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17.8.10内科学会雑誌に山村隆先生の記事掲載

2017年8月号の日本内科学会雑誌は、「内科診療に潜む脳炎・脳症」の特集を組んでおり、国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部長である山村隆先生が、「自己免疫性脳炎・脳症の臨床」と題してEditorial(巻頭辞)を書かれています。そこで、筋痛性脳脊髄炎にもふれていますので、ご紹介致します。

内科診療において遭遇する脳炎・脳症のうち、感染性脳炎は診療ガイドラインが活用されていますが、本特集号で取り上げた脳炎・脳症は診療指針となる情報がかなり限られています。しかし、傍腫瘍脳炎や橋本脳炎等の自己免疫性脳炎・脳症はそれほど稀な疾患ではなく、内科的治療(免疫治療)によって著明な改善が期待できますので、初期診療にたずさわる医師には十分な知識が求められます。

自己免疫性脳炎・脳症は、症状の進行が比較的遅いことがあり、血液検査の異常に乏しく、脳MRI画像所見が乏しいこともあり、診断が困難です。時には内科的治療が試みられないままに、「身体表現性障害」や「詐病」等の診断で、精神科や心療内科へ紹介されることもありますが、その背景には、MRI画像所見に依存しすぎる現在の医療の問題があります。一方で、脳MRI画像に異常のない症例の診療に有用な指針がないことや、教科書的な神経症候学が時に誤った判断の原因になっていることも指摘しておかなければなりません。

この10年間で、自己免疫性脳炎・脳症に合併する様々な自己抗体が発見され、診断マーカーとして利用できるようになっていますが、実地診療において測定できる抗体の種類には限りがあり、感度や特異性の問題も残され、検査結果が出るまでに数週間~数ヶ月かかることもあり、実用的な価値には課題が残ります。臨床的な事実とエビデンスによって早期治療が良好な予後につながることは明らかですので、臨床経過及び脳MRI画像、髄液、脳波検査等の結果が自己免疫脳炎・脳症の診断を示唆すれば、抗体検査の結果を待たずに早期治療を行うべきであると提言するposition paperが発表されています。

自己免疫性脳炎・脳症に関連する自己抗体で、病原性が証明されたものは少ないですが、抗体介在性の自己免疫疾患に準じた治療(ステロイドパルス療法、血液浄化療法、IVIgなどの有効性を期待できます。海外では難治例に対してリツキシマブによる治療が推奨され、抗NMDA受容体抗体脳炎については、治療アルゴリズムも提唱されています。

これからも新たな自己抗体が発見され、それを契機にして原因不明の神経疾患の解明が進むことが想像されます。病因や病態について様々な議論のある筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群や「子宮頸がんワクチン後にみられる中枢神経関連症状」では自己抗体同定の試みが進み、既に一定の成果が上げられています。今後、さらに科学的な検証が継続され、問題の本質が明らかにされることが期待されます。

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17.9.3日本病巣疾患研究会で申理事発表

9月3日にお台場東京国際交流館において開催された、第五回日本病巣疾患研究会学術集会において、当法人の申理事が「Bスポット療法と遠絡療法を併用した筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の治療」と題する一般演題を発表し、200名を越える耳鼻科医、歯科医、内科医、その他の医師が参加しました。日本病巣疾患研究会は、「専門化した医療では治癒できないような疾患を、垣根を越えて病態を包括的に俯瞰し、根本治療を導入しようという」趣旨で発足し、今年、NPO法人となりました。

軽微な労作による高度で遷延する疲労・消耗、睡眠障害、各種疼痛、思考力低下、さまざまな自律神経障害等がME/CFSの主症状であること、一般検査では異常が見つからず、詐病・心因性扱いを受けること、最近の研究の発展によって脳画像所見、サイトカインなどの有意な所見の報告が相次いでいること、またノルウェーではBリンパ球を枯渇させるリツキシマブ投与により症状の寛解が得られ、免疫の関与と完治の可能性が出てきたことを、最初に紹介しました。

