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20.7.9CNNニュース:NIHファウチ博士の発言

7月9日付のアメリカのCNNニュースの「July 9 coronavirus news」欄に、「新型コロナウイルスは疲労症候群を引き起こす可能性があるとファウチ氏は語る」と題する記事が掲載されました。アメリカ国立衛生研究所(NIH)の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長であり、米国におけるホワイトハウス・コロナウイルス・タスクフォースの主要メンバーの一人であるアンソニー・ファウチ博士が、COVID-19後に長引く症状は筋痛性脳脊髄炎(ME)の症状に似ていると発言したことが取り上げられました。

アンソニー・ファウチ博士は木曜日(9日)に国際エイズ学会が主催した記者会見で、一部の患者は新型コロナウイルス感染後に長期にわたる疲労症候群を発症するエビデンスがあると語りました。「COVID-19に関連したウイルス感染後症候群であろう。」以前は慢性疲労症候群と呼ばれていた筋痛性脳脊髄炎(ME)患者の症状に似ていると語りました。

「何人かに聞いた話を基にすれば、いわゆる回復後に何週間にもわたって、多くの点で普通には生活できなくなってしまうウイルス感染後症候群にかかっている人が相当数いることは、疑いようもない。様々なチャットグループがあり、クリックして見ると、回復したけれど普通の生活に戻れない人々がいるのが分かります」とファウチ博士は語りました。彼らは、MEの症状に似ているブレイン・フォグ(脳の中に霧がかかったようで頭が働かない)、集中力低下、疲労などを報告しているとも語りました。

※英語の原文はこちらからご覧頂けます

20.7.10CNNニュースにCOVID-19後不調の記事

7月10日付のアメリカのCNNニュースに、「3月から新型コロナウイルスの症状と闘うオレゴン州の女性」と題する記事が掲載されました。これと関連して、アメリカの国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長であるアンソニー・ファウチ博士がCOVID-19後に長引く症状は筋痛性脳脊髄炎(ME)の症状に似ていると発言したことが取り上げられました。

オレゴン州に住む37歳のチェルシー・アリオナーは、新型コロナウイルスの症状と4か月以上闘っています。「クリニックへの通院や2、3日前に病院に行った以外、ほとんど家から出ていません」と語ります。彼女の話は、「このウイルスは呼吸器系以外にも、長期にわたる様々な症状が続く可能性がよくある」と専門家達が言ってきたことを説明しています。

アリオナーは3月9日に頭痛の後に微熱が出たのが、試練の始まりでした。30日後に検査で再陽性の結果が出て、その後症状は増えていきました。左耳の聴覚喪失、呼吸困難や口の渇き、「COVID・ブレイン」と自分で呼んでいる短期記憶力低下にも苦しみました。時に、エスプレッソを飲んだ後のように、アドレナリンが体中を駆け巡るように感じました。怖いほど脈が速くなることも経験しています。睡眠障害はよく起こり、文章を言おうとして言葉が出てこない時もあります。

彼女が対処するのに役立ったのは、「長引くCOVIDと闘う人達」のためのフェイスブックのグループでした。彼女は70か国のメンバーがいるこのグループの管理者です。「今まで経験した何よりもはるかにつらかったです。」

アリオナーの件には直接コメントしませんでしたが、国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長のアンソニー・ファウチ博士は木曜日(9日)に、国際エイズ学会が主催した記者会見で、一部の患者は新型コロナウイルス感染後に長期にわたる疲労症候群を発症するエビデンスがあると語りました。「COVID-19に関連したウイルス感染後症候群であろう。」以前は慢性疲労症候群と呼ばれていた筋痛性脳脊髄炎(ME)患者の症状に似ていると語りました。

「何人かに聞いた話を基にすれば、いわゆる回復後に何週間にもわたって、多くの点で普通には生活できなくなってしまうウイルス感染後症候群にかかっている人が相当数いることは、疑いようもない。様々なチャットグループがあり、クリックして見ると、回復したけれど普通の生活に戻れない人々がいるのが分かります」とファウチ博士は語りました。彼らは、MEの症状に似ているブレイン・フォグ(脳の中に霧がかかったようで頭が働かない)、集中力低下、疲労などを報告しているとも語りました。

