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18.1.1Brain and Nerveに高橋良輔先生の記事掲載

18.1.1brain and nerveに記事掲載

医学書院発行の医学雑誌「Brain and Nerve」2018年1月号に、コマロフ先生の「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群における神経学的異常」と題する特別寄稿に対する解説「アンソニー・コマロフ教授と筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」が掲載されました。日本神経学会代表理事であり京都大学教授の高橋良輔先生、澤村正典先生、NCNPの山村隆先生によるものです。

ME/CFSはこれまで長年にわたって議論の対象になってきましたが、その議論の焦点は「ME/CFSは果たして本当の病気と言えるのか」という点でした。ME/CFSのバイオマーカーが存在しないために、その病因は謎に包まれ、多くの医師を含む社会がME/CFSを「本当の病気」と認知しないことは、「慢性疲労」という語感からは想像し得ない重篤な障害に苦しむ患者を偏見に暴し苦しめてきました。事実、ME/CFSに罹患して何年も寝たきりの患者が少なからず存在することは意外と知られていません。この状況に対してIOMは2015年、9000以上の過去の文献を調査し、ME/CFSは生物学的基盤を有する重大で複雑な疾患であることを明らかにし、精神症状はME/CFS発症後に現れる二次的なものであることを明言しました。

コマロフ教授はME/CFSの臨床的研究を専門とされており、本寄稿は2016年にコマロフ教授がNPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」の招きで来日された折の国際シンポジウムの講演に、筆者(高橋先生と山村先生)が感銘を受けたことに端を発します。コマロフ教授はこの総説で、過去の文献が脳内外での免疫系賦活を契機として炎症性サイトカインが放出されることでME/CFSが発症する可能性を指摘していることに焦点をを合わせて、次の仮説を提示しています。①脳内での感染による脳内の免疫系賦活、②全身・局所の感染や炎症に伴い、リポ多糖やグラム陰性菌抗原が血液脳関門透過性を亢進させた結果としての、血液循環を介した脳内での免疫系賦活、③腸管での感染や炎症をきっかけとする迷走神経を介したシグナル伝達による脳内での免疫系賦活、の3つのルートによる脳内免疫異常が原因ではないかというものです。

2017年に「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に17種類の炎症性サイトカインの変動がME/CFSの重症度に関連するという論文は発表され、コマロフ教授は「炎症がME/CFSの症状と相関する」との紹介論文を執筆されています。今回の論文では触れられていませんが、欧州では現在悪性リンパ腫治療薬である抗CD20抗体(リツキシマブ)のME/CFSに対する効果を検証する医師主導治験が行われています。第二相試験で有効性が示唆され、最近第三相試験も完了した模様です。ME/CFSの免疫病態の理解につながる研究であり、もし有効性が確認されれば、ME/CFSの医療現場に大きなインパクトを与えることが予想されます。

ME/CFSへの神経免疫学的アプローチが有効であることを提唱する本総説が、我が国の研究者や研究者を目指す学生、若手医師に、ME/CFSの研究への興味を呼び起こし、その病態解明を前進させるインパクトを与えることを心より祈念します。

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18.1.1Brain and Nerveにコマロフ先生の論文掲載

18.1.1brain and nerveに記事掲載

医学書院発行の医学雑誌「Brain and Nerve」2018年1月号に、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群における神経学的異常」と題して、ハーバード大学医学部教授でありME/CFSの世界的権威であるアンソニー・コマロフ先生の論文が、特別寄稿として英語の原文と日本語訳(高橋良輔先生山村隆先生監訳、澤村正典先生訳)が14ページにわたって掲載されました。

