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21.4.27NCNPで論文について記者会見

4月27日に国立精神・神経医療研究センター(NCNP)において、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の新たな免疫バイオマーカーの発見~B細胞受容体レパトア解析に基づく成果~」と題して、論文発表に合わせてオンライン記者発表会が開催され、20名以上のメディアの方が取材して下さいました。

司会はNCNP総務部の山本邦夫氏が務められ、NCNP神経研究所免疫研究部長の山村隆先生が、研究の背景・概要として、ME/CFSの症状や診断基準、血液バイオマーカーによる新しい血液診断法(B細胞受容体レパトア解析)を開発したことの意味(ME/CFSの医療の均てん化、明確な疾病概念の確立、指定難病などの患者救済、治療薬開発につながる画期的な成果)、自己免疫性疾患である可能性、ノルウェーの治療薬開発の試み、ME/CFS患者の脳の異常、COVID-19関連のME/CFSの集団発生の可能性について発表されました。最後に、「ME/CFS患者では特定の抗原に対する強い免疫応答が維持されていると推測され、発症初期の引き金を引くのは感染性病原体であるが、慢性期には自己抗体にシフトしている可能性が考えられる。ME/CFSは自己免疫病(神経免疫疾患)である可能性が高く、B細胞などを標的とする新規治療薬の開発が期待される。海外ではCOVID-19感染に続発するME/CFSの論文が続々と出版され始めている。先行感染が明確でないME/CFSの研究や診療にもB細胞受容体レパトア解析は有用」と結ばれました。

続いて、同研究所免疫研究部室長の佐藤和貴郎先生が、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群におけるB細胞受容体レパトアのかたより」と題して発表されました。

抗体を作る細胞であるB細胞は、抗体(免疫グロブリン)と同じ形をしたB細胞受容体を細胞の方に出しています。きわめて多様な種類があり、それによって無数の細菌・ウイルス等に反応・対応できるようになっています。そのたくさんのB細胞受容体のレパートリーが、B細胞受容体(BCR)レパトアです。

次世代シークエンサーを用いて、網羅的に全種類のB細胞受容体を調べることによって、色々な遺伝子の種類によってグループ分けできます。今回、ME/CFS患者群と病気でない健康な方と比較をして、レパートリーの頻度の違いを調べました。

様々な感染症でこうした研究が行われており、COVID-19に関する論文もすでに出ています。健康な方に比べて一部の遺伝子のレパートリーが患者群で偏りがあると書かれた論文もあります。同じ方法を用いて、自己免疫疾患である血小板減少症紫斑病の患者を対象にBCRレパトアを調べた研究では、患者さんで4-28という遺伝子ファミリーが増えており、この病気と特定のレパトアと関係があることが分かりました。

今回の研究参加者は37名の患者と健常者23名でした。平均年齢約40歳で、平均で病歴10年位、女性が7~8割、発症時に感染症様症状があった方が約半数、免疫系の病気を併せ持っている方も約半分おりました。重症度はPS値約6で、調子の良い日は少し動けるけれども、一週間の内半分以上は自宅で休まなければいけないというレベルで、日常生活を送るのが非常に大変です。

いくつかの遺伝子は患者集団で頻度が高いということが分かり、そうしたものが6つ見つかりました。6つのデータだけを見て、患者さんと健常者を見分けることができるかをROC解析という統計学的手法で調べ、精度80%以上というかなり高い確率で診断できることが分かりました。気管支喘息やアレルギー体質などがない患者さんでも同じ結果が得られたことから、ME/CFSそのものとの関係があると考えます。その後、最初の検討の後に別の患者さん(患者37名)に参加していただき、ほぼ同じ結果が得られましたので、再現性があると考えられます。

感染症後に発症した患者が約半数おられ、そうした方と関連のある遺伝子ファミリーは、IGHV3-30と3-30-3が浮かび上がってきました。この2つは相関関係があり、両方高い方が多く、発症からの年数が比較的短い(10年以下)方で高いことも分かりました。