※英語の原文はこちらからご覧頂けます

 

20.6.25ジェイソン先生のCOVID-19の論文

6月25日に、シカゴのデポール大学教授のレオナード・ジェイソンン先生の、「過去の流行から学ぶウイルス感染後疲労とCOVID-19」と題する論文が、Taylor&Francis Onlineに発表になりましたので、一部をご紹介致します。ジェイソンン先生は2004~2009年に国際ME/CFS学会の副会長を務められ、英国のドキュメンタリー映画「闇からの声なき声」にも出演されています。

要約
新型コロナウイルスによって引き起こされたCOVID-19のパンデミックは、世界中の人々に深刻な影響を及ぼし、死亡率も高い。本論文では、COVID-19後の回復に関連しうる合併症の可能性を評価するために、過去の流行や感染症が与えた健康上の短期的・長期的影響についての文献をレビューする。流行後又は感染症後の回復に関する過去の研究において、このような合併症には激しい疲労の発症が含まれることが示唆された。感染の重症度に加え、多くのCOVID-19患者が経験した「サイトカインストーム」のような一定の要因が、その後の健康上の問題の発症に寄与している可能性がある。過去の流行や感染症に見られたパターンが、現在のCOVID-19のパンデミックにおいても再発しうると我々は提案する。

ウイルス感染症:流行
近代における最も破壊的な流行は、H1N1亜型インフルエンザウイルスによって引き起こされたスペイン風邪である。このパンデミックによって世界中で亡くなった人は、2470~5000万人と研究者達は推定している。回復した人の中には、回復期に合併症を経験した人もおり、例えば、1000人の内200人は完全に回復せず、その中の40人は重症のままであった。身体的労作が回復を妨げ、又は死に至らしめた一つの要因として挙げられている。疲労がスペイン風邪に最もよく見られた長期的予後であった。

他の流行発生後にも、ウイルス感染後疲労は見られた。2003年にSARSの集団発生があり、タンジ―らは退院後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月に、回復患者の健康アウトカムを評価した。研究対象の半分以上の患者が回復期にずっと疲労を経験し、64%が3ヶ月後にも、54%が6ヶ月後にも、60%が12ヶ月後にも疲労を報告し、症状は睡眠障害を伴って起きることが多かった。

さらにラムらは、香港においてSARSから回復した患者の4年後のフォローアップ評価を実施し、40.3%が慢性疲労を、27.1%がME/CFSの診断基準を満たしていることを認めた。なかでも、多くの患者が重度又は何もできなくなるほどの疲労、筋肉痛、睡眠障害を経験していた。

2009年にH1N1亜型インフルエンザのパンデミックが起きた。マグナスらは、ノルウェーでこのパンデミックの研究を行い、1ヶ月にME/CFSの発生率が10万人中2.08人であることが分かった。30歳以下の人の発生率の方が高く、若い世代に感染後にME/CFSを発症するリスクが高いことが示唆された。

エボラウイルス感染症から回復した患者にも、ウイルス感染後疲労が見られた。ウイルソンらは、エボラウイルス後に異常なレベルの疲労を経験した人は、28%と推定した。エボラウイルス後症候群は、ME/CFSによく見られる症状、中でも疲労、筋肉痛・関節痛、睡眠障害などは共通していた。

ウイルス感染後疲労の発症は、他の研究においても認められる。コープらは、一般的なウイルス感染症発症6ヶ月以内では、17.5%の患者が慢性疲労を発症することを見出だした。さらにガーシアらは、ウエストナイルウイルス感染症から回復した人の約31%が慢性疲労を経験し、その内の64%はME/CFSの診断基準を満たしていることを認めた。