病巣疾患研究会の堀田理事長は、慢性上咽頭炎が多くの難治性疾患の原因となっていることから、塩化亜鉛塗布療法であるBスポット療法を同部位に行い、子宮頸がんワクチン副反応の患者さんを寛解に導いた論文発表をされています。そこで、Bスポット療法を習得し、クリニックにおいて経絡治療を基礎とする遠絡療法と共に、ME/CFS患者さんに週1回3か月実施したところ、「数回の治療後、鼻閉、のどの詰まり、頭痛、首コリ、肩こり、頭に霧がかかったような感覚が改善した」「睡眠障害が改善し、午前中や家事などの後に寝込むことがなくなった」「高熱の持続や、風邪で1週間寝込んでいたことが1日程度で治るようになった」「アトピーのかゆみで眠れなかったのが眠れるようになった」「表情がはっきりして顔つきがしっかりした」などの自覚症状の改善が得られました。

身体及び精神的健康調査表であるCMI(コーネル医学指標)も改善しました。客観的指標では、ME/CFSの疲労の原因の一つとなっている続発性副腎機能低下症の結果、低値を示していたACTHホルモンが、治療後には上昇し、慢性炎症を示す高感度CRPが低下し、脳血流の低下も改善しました。そこで、治療的な診断ではありますが、ME/CFSの病態に基底核や中脳などの関与が疑われ、また慢性上咽頭炎も原因として関与している可能性が示唆されたことを報告しました。

17.8.24JDの政策委員会に出席

8月24日に新宿区立障害者福祉センターにおいて開催された、日本障害者協議会(JD)の政策委員会に出席致しました。最初の情報共有の時間に、7月14日のJD主催の日本国憲法施行70年と障害者の集会相模原事件後1年にJDが出した声明、障害者総合支援法改正案に対するパブリックコメント、JDF(日本障害フォーラム)の権利条約パラレルレポート検討会、JDF差別解消委員会が中心で行う「差別解消法の相談体制の実態」に関するアンケート等について報告されました。

A型事業所における障害者の大量解雇や不正な運営実態が明らかにされている問題について、JDとしての考え方をまとめるために議論していくことや、国土交通省が予定しているバリアフリー法改正に向けて論点を議論していくこと等が話し合われました。、

17.8.15「すべての人の社会」446号に記事掲載

篠原 三恵子
JD(日本障害者協議会)の機関誌「すべての人の社会」446号の、連載「日本国憲法と私」欄第11回に、「難病者の基本的人権の保障を望む」と題する記事を掲載して頂きました。

難病対策委員会は、2013年1月に難病対策の改革についての提言をまとめ、「難病は、その確率は低いものの、国民の誰にでも発症する可能性があり、生物としての多様性をもつ人類にとっての必然であり、科学・医療の進歩を希求する社会の在り方として、難病に罹患した患者・家族を包含し、支援していくことが求められている」との基本的な認識を示し、難病対策が国民全体の課題であると表明しました。「難病の治療研究を進め、疾患の克服を目指すとともに、難病患者の社会参加を支援し、難病にかかっても地域で尊厳を持って生きられる共生社会の実現を目指す」ことを難病対策の改革の基本理念とし、これを基に2014年に難病法が成立しました。

難病法が施行され、対象疾患が56疾患から330疾患(2017年4月現在)に拡大されましたが、指定されない難病はその恩恵を受けることができません。それに対して日本弁護士連合会は、難病者の人権保障の確立を求める意見を、2015年に発表しました。「国は、難病者の基本的人権を尊重し、障害者権利条約の求める共生社会の実現に向けて、障害者基本法に基づき、難病者を支援する各種法制度を有機的総合的に推進するために難病者に関する法制度を抜本的に改革すべきである」とし、 『難病者』の概念について、障害者権利条約を受けた改正障害者基本法に即し、『難病者』とは、『難病による心身の機能障害及び社会的障壁により、日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者』とする」ように求めました。