ME/CFSについての近年の研究結果は生物学的異常、特に中枢神経系や自律神経系に関連した異常が存在することを示唆しています。全米アカデミーズの医学研究所(IOM)はME/CFSに関する過去に出版された9000編以上の論文についてレビューし、「ME/CFSは、しばしば患者の生命を脅かし得るような、重篤で慢性的かつ複雑な全身疾患である」としました。米国国立衛生研究所(NIH)は、「疾病のリスクと治療標的を同定するためには、革新的な生物医学的研究が早急に必要である」という結論を下しました。この総説では、将来重要となる可能性を持つ知見について十分なエビデンスがあるものを中心に概説し、特に過去20年間に報告された新しい研究手法・技術を使用した報告に焦点を合わせます。

1.中枢神経系の異常
ME/CFSでは中枢感作のエビデンスが示されています。ME/CFS患者の疲労感は、併存するいかなるうつ症状でも説明ができません。労作後の極度の消耗感は、ME/CFSの非常に重要な症状であり、持続的な中等度の運動タスクを行うと、ME/CFS患者では健常対照者と比べ、筋疲労や痛みを伝達する代謝物の受容体遺伝子の高い発現がより高頻度にみられました。有酸素運動ストレス試験ではME/CFS患者は座位時の健常対照者と比較して嫌気的代謝閾値、心拍数、VO2、VO2 peakや最大運動能が大きく減少しており、嫌気的代謝への依存度が相対的に増加していることが示されました。

ME/CFS患者の脳脊髄液では健常対照者と比較して細胞増加や蛋白質濃度上昇を認める傾向があり、健常対照者や全般性不安障害の患者と比較して乳酸高値を認めるという報告があります。液体クロマトグラフィー、質量分析、ペプチドシークエンスを使用したプロテオミクス解析では、中枢神経系での組織損傷と修復を示唆する蛋白質群の増加を示しました。

多くのMRI研究では白質での異常が指摘されており、T2強調画像での斑状高信号領域の増加や、白質の広範な減少を認め、白質は経時的に減少し、症状スコアとの相関を認めました。機能的MRIでME/CFS患者と健常対照者を比較すると、認知機能、運動、視覚や聴覚刺激で明らかな反応の違いがみられました。SPECTでは神経細胞、グリア細胞における血流低下や代謝障害を反映した異常を認めます。PETでは複数の脳領域でセロトニントランスポーターの減少を認め、特に海馬で最も著しかったです。活性化ミクログリアやアストロサイトで発現する輸送蛋白質のリガンドを用いた小規模研究において、ME/CFS患者で帯状回皮質、海馬、偏桃体、視床、中脳や橋の広範囲にわたる免疫活性化がみられることが示されています。

脳波検査のスペクトル解析はME/CFS患者を健常対照者や大うつ病患者と区別ができるパターンを示しました。またEGG研究では、様々なタスクにおける反応時間の遅延を示しています。複数の研究者により脳幹血管運動中枢、中脳網様体、視床下部や前頭前野での結合性障害が報告されています。

多くの研究ではME/CFS患者での視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)の抑制が報告されており、これは大うつ病でみられるHPA系の亢進とは明らかに異なったパターンです。プロトンMRスペクトロスコピーにより、神経細胞密度や神経機能のマーカーとみなされているN-アセチルアスパラギン酸が海馬において減少していることが確認されました。またMRスペクトロスコピーを用いた複数の研究は、ME/CFS患者におけるコリン含有物質の増加を示しています。典型的には精神疾患はME/CFS発症後に出現し、ME/CFSの発症前における精神疾患罹患率は一般人口と同程度以下でした。

2.自律神経障害
多くの研究において、交感神経活動の障害、圧反射機能障害(体位性頻脈症候群、神経調節性低血圧、ティルト試験での心拍変動)、静脈貯留増加を伴った赤血球量減少、血漿容量減少や脳血流低下の強いエビデンスを確認しています。

3.全身性のエネルギー代謝異常
ミトコンドリアの機能障害に関しては多くのエビデンスがあり、最近のメタボロミクス研究では単糖、脂肪酸、アミノ酸からのエネルギー産生経路に異常がみつかっています。実際、一つのメタボロミクス解析では数百の代謝産物のほとんどが、まるで冬眠状態のように顕著に低下していました。