疲労は、パンデミックではないウイルス感染後にも見られた。例えば、ボゴビックらは、ダニ媒介性脳炎から回復している間に、3分の1の患者が持続的疲労と筋肉痛を経験したことを見出だした。脳炎後症候群と分類され、これらの症状は何年も持続する可能性がある。

EBウイルスは、ウイルス感染後疲労の原因として最もよく研究されてきた。EBウイルスは伝染性単核球症とよく関連付けられる。ホワイトらは、伝染性単核球症発症後6ヶ月に、研究対象者の9%がME/CFSを発症したことを認めた。前向き研究においてキャッツらは、伝染性単核球症を発症した12~19歳の思春期の参加者301名をフォローし、ME/CFSを発症した率は6ヶ月後に13%、12ヶ月後に7%、24ヶ月後に4%であった。

ウイルスが原因でない疲労についても調査が行われた。コクシエラバーネティーが原因の珍しい細菌感染であるQ熱発症5年後の疲労のレベルを、アイヤらは評価し、疲労や関節痛などの症状のあった研究対象者がME/CFSの診断基準を満たしていることを認めた。

ノルウェーにおける飲料水媒介のランブル鞭毛虫の地域的集団発生は、ジアルジア症を引き起こし、長期的疲労の原因ともなった。集団発生の2年後、モーチらは集団発生患者の41%が疲労を報告した。ネスらは、ジアルジア症に感染した患者の5%が二度と完全に回復することなく、その内の60%がME/CFSの診断基準を満たしていた。デングウイルスが原因のデング熱から回復した患者にも、広く疲労が見られた。

過去の流行や、ウイルス感染・非ウイルス感染の断続的研究によって示された豊なエビデンスを考慮すると、COVID-19から回復した患者の中には、ウイルス感染後疲労や他の様々な症状を発症する人がいるであろう。

結びの言葉
SARSやエボラウイルスのような流行の回復者の中には、高レベルのウイルス感染後疲労がよく見られることが、過去の研究によって示された。さらに、流行やパンデミック規模以外でもよく起こる伝染性単核球症のような感染症と疲労は、関連付けられてきた。この種の結果は、ウイルス感染に限らず、細菌感染でも同様である。このようなエビデンスを考慮すると、我々はCOVID-19から回復した患者の中には、疲労や他の合併症を発症する人がいることを予期する。

闘病中に経験した「サイトカインストーム」が持続し、長期に及ぶ疲労などの他の合併症に寄与しているかどうかを評価するために、COVID-19から回復した患者のサイトカイン・ネットワークを解析する研究をする必要がある。

COVID-19においてもウイルス感染後疲労が起きるという我々の主張は、患者団体によって実施された調査に関するインターネットの最近のいくつかの投稿によっても支持される。例えば、ボディーポリティクスCOVID-19サポートグループは、640人のCOVID-19患者が2週間以上経験した症状のデータを集めた。調査時において、91%の回答者は40日間症状を経験した後も完全には回復していないと報告した。さらに70%の患者が、病気の異なるステージにおいて、新しい症状があらわれたと報告した。最も憂慮すべきは、多くが様々な情報提供者から、回復力に影響を与えるような体系的なスティグマを経験していたことだ。

他の事例報告は、COVID-19から完全に回復していない患者の多くが、疲労、筋肉痛、心臓の問題、湿疹などの長引く症状を経験している。事例的エビデンスは、COVID-19から回復中の患者の中には、ME/CFSのような症状を発症している人がすでにいることを示唆している。もう一つの患者から得られたサンプルにおいてペトリソンは、COVID-19がME/CFSやカビ関連の疾患の患者に共通する悪化する症状に、長期的影響を与えることを示唆した。

この流行が始まって以来、COVID-19の長期的経過を研究するのに十分な時間は経過していないが、長期に及ぶ深刻な健康上の予後が起きる可能性に関する報告が表れてきている。例えば、イタリアの数人の患者がギランバレー症候群を発症した。川崎病を発症した小児の報告もあり、COVID-19が引き起こした肺の瘢痕化、血栓、腎不全、神経系の合併症などの報告もある。シらは、416人のCOVID-19で入院した患者の19%に、心臓障害の兆候があることを示した。COVID-19に関するこの種の知見は、一部の回復者はウイルス感染後疲労を含む様々な長期的な合併症を経験するであろうという我々の主張を補強している。