憲法第10章は最高法規と規定され、第97条は「憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と書かれています。

2014年には厚労省によって、ME/CFSの患者の実態調査が行われ、約3割が寝たきりに近い重症患者であるという深刻な実態が明らかになりましたが、未だに指定難病になっていません。患者数が人口の0.1%程度に達しないこと(18万人未満)と、客観的な診断基準が確立していることという指定難病の要件を満たさないからです。WHOで神経系疾患と分類されているこの病気の研究が、当法人の働きかけによって、専門医である神経内科医によって本格的に開始されたのは、つい2年前のことです。

いつまで待てば、憲法で保障された基本的人権が守られるようになるのでしょうか。すべての難病者の基本的人権が、一日も早く保障されるようになることを切に願います。

 

 

 

 

17.8.8国会請願署名にご協力のお願い

当法人では、2013年より国会請願活動を行っており、2014年に参議院、2015年に衆議院、2016年には衆参両議院で請願が採択されました。残念ながら、昨年度は請願の採択は叶いませんでしたが、皆様に請願署名活動にご協力頂き、心から感謝しております。

2018年度も、昨年度の請願と同じ内容で、請願書のタイトルと請願項目に多少の修正を加えて再挑戦致します。2018年度の請願書のタイトルは、「神経系疾患である筋痛性脳脊髄炎の研究推進を求める請願書」です。諦めずに訴え続けて参りますので、皆様に署名活動にご協力頂けますようお願い致します。

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類において神経系疾患(ICD-10 G93.3)と分類されている神経難病ですが、医療関係者にすら未だに正しい認知が広がっておりません。そこで、国に啓発活動を求めたいと思っています。

ME/CFSの患者数は約36万人とされてきましたが、その36万人の根拠とされたのは、1999年の「疲労の実態調査と疲労回復手法に関する研究」の実態調査で、重篤な慢性疲労状態の方が0.3%認められたことでした。しかし、疲労を対象とした同調査の結果を根拠として、疲労の病気ではない本疾患の患者数とすることは不適切です。一方、2016年10月に更新された日本医療研究開発機構(AMED)のCFSの研究班のホームページでは、2012年に改訂されたCFS臨床診断基準を満たす方は、人口の0.1%としています。AMEDの研究班の最新の疫学調査で患者数は人口の0.1%と判明したのですから、ME/CFSを希少疾患と認めて頂きたいと思っています。

詳細は請願書をお読み頂き、ご賛同いただける方は、ぜひとも署名にご協力をお願い致します。貴重な署名が無駄になることがないよう、署名時の注意事項をよくお読み頂いた上で、署名をお願い致します。いただいた署名は厳重に管理し、請願の目的以外には使用いたしません。ご自分や家族の方だけの署名でも、多くの方にお寄せいただければ大きな力になりますので、どうか宜しくお願い致します。

署名用紙をダウンロードしていただき、2018年4月30日までに当法人まで郵送していただけますでしょうか。請願要旨と請願事項をお読みいただき、署名欄のある片面だけをお送り下さい。一人でも多くの方の署名を集めることができますよう、皆様のご協力をお願い申し上げます。

<送付期限>
2018年4月30日(必着)

<問合先>
NPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」 Email: cfsnon@gmail.com

<署名時の注意事項>
○この請願は衆議院と参議院の両院に提出しますので、2枚にご署名下さい。
○ご住所は都道府県名を略さず、所番地まで必ず全部書いて下さい。
○ご住所が前の欄の方と同じ場合でも、「〃」「同上」と書いたりせず、略さず全部書いて下さい。
○ご署名は自署で、署名欄のある箇所だけにお願い致します。自署の場合は捺印は必要ありません。
○代筆の場合は、捺印が必要となります。
○署名される方の性別・年齢・国籍は問いません。