プラズマブラストという抗体を盛んに産生する細胞は感染症の後に増えますが、フローサイトメーターを用いてB細胞の色々な種類を調べたところ、約2割の患者さんでプラズマブラストが非常に増えていることが分かりました。特に重症の方や、発症からの期間が比較的に短い方で増えていることが分かりました。さらに詳しく調べたところ、患者さんで増えている遺伝子機能の内の2つがMx1とIFI16で、患者さんのプラズマブラストはインターフェロンに反応して活性化しています。ウイルスとの関係、自己免疫疾患と関係する遺伝子が、抗体を作る細胞において増えていたという異常を見出したということです。

最後に、「今回の論文で見出したことは、患者さんでは特定のB細胞受容体ファミリーが血液中で増えていて、それが診断バイオマーカーとしての可能性があるのではないか。特に感染症のエピソードで発症した方で特に増えている3-30、3-30-3というファミリーを見出しました。抗体産生度の高いプラズマブラストでのインターフェロン誘導遺伝子が増えているという異常を見出しました」とまとめられました。

その後、活発な質疑応答が行われ、「B細胞受容体が抗原を認識するとB細胞としてどういう活動をするのか」「血液で容易に診断できるのか。マーカーの実用化までの課題は」「該当するレパトア群、B細胞を抑制すればこの病気の治療に結び付くのか」「受容体の増加等がこの病気の原因と考えうるのか。それが治療の確立につながるのか」「COVID-19との関係も含め今回の発見の意義について一言頂きたい」「関連するB細胞をたたいて治療するという技術はあるのか」等の質問が出されました。

21.5.13英国ME協会のワクチンのアンケート

イギリスの患者団体The ME Associationは、COVID-19のワクチンに関するアンケートを行いました。顧問医師のチャールズ・シェパード先生(ME/CFS患者)のコメントと一緒にご紹介致します。

ME/CFSの方がCOVID-19のワクチンを接種するかどうか決める際に、考慮すべき大事なポイントをいくつかお話しします。

◎COVID-19は、非常に深刻で命を脅かす感染症で、近い将来に消え去ることはありませんし、完全に消えることはないかもしれません。

◎ME/CFSの方がCOVID-19にかかれば、ME/CFSの症状が非常に悪化するか、再熱するでしょう。このことは昨年、当会に寄せられた皆様の経験談から分かっています。

◎個人的な事情、ウイルスや感染しているかもしれない人と接触する危険性を考慮しましょう。

◎アストラゼネカのワクチンによる非常に稀な血栓や重篤なアレルギー反応を別にすれば、すべてのCOVID-19ワクチンは非常に安全です。

◎どのワクチンでもそうですが、一部のME/CFS患者は症状が、特にCOVID-19の副反応と一般に報告されているものと重なる症状が悪化するでしょう。少数(多分5~10%)の患者は、ME/CFSの症状が激しく悪化した、又は継続していると報告しています。

◎今のところ、安全性や効果との関連において、英国で現在使われているどのワクチン(アストラゼネカ、モデルナ、ファイザー)が、ME/CFSにとってより良い選択であるかというエビデンスは示されていません。また、選択肢を与えられることはないでしょう。

◎どの程度防げるのか、そしてどのくらい免疫が持続するのかは、まだ明確ではありません。70歳以上と非常に重症化しやすいグループ全員には、同じころに打つことになるインフルエンザワクチンと一緒に、9月に追加のワクチン接種が行われる可能性があります。

◎英国ME協会のHPでCOVID-19のワクチンを受けた人々からの経験談を掲載し、定期的に更新しています。現在までの経験談では、ほとんどの方が対処できており、他のほとんどのワクチンで起きることが知られている一般的な副反応を短期間経験しているだけです。

◎しかし、少数とはいえ無視できない数、多分約10%の方が、もっと重篤なME/CFSの症状の再熱や悪化、あるいはもっと顕著は副反応を経験しています。これらの人々が未だに回復していなければ、2回目の接種を受けるかどうかを決める際に、非常に心配すべき状況です。