※英語の原文はこちらからご覧頂けます

20.7.10毎日新聞にコロナ「後遺症」研究の記事

7月10日付けの毎日新聞WEB版に、「新型コロナ『後遺症』研究へ 退院後も息苦しい、疲れやすい… 厚労省、2000人対象」と題して、厚労省が新型コロナウイルスの「後遺症」の実態を調べる研究を、8月から開始することが取り上げられました。

厚生労働省は10日、新型コロナウイルス感染者で、退院後も息苦しさが続いて自宅で酸素吸入が必要だったり、疲れやすいなどの「後遺症」が続く人がいるとの報告を受け、原因を調べる研究を8月から3月末まで行うと発表しました。炎症で肺の組織が壊れるなどの原因が考えられ、原因が分かれば、治療や予防の方法を調べる方針。

研究では、症状の程度に応じて対象者2000人を二つのグループに分け、症状が重く酸素投与が必要だった20歳以上の人には退院後、残っている症状を聞き取り、肺のCTや機能を調べる検査を実施。症状が比較的軽かった人は、残っている症状の聞き取りや血液の分析を行います。

20.7.10NHK News Webに「後遺症」研究の記事

7月10日付けのNHKのニュースWEBに、「新型コロナ 後遺症の実態を研究へ 2000人対象 厚労省」と題して、厚労省が新型コロナウイルスの「後遺症」の実態を調べる研究を、来月から開始することが取り上げられました。

新型コロナウイルスの感染者は、陰性になって退院後も、数か月にわたって発熱やけん怠感が続いたり、呼吸機能や運動能力の低下で、日常生活に支障が出たりする人が多くいることが、国内外で明らかになっています。

加藤厚生労働大臣は10日の会見で、後遺症の実態を調べる研究を来月から始め、来年の3月末まで行う予定であることを明らかにし、「研究の成果は国民に情報発信していきたい」と話しています。

研究は新型コロナウイルスに感染後、陰性となったおよそ2000人を対象に行われ、重症で酸素投与が行われた20歳以上の人は呼吸機能への影響を、軽症の人は回復後に続いている症状を聞き取ります。症状が続く人の共通項目を特定し、後遺症が出やすい要因を調べ、退院後の治療や予防などに役立てます。

20.7.7毎日新聞に新型コロナ「後遺症」の記事

7月7日付けの毎日新聞WEB版に、「『健康とはほど遠い』 陰性になっても続く倦怠感と嗅覚障害 新型コロナ『後遺症』」と題して、新型コロナウイルスの「後遺症」について取り上げられました。新型コロナの「後遺症」はまだ明確になっていなせんが、警鐘を鳴らす学会や医師も出てきています。

千葉県の男性(21)は4月1日に発症。高熱の他に下痢や嘔吐、血痰症状も加わり、近くの内科を受診し7日にPCR陽性との連絡を受けました。保健所からは「3~4日以内に入院できる」と言われましたが、入院できたのは、連絡から22日後の29日でした。CT検査を受け、肺炎と診断され、入院中には手足に湿疹も出ました。PCR検査で2回陰性判定となったため、5月9日には退院しました。

退院日にも37.5度の熱があり、退院後も発熱、倦怠感や頭痛、嗅覚障害も続き、買い物に行かれず、3日連続食事できない時もありました。血液検査で脱水症状を指摘され、再入院したことも。医師から「家族の助けなしでは生活できない」と言われ、実家に戻りました。「大学では5月半ばからオンライン講義が開始されていたが、試験勉強をするなどはとても無理」と大学の休学も決めました。

