達が科学と医学において大きな論争を巻き起こしている理由です。
◎MEを表わす際に重要なことは、「多系統に及ぶ複雑な慢性疾患」であるということだと思います。この病気の診断や理解のために、そのことが反映されている最も良い診断基準は、カナダの診断基準です。
カナダの診断基準は臨床医によって書かれた、臨床医のためのものですから、臨床医はこの基準を使用して患者を診察すべきです。
◎MEによる死は本当に恐ろしいもので、「MEが死に至る病気ではない」という示唆は、事実無根です。
◎私達はMEに真剣に取り組み、この病気が根拠を示すことが可能な身体的原因を持つ身体的疾患であることを示す、何千という研究論文を発表した人々に耳を傾けるべきです。

3人の医師の方の話は全部を翻訳してHPに掲載する許可を得ておりますので、下記からご覧ください。
専門医の方々の発言(日本語)
専門医の方々の発言( 英語の原文)