ME/CFSと映画「アイ・リメンバー・ミー」

「アイ・リメンバー・ミー」を語る

篠原 三恵子

三恵子2「アイ・リメンバー・ミー」は、ME/CFSの実態を描く感動のドキュメンタリー映画です。 2008年の冬にカナダに住む長女が、そこの筋痛性脳脊髄炎&線維筋痛症のサポートグループで、このドキュメンタリーを上映することを知り、この映画の存在を私に知らせてくれました。ちょうどその頃、初めて5人の患者さんと会い、将来的に患者会を作りたいという話をしていたところでした。この病気の深刻さを理解して頂くためには、このアメリカで製作されたDVDを見ていただくのが一番です。この病気の正しい認知が広がることを願って、すぐに翻訳に取りかかりました。
この映画を制作したキム監督自身がME/CFSの患者で、自分のかかっている病気が何であるかを知ろうとして、全米各地を訪ね歩きます。医者に理解してもらえず、医者達の説明に納得できない中でのご自身の辛い闘病生活が描かれ、正直に、いつか自分の手で命をとる決断をしなければならないと思った時期があったことも告白しています。病気のことを医者やまわりの人に分かってもらえない辛さ。この病気の持つ破壊的な力や人々の絶望感などを、多くの患者さんが共通に経験していることを描きます。
重症の高校生の男の子は、自分で食べることもできずに経管栄養に頼り、部屋からまったく出ることもできずに2年くらいを過すのですが、卒業式にはどうしても出席したいという夢を描き続け、数名の救急隊員に付き添われ、ストレッチャーに乗って学校に駆けつけるシーンは感動的です。かたや、病状がどんどん進行するにもかかわらず、医者から理解されないがために、最後には命を絶つ決断をした女性の残した肉声のテープに心が痛みます。「死にたくはないけれども、これ以上生きていくことができない」と訴えるその女性と、残された家族の辛い姿は頭から離れません。
このドキュメンタリーは、「人間とは何か」を問いかけてきます。人間が本来持っている生きる意志の強さ、どんなに小さくとも目標を持って生きることの大切さを描いています。
私たちの病気(ME/CFS)は見た目は元気そうなので、理解してもらうのが本当に困難です。水平に近いほど倒した車椅子(チルド付きリクライニング式)に乗っている私を見てさえ、知り合いの方たちに必ず、「元気そうね」と声をかけられるくらいですから。日本でも寝たきりの患者さんが多いことなどは報告されておらず、そのために社会保障を受けるのに、今までどれほど私が闘わなければならなかったことか。このドキュメンタリーを見ていただければ、この病気の深刻さを分かってもらえると思い、翻訳を思いたちました。
このDVDには聴覚障害者のための英語の字幕が付いているのですが、次女がそれを全部打ち込んで印刷してくれたものを、ベッドの上で病気の許す限り、少しずつ訳しました。一人でも多くの方に見ていただきたいと思っています。
*医療ガバナンス学会のメールマガジンMRICに「アイ・リメンバー・ミー」について投稿しました。
*キム監督からのメッセージは こちらからお読みになれます

映画 『アイ・リメンバー・ミー』は在庫がなくなりました。増刷の予定はございません。今までどうもありがとうございました。

ME/CFSと映画「アイ・リメンバー・ミー」

2000年 米 カラー NTSC 4:3スタンダード 74分
★作品紹介
「アイ・リメンバー・ミー」のDVDの写真難病、慢性疲労症候群(CFS)の実態を描いたアメリカのドキュメンタリー映画。製作、監督したキム・スナイダー(女性)自身が、CFSの患者。
ある日突然に病に襲われ、原因も治療法も不明な病気CFSと診断されたがキム監督が、同じように苦悩する全米各地の患者や医師たちを訪ね歩き、ミステ リーじみた発症と病気の歴史。病気と患者に対する社会的偏見。政府や医師会などの不可解なサボタージュとでたらめな報告書などを明らかにしながら、患者や 家族たちの、あきらめない生き方、原因と治療法を探る良心的な医師たちの努力などを紹介した、きわめて社会性にすぐれた感動のドキュメンタリー映画です。映 画に、米女子サッカー会の英雄ミシャル・エイカーズや、映画「ティファニーで朝食を」のブレイク・エドワーズ監督などがCFSの患者として登場し、患者た ちの苦しみの多くが社会的無知と偏見によってもたらされていることを告発しつつ、決してあきらめない生き方を伝えます。

キ ム監督は、楽観的にこの病気を伝えているのではありません。むしろ、原因不明で明確な治療法がない深刻な実態と、不条理にも長期に渡る難病でとの闘いに疲 れ果てた人々の現実を冷静に描いています。それでも深く胸を打つのは、いかなる状況にも知的に立ち向かおうとする人々の生き方が描かれているからです。

映画2000年に全米で公開、同年デンバー映画祭でベスト・ドキュメンタリー受賞、ハンプトンズ映画祭ドキュメンタリー選外佳作賞
2001年サラソタ映画祭観客賞、ベスト・フィーチャー選定、などを受賞。

監督 キム・スナイダーとメインスタッフ

キム・スナイダーは、1986年にジョン・ホプキンズ大学の高度国際学の修士課程を卒業。国際的な映画コンサルタントとして働き、アメリカと東・中央ヨーロッパの映画界を橋渡しとする、いくつかの国際的な映画のワークショップをプロデュースして、絶賛されました。続いて「雪の上の影」(ハンガリー映画、1990年の新人監督映画祭)や、「からす」(ポーランド映画、1992年のアメリカのテルライド、トロントカ ンヌ映画祭)などを含む、批評家から絶賛を浴びたいくつかの東・中央ヨーロッパの映画のアメリカ側のプロデューサーの代表となり、それによってアメリカの 映画館での配給を確かなものとしました。1994年に、ペギー・ラジスキーが監督し、オスカー賞を受賞した短編映画「トレボー」を共同プロデュース。この映画は十代の子どもたちの自殺、同性愛に 対する偏見や多様性などの問題などを扱ったもので、非営利の教育的メディア・キャンペーンの礎石として用いられ、後にHBO(テレビ局)で放映されまし た。病気(CFS)を患ったときには、ジュディ・フォスター監督の「休暇のための家」のアシスタント・プロデューサーをしていました。「アイ リメンバー  ミー」は、キム監督のデビュー作品です。海外での評価・レヴューは こちらからご覧になれます。 「映画とつどいの感想」は こちらからご覧になれます