実家に戻ってからも、発熱、倦怠感や頭痛、湿疹などの症状は続き、「健康とはほど遠い」といいます。近くの病院を受診しましたが痛み止めが処方されただけで、男性は「いまだ社会復帰できておらず、ずっと続く症状の原因が分からないのが怖い。陰性になっても症状が続く人がいることを知ってほしい」と話しています。

新型コロナに感染すると、全身に血栓が発生することが明らかとなっており、新型コロナの後遺症の可能性を指摘している大阪市の太融寺町谷口医院院長は、「正確な作用機序は分かっていないものの、肺から侵入したウイルスが血中に入るとさまざまな臓器の細胞の表面に発現しているACE2受容体に結合することは確実で、ACE2受容体が存在する血管内皮細胞にウイルスが侵入して起こった血管内皮細胞炎と関係があるのかもしれない」といいます。

また、「新型コロナは、血栓が身体のさまざまな組織に影響を与えること、血管内皮細胞炎が起こり全身に影響が及ぶこと、さらに、重症化すると免疫系のさまざまな物質が嵐のように吹き荒れて(サイトカインストーム)、多臓器が障害されることなどから、重症化すれば単なる風邪とはまったく異なる」と話しました。

医療法人社団広士会理事長によると、運営する東京都内のクリニックに、「37度前後の微熱がずっと続く」「胸が苦しい」「倦怠感がある」などと訴える患者が、4月から5月末までに約180人来院。うち、5人は感染確認後に陰性となった患者でした。

同理事長は、患者の75%が1カ月以上症状に悩まされていますが、病院の血液検査では異常がないことから、医師が精神的なものではないかと診断するケースがあり、「ショックを受けている患者も多く、安易に精神的なものと医療従事者が決めつけることに警鐘を鳴らしたい」と話しています。

日本血栓止血学会は新型コロナの感染で、血管に炎症を起こし血栓症を発症する可能性を指摘しており、特に重症者で血栓症を発症する頻度が高く、全身症状を悪化させる因子となっているといいます。 厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」には「後遺症」に関する記載はありませんが、同省担当者は「今後も情報収集を続け、必要であれば手引きに掲載していく」としています。

 

 

20.7.9東京新聞に新型コロナ「後遺症」の記事②

7月9日付けの東京新聞に、「肺繊維症、免疫暴走などの見方も~ウイルス 臓器などに残留か」と題して、新型コロナウイルスから回復した人のうちに、呼吸器疾患などの後遺症が生じる可能性について取り上げられました。日本呼吸器学会によると、後遺症が疑われるケースは海外でも確認されており、イタリアの呼吸器学会はコロナから回復した人の3割に呼吸器疾患などの後遺症が生じる可能性を指摘。中国やフランスでは、肺から酸素を全身に供給する機能の低下が報告されています。

後遺症を含めた長期的な影響はまだ分かっていません。「コロナウイルスに特有ではないですが、肺炎には肺繊維症という後遺症があり、息切れや運動した時に呼吸が苦しいという症状が出ることがある」と国際医療福祉大のA教授は説明します。さいたま医療センターのB副センター長も肺の繊維化の可能性を指摘。肺の一番奥にある肺胞が固くなって、肺全体が広がりにくくなり、重い場合には「5年たっても肺の機能は8割しか戻らない」と言います。

肺炎が重くなると、ウイルスの増殖を抑えるために全身から白血球を呼び寄せる伝令物質「サイトカイン」が血液中に過剰に流れ、他の臓器も攻撃する「サイトカインストーム」が起きます。この他、ウイルスが血管の壁に感染して血栓ができる全身血栓症になると、多臓器不全や脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こします。集中治療室でも入院が長引き、退院後に認知や身体機能が低下することもありますし、重症化しなかった人にも、発熱や倦怠感、味覚や嗅覚の障害などが続くケースがあります。

「はっきり分からないが、だるいのは肺の回復が遅く、酸素の取り込みが悪いからではないか。熱が続くのは鼻の奥にウイルスがおらずPCR検査で陰性になっても、臓器などにウイルスが残っているためかもしれない」とBセンター長。陰性になって退院後に医療費が一部自己負担になる点についてC医療ジャーナリストは、「コロナに限って医療費を補填するなど、何らかの救済策を取ってほしい」と提案します。