〇外国に在住でも日本人の方にはご署名いただけます。
〇外国に住んでいる外国の方に署名をお願いすることはできません。
〇日本に在住する外国人の方や子供でも署名いただけます。
〇印が手元にない場合でも拇印やサインは認められません。
〇外国人の場合は名前と住所をローマ字で書いていただいてもかまいません。

<送付する時の注意事項>
○直筆で書いたものをご郵送下さい。コピーやFAXでの送付は無効です。
○請願要旨と請願事項はお読みいただくだけで構いません。署名欄のある片面だけをお送り下さい。
○申し訳ありませんが、郵送代はご負担いただけますようにお願い致します。

<送付先>
〒177-0033 東京都練馬区高野台3-11-12采明ビル2B
NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会

署名用紙はこちらからダウンロードできます。
請願書はこちらからご覧いただけます

2017年度の請願の紹介議員をお引き受けくださった皆様(敬称略)

【自民党】
稲津久、今枝宗一郎、今津寛、上野通子、金子恭之、上川陽子、神山佐市、北村誠吾、木原誠二、木村義雄、木村弥生、後藤茂之、櫻田義孝、左藤章、自見はなこ、高階恵美子、高鳥修一、高橋克法、田畑裕明、土井亨、とかしきなおみ、富田茂之、中谷真一、西村明宏、丹羽雄哉、野田聖子、船田元、星野剛士、松本文明、溝手顕正、三ッ林裕巳、三原じゅん子、宮崎政久、宮下一郎、宮島喜文、務台俊介、村井英樹、渡辺たけゆき、

【民進党】
相原久美子、阿部知子、荒井聰、有田芳生、井坂信彦、泉健太、井出庸生、石橋通宏、大串博志、太田かずみ、大西健介、岡本充功、奥野総一郎、柿沢未途、金子恵美、風間直樹、川田龍平、菊田まきこ、郡和子、小西洋之、小宮山泰子、斎藤嘉隆、桜井充、重徳和彦、篠原豪、杉尾秀哉、武正公一、田嶋要、田名部匡代、辻元清美、津村啓介、徳永エリ、中島克仁、中根康浩、長浜博行、西村智奈美、初鹿明博、羽田雄一郎、原口一博、福田昭夫、福山哲郎、前原誠司、牧山ひろえ、真山勇一、水戸まさし、森本真治、村岡敏英、山井和則、柚木道義、横路孝弘

【公明党】
井上義久、漆原良夫、江田康幸、輿水恵一、竹谷とし子、佐藤茂樹、高木美智代、角田秀穂、平木大作、桝屋敬悟、三浦のぶひろ

【日本維新の会】
東徹、足立康史、井上英孝、浦野靖人

【共産党】
小池晃、高橋千鶴子、堀内照文、田村智子、赤嶺政賢、吉良よし子

【社民党】
照屋寛徳、福島瑞穂

【自由党】
玉城デニー

【無所属】
仲里利信

 

17.8.8野島那津子さんの研究論文のご紹介

日本学術振興会特別研究員として東京大学所属の野島那津子さんが、日本保健医療社会学論集第27巻2号(2017年1月発行)に、「診断のパラドックス~筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群及び線維筋痛症を患う人々における診断の効果と限界」と題して、報告論文(本文9ページ)を発表してくださり、5月に日本保健医療社会学会の第11回学会奨励賞(園田賞)に選出されました。

2014年に「家計経済研究Autumn号」にも、論文を発表して下さいましたが、診断の効果の時間的変動や、当事者と他者との間に及ぼす影響は十分に検討されていませんでした。この論文は、全国の15人のME/CFS患者と16人の線維筋痛症(FM)患者を訪問して、インタビュー調査が行われました。本論文は、患者の語りから、診断が当事者にもたらす影響について検討し、安心感の獲得、思い/苦しみの正統化、自責の念からの解放といった効果が生じていた一方で、診断後も患いに対する他者の評価は低いままであり、病名を伝えても病気と見なされないという「診断のパラドックス」が生じていることがわかりました。診断のパラドックスは、病者の周囲による脱正統化作用の大きさを浮き彫りにし、診断それ自体の正統性が脆弱であることを示唆しています。