【英国ME協会の2021年のWEB調査結果】

「COVID-19のワクチンを受けましたか。受けた方は接種後にどう感じましたか。回答を3つまで選んでください」と尋ねました。

・大丈夫だった。数日後も認識できる問題は何もなし。(7%、201回答)
・ワクチン後、驚くほど体調が良かった。(2%、70回答)
・腕の痛み、疲労感の悪化、頭痛、悪寒、微熱等の副反応があった。(19%、547回答)
・上記の症状のいくつかの他に、ME/CFSの症状が悪化した。(12%、351回答)
・上記の症状のいくつかだけで、ME/CFSの症状は悪化しなかった。(9%、260回答)
・上記の全ての症状の他に、ME/CFSの症状が悪化した。(12%、361回答)
・上記の副反応はなかったが、ME/CFSの症状が悪化した。(1%、35回答)
・重篤な副反応、及び/又はME/CFSの症状が大幅に悪化し、医師の診療を受ける必要があった。(4%、118回答)
・ワクチン接種から数日内で症状は消えた。(10%、296回答)
・ワクチン接種から1週間で症状は消えた。(8%、228回答)
・症状が消えるのに1週間以上かかった。(9%、254回答)
・症状は消えておらず、ME/CFSが再熱した。(7%、208回答)
全回答数 1956
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2回目の接種を終えた人々からの経験談は非常に少ししか届いておらず、1回目の接種でひどい反応があった人々からの回答は、さらに少ししか届いていません。2回目の接種を受けることで、明らかにウイルスに対する免疫の防御力の強化や、この免疫力が持続する期間が長くなる可能性がありますが、症状悪化という代償を払うことになるかもしれません。

すでにひどい副反応を経験した方にとって、決断するのは明らかに困難であり、個人的な事情を考慮することになることでしょう。個人的に、私は2回目の接種を受けましたが、全く何の副反応もありませんでした。しかし、1回目のワクチンで免疫系は、COVID-19の可能性があると認識したあらゆるもの(すなわち2回目のワクチン)に反応するよう準備されますので、2回目のワクチン後は健常者でも副反応はさらに起こりやすく顕著である可能性があります。

21.5.28COVID-19有識者会議に後遺症

自治医科大学学長の永井良先生を座長とする「COVID-19有識者会議」のHPに、5月28日に「新型コロナウイルス感染症後遺症について」と題する記事が掲載されました。著者は国立国際医療研究センター病院国際感染症センターの森岡慎一郎先生です。

これまでにエボラウイルス病やデング熱といったウイルス性疾患でも後遺症があることが知られていますが、COVID-19にも後遺症があることが分かってきました。2020年7月頃より欧米から疫学報告が散見され、その後、本邦からは国立国際医療研究センターや和歌山県からコロナ後遺症の疫学が報告されました。

発症リスク因子に関しては、高齢、女性、肥満、発症から7日以内の症状の数が5以上であることが報告されています。また、症状別では、倦怠感や筋力低下のリスク因子として高齢、女性、重症であること、不安障害やうつのリスク因子として女性、重症であることが挙げられました。

コロナ後遺症の病態は明確になっていませんが、英国の国立衛生研究所がコロナ後遺症をLong COVIDと呼び、急性期症状の遷延、ウイルス後疲労症候群、集中治療後症候群、心臓や脳への影響の4つの病態が複雑に絡み合ったものと定義付けています。

現段階では明確なコロナ後遺症の原因が分かっていませんが、いくつかの仮説が提唱されてます。新型コロナウイルスはスパイクと呼ばれる突起がACE2受容体に結合することで細胞内に直接侵入・増殖し、組織を障害します。ACE2は肺、脳、鼻や口腔粘膜、心臓、血管内皮、小腸に存在するため、後遺症として多様な症状を呈する可能性があります。その他の仮説として、サイトカインストームの影響、活動性ウイルスそのものの影響、抗体が少ないことによる不十分な免疫応答などが挙げられています。