 

20.7.9東京新聞に新型コロナ「後遺症」の記事①

20.7.9東京新聞コロナ後遺症①7月9日付けの東京新聞に、「新型コロナに『後遺症』か~5月から自宅療養の男性『起き上がれない日も』」と題して、新型コロナウイルスの「後遺症」について取り上げられました。新型コロナ感染者で、陰性になった後も息切れや発熱などの症状を訴えるケースが見つかり、コロナの「後遺症」が続くなら、若者も十分な注意が必要ということになり、学会は近く調査に乗り出す予定です。

新型コロナウイルスに感染し、自宅療養が続く千葉県内の十代男性は、3月末に発症し、4月1日にPCR検査で陽性と判明。約2週間の入院後、県が用意したホテルで経過観察に。5月中旬に陰性の検査結果が出て帰宅しました。

ところが、体重も落ち体調は回復しておらず、頭や胸の痛み、発熱や倦怠感がよくあり、「倦怠感がひどい日はベッドから起き上がれない」と言います。先月、検査入院し、血液検査や肺のコンピューター断層撮影(CT)で大きな異常は見つかりませんでしたが、当初から同じ症状が続いていることなどから「新型コロナに罹患した影響」と診断されました。

少しずつ回復しているものの、学校には4月から登校できていません。陽性だった時期の入院中の医療費などは公費で全額補助されましたが、陰性後の検査入院や通院は保険診療です。男性は「陰性になっても症状に悩まされる患者がいることをもっと知ってほしい」と語ります。

長く続く症状をネット上で訴える人も少なくありません。3月から倦怠感や腕のしびれに悩んでいる女性は6月下旬、患者やPCR検査で陽性から陰性になった人、長期にわたって症状がある人ら約400人にネットでアンケートを実施。主な症状で「微熱・倦怠感」を抱えている人が3割弱いたほか、「動悸・息苦しさ」と「胸痛・背中痛」がある人がそれぞれ2割弱いました。聖路加国際病院によると、6月5日時点で陰性が判明し退院・転院した患者67名の内、7人は筋力が低下するなど日常生活に支障がある状態でした。

日本呼吸器学会は早ければ8月にも患者の追跡調査を始める予定です。学会理事長は「呼吸器機能の低下のほかに、発熱、強い疲労感といった症状が出ると聞いており、こうした症状がどういう人にどの程度起こるのかは分かっておらず、実態を把握したい」と話します。

20.7.2LancetにCOVID-19と神経症状の論文

7月2日に「Neurological associations of COVID-19COVID-19と神経症状との関連)」と題する論文が、有名な医学誌The Lancetに発表になりましたので、一部をご紹介致します。

要約:背景
新型コロナウイルスによって引き起こされた感染症、COVID-19のパンデミックは、1918年のインフルエンザのパンデミック以来の大きさの規模である。顕著な臨床症状は呼吸器疾患だが、神経症状もますます認められるようになってきている。他のコロナウイルス、特にSARSとMERSの原因となったコロナウイルスの知見に基づくと、新型コロナウイルスによって引き起こされる中枢神経系と末梢神経系の疾患はまれであることが予期されうる。

神経疾患の調査
新型コロナウイルスの拡大が続き、神経症状を伴う患者がますます認められるようになってきているため、早く発表したいという願いは、注意深い臨床・診断・疫学の研究の必要性とバランスが取れている。臨床医は、COVID-19関連の神経系疾患の可能性のある患者を詳細に調べるための系統的アプローチを取り入れなければならず、確定された症例、可能性の高い症例、可能性のある症例を鑑別する症例定義を定めて、ウイルス感染のエビデンスや付けられている臨床診断を検討する必要がある。