【診断の効果】
ME/CFS、FM、化学物質過敏症などの病気に共通するのは、当事者が身体的症状を訴えても検査で異常が確認されないため、何らかの身体疾患を疑う当事者と、それを認めない医師との間に緊張が生じることです。診断がつかない場合には、詐病や怠惰を疑われたり、心理学的説明や何らかの精神疾患の病名が付与されたり、「誤診」されたりし、当事者の「現実」が否定されるという意味で、ときに症状と同様に、あるいはそれ以上の困難として病者を苦しめます。仕事や学校などの通常義務が果たせなくなり、多くの場合は医師や家族など周囲の人々からますます疑いの目で見られ、心無い言葉をかけられるなど、他者から否定的評価を受け続けることになり、病者に不安や屈辱を生じさせることは想像に難しくありません。それゆえ、診断の効果として真っ先に挙げられるのは、安心感の獲得です。

診断によって安心感を得られるのは、医学的権威のもとで正統な「病気」だと医師に認められるからに他ならず、逆に言えば、医学的に認められない患いは、病者の社会的地位を不安定にまたは消失させ、自己やアイデンティティを危機に陥れます。ME/CFS患者やFM患者は、診断以前に別の病気と診断されているケースが少なくありませんが、精神疾患等の病名は、病者の身体感覚にそぐわないばかりか、身体症状を無効化するものとして患者には受け入れがたく、そうした捉え方では身体症状を適切に説明することができないという、病者の身体のリアリティに由来します。

外出できない背景には「正統な」理由があることが証明され、「自分が悪いことをしていないんだ」と思うことができた方や、周囲から「怠けている」「だらしがない」と評価され、学校の課題などやるべきことができない自分を責めていたのが、診断されることで自責の念から解放された患者さんの例が挙げられます。病名診断は、体が思うように動かない原因が自分の意思や精神にあるのではなく、自分ではどうしようもできない身体にあることの証明として経験され、患いが道徳的ないし精神的なものではなく、医学的ないし身体的なものであることを証明するものとして、自責の念からの解放という効果を当事者にもたらしていることが確認できます。

【診断の限界】
診断は、病者が精神的安定を得るきっかけとなっていますが、他者とのかかわりにおいて、必ずしも肯定的な効果を及ぼしていません。診断後に福祉サービスを受けられないか保健師に相談したところ、「愚痴なら聞きに来ます」と言われショックを受けたケースでは、病者が礼儀を欠いてはならないと無理して坐って話をしたために、保健師には見た目以上に考慮すべき対象とはうつりませんでした。病気の深刻さが伝わらないのは、相手が親密でない他者だからというわけではなく、実際に日々、病者が苦しんでいるのを知っている/見ているはずの家族でさえ、深刻な病気と見なさないケースが多いです。頻繁に入院している事実を知りながらも、FMと診断されたことを伝えた姉に、「死なないんじゃ、大したことないじゃん」と言われた方もいます。

病気の深刻さは、周囲の人々には診断されたという事実だけでは伝わらず、診断されようがされまいが、患いそのものに対する周囲の評価は低いままであることがわかります。診断され患う姿を見せているにもかかわらず、その実態が他者に伝わらない状況は、病者のリアリティがないがしろにされているという意味で、病の経験が診断以前と同様に毀損されていると言えます。こうした事態は、診断以前と同様に病者に大いなる精神的苦痛を呼び起こしますが、診断されていることを告げても病気と見なされないケースもあり、「病気」と認知されているだけでも良いのかもしれません。