現段階ではコロナ後遺症に対する確立した治療法はなく、対症療法が中心となります。外来診療を受けたCOVID-19患者214名を対象とした研究では、亜鉛製剤やビタミンC(アスコルビン酸)の投与を行うことは、症状の持続期間の短縮には寄与しなかったとの報告があります。今後の研究においてコロナ後遺症の病態を解明していくとともに、有効な治療法を見つける必要があります。

コロナ後遺症に関しては医学的、社会的、経済的問題があり、これらは喫緊の課題であると考えられます。まず、コロナ後遺症の概念を広く周知することが重要でしょう。コロナ後遺症の多くは客観的な指標で定量評価しにくいですが、多様な症状を”気持ちのモンダイ”で片付けるのではなく、患者の声を傾聴する必要があります。COVID-19は地域全体で取り組むべき疾患となりつつあり、今後は地域単位で急性期・慢性期のCOVID-19患者を支えていく体制づくりが必要になるでしょう。

次に、コロナ後遺症の定義作成は重要です。この定義を考える際、筆者は何らかの新型コロナウイルスの感染を示唆する客観的所見は必要と考えています。具体的には、PCR検査、抗原検査、抗体検査などがそれにあたります。

コロナ後遺症患者のための社会保障も課題です。コロナ後遺症のために復職困難となったり、定期通院が必要となったりすることがあり、経済的救済が必要となります。今後は臨床研究を通して後遺症が出現もしくは遷延するリスクを明らかにし、病態解明による有効な治療薬開発につなげる必要があります。

COVID-19は後遺症という点だけ見ても風邪やインフルエンザとは異なり、同様に考えてはいけません。多様な症状が月単位で長引き、回復者の生活の質を低下させ、美容というデリケートな面でも問題を引き起こしています。重症者だけでなく、軽症・中等症の患者や若年者にも一定の割合でコロナ後遺症が長く続くという事実を認識し、患者への啓発活動に繋げることが大切です。

21.7.12時事メディカルに若年のコロナ後遺症

7月12日付の時事メディカルに、「若年のコロナ、自宅療養例でも半数程度に後遺症」と題する記事が掲載されました。サブタイトルは「ノルウェー・軽症~中等症247例の追跡結果」

ノルウェーのUniversity of Bergen/Haukeland University HospitalのBlomberg氏らは、2020年2月28日~4月4日に、同国で軽症~中等症COVID-19を発症し自宅療養となった247例を追跡。感染から半年後も症状が持続していた患者は半数超に上り、16~30歳の若年者でも約5割がなんらかの症状を有していたとNature Medicineに発表しました。

感染後6カ月の時点で、全体の55%がなんらかの持続的な症状を有しており、最も多かったのは疲労感(30%)で、次いで味覚・嗅覚障害(27%)、集中力低下(19%)、記憶障害(18%)、呼吸困難(15%)の順でした。15歳以下の小児では持続的な症状を有する割合は13%、16~30歳では52%になんらかの症状が残存しており、最も多かったのは味覚・嗅覚障害(28%)で、次いで疲労感(21%)、呼吸困難(13%)、集中力低下(13%)、記憶障害(11%)の順でした。

Blomberg氏らは「長期的な呼吸困難や記憶障害などのリスクがあり、ワクチン接種をはじめとする感染症対策の重要性が浮き彫りになった」と結論。「自宅療養となった16~30歳の若年者が、感染から半年経過後も集中力低下、記憶障害、呼吸困難、疲労感などのリスクを有するというのは憂慮すべき結果であり、特に学生の場合は、これらの症状が勉強・学習の遂行を妨げる恐れがある」と懸念を示しています。