神経障害、脳血管疾患、急性播種性脳脊髄炎の患者では、損傷は宿主のウイルス感染への応答によって引き起こされた可能性があり、特にウイルスが上咽頭から消えた後で患者を診る場合は、因果関係を立証するのはさらに難しい。病歴や、肺の画像と血液検査の特徴的な検査結果に基づいたCOVID-19のための(上述の)症例定義は有用だろう。脳卒中の患者には血管炎を探すために、臨床医は脳血管撮影、頭蓋内血管壁イメージング、必要であれば脳生検を検討すべきである。COVID-19患者において、圧倒的に大血管疾患が多く、血栓形成傾向が高いことを示すマーカーを伴う脳血管性疾患の発生率が明らかに高いことは、因果関係を示唆している。しかし、パンデミック中はウイルスへの罹患率が高く、ほとんどの脳卒中患者には他にも危険因子があるために、原因を確定するのが困難であることを意味する。新型コロナウイルスとの関連は、最終的には注意深い症例対照研究によって証明される必要がある。

結論と将来の方向性
他のコロナウイルスや呼吸器ウイルスについての既存の知見を考慮すると、COVID-19と中枢神経や末梢神経系との広範囲の関連性は驚くべきではなく、このことが最近のほとんどの報告の焦点になっている。しかし、他の地域流行性のウイルス感染や今までに報告された症例の知見に基づくと、新型コロナウイルス陽性であるが、COVID-19の典型的特徴がほとんどない、あるいは全くない患者においても、神経疾患がますます多く見られるようになるであろう。このような患者において新型コロナウイルスが原因であるのか偶然の一致であるかを立証するのを助けるには、症例対照研究が必要である。一部の急性ウイルス感染ではめったに見られない凝固亢進状態と脳血管疾患は、COVID-19の重要な神経系合併症である。

全体的にみれば、神経症状のある患者の割合は、呼吸器疾患患者に比べれば少ない。しかし、パンデミックは継続しており、集団免疫が獲得されるまでに世界の人口の50~80%が感染する可能性が予期されていることは、神経症状を持つ患者の全体数が大きくなる可能性を示唆している。神経系の合併症、特に脳炎と脳卒中は一生涯に渡る障害を引き起こしうり、それに関連した長期的ケアが必要となり、健康・社会的・経済的コストが大きくなる可能性を伴う。医療計画作成者や政策立案者は増加する負担を認識する必要がある。

神経系疾患の症状や負担を明確にするのに役立てるためには、注意深い臨床・診断・疫学的研究が必要である。この任務を遂行するには、臨床医と研究者の専門知識の広範な共同と、領域を超えた調和的アプローチを必要とする。小規模の症例シリーズやレジストリーは、標準化された症例報告フォームや症例定義も提供しているブレイン・インフェクション・グローバル(訳注:急性脳感染症の管理を向上させるための英国国立衛生研究所のグローバルヘルス研究グループ)を通して運営されているCOVID-19神経ネットワークのようなものと、メタアナリシスをするために結合させるべきである。

※英語の原文はこちらからご覧頂けます

20.6.26 New York TimesにCOVID-19の記事

6月26日付のThe New York Timesのオピニオン欄に、「新型コロナウイルスは脳に損傷を与えうるか」と題する記事が掲載されました。このウイルスが脳に損傷を与える可能性や感染症と神経系疾患との関係、神経系損傷のリスクを減らすための研究の重要性について書かれています。

チェルシー・アリオナーは3ヶ月間、熱、頭痛、めまい、そして、あまりに症状が激しく早期の認知症のように感じられるブレイン・フォグ(脳の中に霧がかかったようで頭が働かない)に悩まされてきました。3月9日にひどい頭痛に襲われ、その後、味覚と嗅覚を失い、最終的にウイルス陽性の結果が出ました。「同じことを繰り返し話し、知っている言葉を忘れたりします」と話します。手足の指が麻痺し、目がかすみ、疲労が非常に激しいです。症状が80日以上続いているCOVID-19回復者のフェイスブックのサポートグループ、その4,000名以上のメンバーの一人です。