FMで激痛に襲われた時に、妹に「痛くないと思ったら痛くないんだから」と言われた一言は、「気のせいだ」と同種の言葉であり、疲労や痛みといった目に見えない症状は、すべて病者の想像の産物に過ぎないことを含意しています。家でぐったりしていると、家族に家事を免れたいがために仮病を装っていると非難されるという、ME/CFSの患者さんの場合には、「医学的に証明されたわけではない」とか、バイオマーカー不在の事実を持ち出して、家族が病気の存在を否定します。ME/CFSと診断後に障害年金について行政に相談に行って、「そんな病気はありません」と言われた方も。診断されて、病気であることを証明できると思った矢先に、他者から患いを矮小化され、場合によっては病気の存在そのものを否定されてしまいます。

【診断のパラドックス】
ME/CFSやFMの診断の効果は、他者とかかわる場面で限界を呈するとともに、病気の実在をあらわすところの病名が病気の不在をあらわすという「診断のパラトックス」が生じています。診断の限界及びそのあらわれ方を診断のパラドックスとして提示する本論文は、時間的・対他的限界性を考慮して診断の効果を同定する必要性を提起しています。診断のパラドックスは、周囲の人々による「患い/苦しみの脱正統化」と呼びうる事態です。通常、病名診断を得た病者は、「患者」の地位を与えられ、社会の是認のもとでさまざまな義務を免除され治療に専念するとされますが、ME/CFSやFMの診断は、他者とのかかわりの中では「患者」であることを必ずしも保障せず、日常的な義務が免除される理由にもならず、病者の患い/苦しみは、いったん診断によって正統化されるものの、その正統性を信用しない他者によって脱正統化されてしまいます。このことは、診断そのものの正統化作用の脆弱さを示唆しています。

【おわりに】
診断以前は診断さえされれば他者に納得してもらえるという希望がありましたが、診断されても病気と見なされないという事態は、当事者をジレンマに陥れます。こうした背景には、社会的認知の不足、バイオマーカーの不在、症状の不可視性などの要因が考えられ、今後は診断のパラドックスが生じる背景、パラドックスのメカニズムを解明する必要があります。また、「病気」の社会的実在性がどのようにして担保されるのか、その諸条件が検討されるべきです。

17.7.30保団連学術活動交流集会で申理事発表

7月30日に新宿農協会館において開催された、保団連(全国保険医団体連合会)研究・学術活動交流集会において、各都道府県の保険医協会の学術担当の医師・歯科医師が集まる会で、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の日常診療-実態調査概要と今後の治療も踏まえて」と題して、当法人の申理事が発表致しました。

昨年の第31回保団連医療研究フォーラムで報告し、今年2月に保団連誌「診療研究」に掲載された内容を発表しました。ME/CFSの定義、見た目が健康そうで通常の検査で異常が出ないため、医療から心因性の病気や詐病を疑われ、孤立していたME患者さんが患者会を結成し、行政、医師・研究者、マスコミを巻き込んで本疾患の認知を広めていった経緯、客観的診断基準が確立していないために、難病新法や障害者総合支援法の対象外とされている患者の、障害年金や身体障害者手帳取得を促進するための取り組み、厚労省による実態調査の実現とその結果、海外の脳画像や神経免疫系を中心とした新たな知見、それを受けた米国NIHの包括的な研究、患者会の要請を受けた国内における神経内科の専門家の取り組み、様々な治療法の紹介をしました。

最後に、昨年の国会請願採択を受けて、患者会として国に神経内科の拠点病院作りと、神経疾患としての病態解明と治療の研究の推進を引き続き要請しており、かかりつけ医として普段の診療と公的支援取得のための仲介などをしていただくことをお願いしました。

終了後、「子宮頸がんワクチン副反応患者に有効なBスポット療法をME/CFS患者の治療に応用していると聞いて、子宮頸がんワクチンの副反応とされている若年患者さんの中に、ME/CFS患者が紛れていないかなど関心が高い」という意見が出されました。

交流会では、香川県保険医協会の先生がご挨拶にみえました。神経内科医として昨年の保団連誌を見て関心を持たれ、患者会に入会してくださいましたので、アドバイスとご協力をお願い致しました。また、「職員の方の症状がMEかどうか心配である」、「米国ネバダ州での集団感染があった理由は」等の質問を受けました。