21.7.18Forbesに新型コロナ後遺症調査

7月18日付のForbesに、「新型コロナ後遺症、症状は200種類以上 半年後も働けない人が2割」と題する記事が掲載されました。

2019年12月~20年5月の7カ月間に56カ国の感染者およそ4000人を対象に行った調査の結果が、英医学誌ランセットの「EClinicalMedicine」に7月15日に発表されました。最も多くの感染者が経験していた後遺症は、「倦怠感、ブレインフォグ(脳の霧、頭がぼうっとする)、PEM(post-exertional malaise、軽い身体的、精神的活動の12~24時間以内にひどい倦怠感その他の症状に見舞われ、それが数日~数週間続く)」だといいます。

調査に協力した感染者のうち、感染から6カ月後も後遺症が続いていた人の症状は、平均14種類で、これらの人たちのほぼ半数(45%)が、こうした症状のために勤務時間を減らしており、およそ5人に1人(22%)は、仕事を辞めたり休んだりしていました。

新型コロナウイルスの感染時の症状の程度は、後遺症が起きる可能性と強く結び付いていないとみられます。つまり、感染の可能性が高い子供や若者、ワクチン未接種の人が感染し、こうした後遺症に悩む危険性は高いといえます。

論文の最終著者である英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのアクラミ助教(神経科学)は、今回の調査結果が明確にしたのは、呼吸器や循環器系にとどまらず、より幅広い症状に関して評価を行うための診療ガイドラインを策定することの必要性だと述べています。

新型コロナウイルスに感染した後の後遺症に悩む人が多いこと、すぐには関連性が分からない症状が多いことを考えれば、国内各地に専門の医療機関を置き、全国的なネットワークを築く必要があるといいます。

21.7.20時事メディカルにコロナ後遺症

7月20日付の時事メディカルに、「コロナ後遺症、多臓器で症状持続」と題する記事が掲載されました。

COVID-19の後遺症(Long COVID)に関する過去最大規模の国際研究の結果が明らかになりました。英米の研究者らを中心にLong COVIDの研究を行っているPatient-Led Research CollaborativeのHannah E. Davis氏らは、オンライン調査で得られた3,700例超のデータからLong COVIDの特徴を検証し、EClinicalMedicineに7月15日に報告しました。

Davis氏らは2020年9月6日〜11月25日にCOVID-19疑い例および罹患例を対象にオンライン調査を実施。データは56カ国から収集され、2020年6月以前に発症し症状が28日を超えて持続している3,762例(罹患例1,020例、疑い例2,742例)の回答を分析しました。

分析の結果、35週を超えて症状が持続した患者は回答者の91.8%を占め、65%は少なくとも6カ月までになんらかの症状を経験していました。回答者が経験した症状の数は55.9±25.5で、臓器のカテゴリー別に見ると、全身性および頭頸部症状がほぼ全例で、また筋骨格、心血管、消化器、肺・呼吸器の症状は85%以上に認められました。個々の症状別では、疲労、労作後の倦怠感、認知機能障害が特に多く認められました。

45.2%が罹患前と比べ仕事の量を減らす必要があったと答え、22.3%は勤務が不可能でした。Davis氏らは「Long COVIDは多臓器に影響を及ぼす不均一性の後遺症であり、予後の悪化に大きく関与することが示唆された」と指摘。「Long COVIDのこのような不均一性を考慮すると、病態生理の理解と効果的な治療法の開発には集学的な研究が必要である」としています。

21.7.12「ミヤネ屋」でCOVID-19後のME

7月12日に日本テレビの「ミヤネ屋」で、「急増 コロナ後遺症 記憶障害も~理解進まぬ“取り残された”病」と題して放送されました。

新型コロナの感染者増加とともに、今増えているのがコロナ後遺症です。国の調査によると、新型コロナで入院した患者に診断から半年後の症状を聞いたところ、21%で疲労感・倦怠感、13%で息苦しさ、11%で思考力・集中力の低下の症状などが残っていることがわかりました。

後遺症の専門外来を行っている医師は、「最近は30代の方がだいぶ増えてきました。若い方が感染して、後遺症になるパターンが多いのではないかと思っています」と語ります。診察に訪れた後遺症患者は、20代と30代が全体の半数近くを占め、倦怠感とブレインフォグが特徴だと言います。ブレインフォグは、脳に霧がかかったように思考力が落ち、記憶障害、何をしようとしていたかわからない、考えがまとまらない、書いてある内容か読み取れないなどが起きます。