このウイルスについて色々と分かってくればくるほど、これはただの呼吸器感染症ではないことを理解します。このウイルスは、脳と中枢神経系を含む身体の主要な様々な臓器系に損傷を与える可能性があります。中国の武漢の入院患者の3分の1以上が、発作や意識障害を含む神経系の症状を経験しました。6月初めにフランスの研究者達は、集中治療室に入った84%のCOVID-19患者に神経系の問題があり、33%は退院時に混乱し見当識障害があったと報告しています。

コロンビア大学公衆衛生大学院の精神科医であり疫学者であるマディ・ホーニング博士によると、「今後、神経系の問題が持続し、障害や困難さを生む可能性はますます高くなってきているようです。」

感染症は神経系疾患と関係づけられてきました。梅毒とHIVは認知症を誘発することで、ジカ熱は治療しないと発達中の脳に侵入し、成長を抑制することで知られています。SARSにかかった一人の方は、せん妄を発症して昏睡状態になり、死亡後に脳の組織からウイルスが見つかりました。

COVID-19患者全員の脳が損傷されるとは、神経学者達は考えていません。しかし実際、このウイルスは、まだ十分に理解されていないいくつかのメカニズムにより、脳を傷つけ、老けさせる可能性があります。こうした脳損傷は、人の一生の間に蓄積される可能性のある他の種類の損傷とそんなに違わないと思われます。問題は、「COVID-19ではこれらが大量に同時に起きることです」と、ジョンズ・ホプキンス大学と提携している神経学者であり神経科学者であるマジド・フォツヒ先生は語ります。

テキサスA&T大学の微生物病理学と免疫学の教授であるジェフリー・シリロ先生は、研究者達はこのウイルスが直接、神経細胞に感染しうることを示唆していると語ります。ウイルスは細胞内で複製し、細胞機能に関わる可能性が高いです。

このウイルスが神経系に損傷を与える可能性のあるもう一つの方法は間接的で、体の免疫応答によって引き起こされた広範囲の炎症を通してです。「炎症は脳に悪いことを事実として我々は知っています」とフォツヒ先生は語ります。炎症によってアルツハイマー病が起きるというのが、アルツハイマー病研究の有力な学説の一つです。

もし炎症が「サイトカインストーム」を伴うほど激しくなると、血液脳関門が破られ、ウイルスとサイトカインがさらに脳の中に入り込むことを可能にし、最終的に脳の細胞を殺します。

少数のCOVID-19患者は、免疫系が自分自身の神経を攻撃し麻痺が起きる病気である、ギランバレー症候群を発症しました。コロラド州の41歳の心理療法士であるミケール・ハートもその一人です。持続的な記憶力低下とめまいの他に、未だに神経痛に悩まされています。「常にちくちくしたしびれと刺すような痛み、皮膚が焼けるような感覚もあります」と語りました。

これらすべての懸念を考えると、どうやって神経系が回復するのか、あるいは回復しないのかを理解するために、COVID-19患者を研究することが重要であると、神経学者達は主張しています。シリロ先生やホーニング博士は、このテーマの研究に着手していますが、更なる研究が必須であると語ります。

「人々がこのことを認めるのに非常に時間がかかっていますが、できるだけ早くどんな長期的な影響が出るのかを知ることが本当に必要です」とシリロ先生は語ります。とりわけ、このテーマについての研究によって、COVID-19患者の神経系損傷のリスクを減らすことが可能な薬や他の治療法を同定することができるかも知れません。

COVID-19患者は認知・神経学的アセスメントと初期段階での神経学的治療によって恩恵を受ける可能性があることを、医師たちも念頭に置いておく必要があります。フォツヒ先生は、COVID-19で入院する全ての患者は、初期の問題を同定するために、脳のMRIを撮るべきだと考えています。

このパンデミック中の今まで、医療者コミュニティーは主にCOVID-19患者の命を守ることに焦点を合わせてきました。しかし、このウイルスが患者の残りの一生をどう形作ることになるのかをよく考える必要があります。

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