神奈川県内に住む49歳の女性もブレインフォグに悩まされています。去年3月、新型コロナとみられる症状が出ましたがPCR検査を受けられず、2ヶ月後に受けたものの陰性でした。しかし、この一年間、ひどい倦怠感や全身の痛みに悩まされているといいます。立ったままでいることが難しく、食事の支度も座って行い、1日のほとんどを横になって過ごし、外出も必要最低限。

「スーパーで買い物をしたら同じものが2個入っていたり、前の日に着ていた服が自分のものだとわからないとか、いつも利用している電車を反対方向に乗って終点まで行ってしまうとか、自分の動きをうまく制御できないときとかあり、フライパンに油を入れたいのにお肉に油をかけようとしていて止まれないとか・・・」。

様々な検査を受けましたが、原因がわからず、去年12月にコロナ後遺症専門外来を受診し、後遺症で間違いないし、筋痛性脳脊髄炎(ME/CFS)に移行している可能性が高いと言われました。

ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)は、ウイルスなどの感染症をきっかけに発症するといわれています。実際にこの女性を診察した国立精神・神経医療研究センターの山村医師は、「全体としてMECFSの患者さんは、COVIDを発症した方の中の5%~10%があると推定されると思っています」と話します。

悪化すると寝たきりになる可能性もありますが、発症の詳しいメカニズムはわかっておらず、異常を見つけにくいといいます。「『MRI検査で異常がないから、すぐ仕事しなさい』と言われたことを信じて仕事に行ったら、一週間してすごく悪化して寝たきりになってしまい、はたからますます理解されず、患者さんは困っていらっしゃいます」と山村医師。

49歳の女性も、20歳の娘が同じく後遺症と診断されました。「娘はその時ほっとして、ちょっと泣いてました。後遺症を認めてもらえず、精神的とか、違うんじゃないかのような言われ方を結構していたらしいので。手伝ってもらわないとどうにもできない体調ですので、家族や職場の理解はとても大事です」と語ります。

岡山大学病院コロナアフターケア外来で診察にあたる大塚副病院長「コロナの感染自体は比較的軽症でも症状が残ったり、比較的若い方に症状が見られるのは、少し特徴的かと思ってます」。

大塚副病院長「外来を2月に立ち上げ、当初は倦怠感や味覚・嗅覚、脱毛といった症状でしたが、最近はブレインフォグが出てきたという傾向があります。頭がしっかりしない、記憶力・集中力が少し低下する、頭が重たい、少し混乱したような一言で表しにくいような症状が特徴かと思われます」。

周りの方にも理解されず、精神的にも大変つらく、長引いてるそうです。また、若年性であったり軽症者にも起こりうるそうで、後遺症の専門外来の医師のデータによると、30代と40代がほとんどで、最近は30代が増加しているそうです。

大塚副病院長「我々の施設では20代と50代の二つのピークがあるような印象です」。

ノルウェーで、患者さん312人の後遺症をみた結果、軽症・中等症の自宅隔離した16~30歳の半分が後遺症を持っていて、呼吸困難や認知機能の症状など重い症状が出る恐れもあるそうです。

大塚副病院長「49歳の主婦の方のケースは、PCR検査の陰性・陽性が、当時どの程度まで捉えていたかの判断も難しいところだと思います。ですから早期に診断して疑っていくことが、後遺症を少しでも短く軽症化する意味でも大事だと思われます」。

ME/CFSは、国立精神神経医療研究センターによりますと、半年以上にわたって疲労感が続き、全身の脱力などによって日常生活を送るのが困難になる原因不明の病気で、大塚先生によりますと、7,8割は感染症の後に発症し、寝たきりの状態もあるということです。

大塚副病院長「コロナに関係なく、感染症の後に疲労感が残り、半年以上にわたって熱が続いて脱力が起こります。コロナに限らず、これまでこうした概念は言われておりました」

山村先生によりますと、コロナウイルスが口から入り、気管や肺まで行った場合に脳の免疫に異常を起こすことがあり、その結果、自律神経を含めた脳のタンパク質に反応する自己抗体が増えることがあります。これと同時に脳に軽い炎症が起きていることが確認されおり、この因果関係が注目されているということです。

大塚副病院長「自己抗体や免疫が一つの原因として考えられてはいるようですが、具体的にこれだというところまで至っていないと思われます。色々なコロナの感染症の重症の方を見ていますと、体に色々な炎症反応が起きますので、それが影響を起こすという可能性はあるかと思っています」。

新型コロナ疑いの患者さんの脳の血流を解析した画像では、運動・認知・学習に関する部分の血流低下が認められるということです。山村先生は、これがMRIなどでは映らないため、気のせいとか心の病などとされ、治療が遅れてしまう取り残された病だとおっしゃっていました。

大塚副病院長「通常は機能的なMRI、血流や実際の機能がわかる特殊なMRIでないと出てこないと思います」。

イギリスの調査結果が、査読前の医学分野の論文を集めたサイトに去年10月掲載されました。参加者に9種類の認識力テストを実施したところ(361人の陽性者が含む)、重症化して人工呼吸器を使った20~70歳の方の認知機能に、平均で10歳の老化が見られたということです。

21.3.13JD40周年記念連続講座で篠原理事長講演

3月13日(土)にZoomウェビナーにて開催された、JD(日本障害者協議会)40周年記念企画の連続講座「国際障害者年40年ー障害者の権利はどこまで保障されたのか!~障害者権利条約・基本合意・国会提言をにぎって話さない新たな運動を!」第3回のパネルディスカッションに、篠原理事長がパネリストとして登壇しました。当日は約193人の方が参加されました。

第3回目の連続講座は、「今を生きる障害者ー障害者権利条約を力に!」と題するパネルディスカッションで、当事者運動連絡協議会北風の会事務局長の土本さん(知的障害)、はらからの家福祉会ライフーパートナーのビアサポーターの寒川さん(精神障害)、NPO法人筋痛性脳脊髄炎の会理事長(難病当事者)が登壇。JD代表の藤井勝徳さんとJD常務理事の増田一世さんがコーディネーターを務められました。

土本さんは、1996年から一人暮らしを開始、2010年に内閣府「障害者制度改革推進会議」構成委員、2012~14年には「障害者政策委員会」委員を務められるなど、知的障害者の抱える問題を訴えて来られました。寒川さんは、子育てをしながら精神障害者地域移行支援ピアサポーター活動、市の障害者地域自立支援協議会委員や就労支援事業所の第三者委員も務めていらっしゃいます。

当会の篠原理事長は、脳の血流低下や脳内構造の異常が見つかっているME/CFSについて説明した後、ME/CFSは神経系の難病であるにも関わらず、一部の医師達があたかも疲労の病気であるかのような間違った情報を未だに流していることにより、患者は身体障害者手帳の取得が困難であるだけではなく、かえって怠けていると誤解され、合理的配慮が提供されない状況が長年続いており、差別解消法においてこの問題を解決しようとしても、相談窓口や紛争解決の仕組みが明確ではなく、現行の差別解消法で具体的な問題を期待するのは極めて厳しいことなどを話しました。また、障害者権利条約第一条目的には、「すべての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする」と書かれていることをあげ、ME/CFS患者の人権が尊重されるように願って活動していることを話しました。最後に、COVID-19を契機としてME/CFSを発症している方が日本に非常に多くいる問題についても触れました。

コーディネーターの藤井さんから、「障害を持ってよかったことは何ですか」「10年後には何をしたいですか」等、打ち合わせになかった質問にドキドキしましたが、他の2人のパネリストから多くのことを学びました。

21.7.12長引くCOVIDの血液検査への期待

7月12日付のMedical Device Networkに、「長引くCOVIDの血液検査への期待が高まる」と題する記事が掲載されました。サブタイトルは、「長引くCOVID患者達には、長期にわたる症状を説明する自己抗体が血液中にあることがわかった」

イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンで実施された研究は、間もなく長引くCOVIDが簡単な血液検査で診断できるようになる可能性を示唆しました。パイロット・データは、長引くCOVID患者の血液中の自己抗体を同定しました。これらの抗体は、ウイルスからの回復が早かった患者やCOVID-19が一度も陽性になったことのない人々には見つかりませんでした。

感染と闘うのを助ける正常な抗体とは異なり、自己抗体は自分の組織や臓器を標的にし、反応します。自己抗体は、バセドウ病、関節炎、ME/CFSの一部の患者にみられるような、多くの自己免疫疾患と関連付けられてきました。

現在、長引くCOVIDに対する客観的検査はなく、患者が診断を得るのを困難にしています。インペリアルの研究者達は、この研究が長引くCOVIDを診療現場で診断するための血液検査となる第一歩となることを願っています。

インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究を率いるダニー・アルトマン免疫学教授は、「私は非常に楽観的です。6ヵ月以内に開業医から受けられる簡単な血液検査ができるよう願っていますし、診断のための検査ですから、何とか開業医を説得したり、専門医の診察へアクセスできないと感じている患者たちが、何を言っても信じてもらえない状況を変える上で、大きな影響を与えられるようになると思っています」。

※英語の原文はこちらからご覧いただけます

21.7.15Care NetにCOVID患者の多様な自己抗体

7月15日付のCare Netに、「COVID-19患者における多様な自己抗体」と題する記事が掲載されました。5月19日にNature誌に“Diverse Functional Autoantibodies in Patients with COVID-19”と題して発表された論文の概要で、記事の著者は春日井市総合保健医療センターの平山幹生参事です。

新型コロナウイルスに対する液性免疫は、中和抗体として感染から防御するために働きますが、もう一方でCOVID-19患者において自己免疫疾患における自己抗体のような自己抗体活性が検出されたという報告が相次いでいます。本論文は、軽度あるいは無症状のCOVID-19患者172人と医療従事者22人をスクリーニングし、2770種類の細胞外および分泌タンパク質(エクソプロテオーム)に対する自己抗体を検討したものです。

COVID-19患者では、非感染者に比べて自己抗体の反応性が劇的に高まっており、サイトカイン、ケモカイン、補体成分、細胞表面タンパク質などの免疫調節タンパク質に対する自己抗体が高い割合で存在することが判明しました。これらの自己抗体が、免疫受容体のシグナル伝達を阻害したり、末梢の免疫細胞の構成を変化させたりすることで免疫機能を阻害し、ウイルスに対する防御能を損なわせることが明らかになりました。


以上のことから、COVID-19では、エクソプロテオームに対する自己抗体が、免疫機能に様々な影響を与え、臨床転帰と関連して病態に関与していることが示唆されました。

同定された組織関連自己抗体の中には、post-COVID症候群に関与すると考えられるものもあり、オレキシン受容体に対する自己抗体は、覚醒や食欲の調節に重要な役割を果たしていると推定され、オレキシンシグナルを阻害する可能性があります。今回の結果は、COVID-19の病態の原因に、これまで軽視されていた免疫学的経路が関与していることを示しており、こうした自己抗体による発症機序を是正する新しい治療法の可能性を提案するものです。

Dr. Hirayama’s Eye-オレキシン受容体に対する自己抗体が検出された意味-

オレキシン系は睡眠・覚醒調節機構の重要な要素で、情動やエネルギーバランスに応じ、睡眠・覚醒や報酬系そして摂食行動を適切に制御する統合的な機能を担っており、Long-COVIDに見られる、睡眠障害や食思不振に、この受容体に対する抗体が関与している可能性が考えられます。COVID-19の重症化、あるいはLong-COVIDに見られる症状を引き起こす原因に関わるかもしれない自己抗体の亢進に関する検討がますます進むことを期待します。