4.酸化・ニトロス化ストレスの体系的研究
酸化ストレスの増加が血液や筋肉で様々なマーカーにより示されており、抗酸化物質の減少、症状の重症度との相関のある過酸化物や超酸化物の上昇、αトコフェロールの減少、安静時や運動後のイソプロスタンの上昇、症状の重症度と関連のある酸化還元状態の障害を認めます。

5.免疫系の研究
様々な種類の免疫異常の表現型や免疫機能異常がME/CFS患者で報告されています。ME/CFSに特異的で再現性のある異常としては、①様々な自己免疫抗体(特に中枢神経系の抗原に対するもの)、②細胞表面に活性化抗原マーカーを発現するCD8陽性細胞障害性T細胞の増加、③ナチュラルキラー細胞の機能障害(ウイルスの急性感染や再活性化を抑制する機能が障害され、自己免疫応答を促進する可能性がある)、④Ⅱ型サイトカイン産生細胞の増加、⑤様々な炎症性サイトカイン産生の増加です。

ME/CFSはしばしば感染症のような症状から突然始まり、ME/CFSにおける感染性因子の関与を示唆します。加えて、過去一世紀の医学文献では、特定可能で記載の十分な急性ウイルス・細菌感染症に続発、あるいは原因不明の感染症様病態に続発した「感染後疲労症候群」について多くの報告があります。感染症とME/CFSをつなぐ他のものとして、細菌叢、特に腸内細菌叢があります。ME/CFS患者では共生腸内細菌に由来する抗原に対するIgA抗体やグラム陰性菌のリポ多糖の上昇がみられ、IgA、LPSと症状の重症度には強い相関関係がみられます。

6.病態生理に関する推測
ME/CFSはすべての場合で脳を含む最終共通経路があると考えられます。つまり、きっかけとなる出来事が脳に直接関与しても、脳外から開始しても、それが最終的に脳で共通する経路を惹起します。下記の仮説が想定されます。
・ME/CFSの症状は脳での低グレードの免疫系賦活や脳内の免疫細胞により放出されるサイトカインにより生じます
・ある症例では、脳での免疫系賦活は病原体や自己免疫応答機序などの脳内の誘因により生じる可能性があります
・別の症例では脳での免疫系賦活は脳外での自然免疫系賦活により生じる可能性があります
・脳外での自然免疫系賦活が脳内免疫系を活性化する機序としては2つあり得、一つは液性経路で、もう一つは神経経路です
・血液中の炎症関連分子または自然免疫活性化の引き金を引く物質により、血液脳関門の透過性が亢進します
・脳外での自然免疫系賦活が炎症性サイトカイン、グルタミンなどの興奮性アミノ酸、NO、活性化酸素やプロスタグランジンなどの神経興奮性分子を生じ、(これらの分子に対するケモレセプターを持っている)グリア細胞や感覚迷走神経の傍神経節のケモレセプターが活性化されることで逆行性に迷走神経から孤束核へとシグナルが伝達され、脳での自然免疫が惹起されます

7.おわりに
ME/CFSは近年の研究により、多くの客観的な生物学的異常が示されてきています。9000編を越える文献で中枢神経系や自律神経系、免疫系、エネルギー代謝、酸化・ニトロソ化ストレスに関する異常がみつかっています。ME/CFSに罹患することで多くの経済的損失を招いており、IOMの試算によると社会に対する直接・間接的な経済コストは、米国で年間170~240億ドルにも上り、さらなる研究が早急に必要とされています。

18.1.1Brain and Nerveに山村隆先生の論文掲載

18.1.1brain and nerveに記事掲載

医学書院発行の医学雑誌「Brain and Nerve」2018年1月号に、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の今」と題して、ME/CFSの特集が組まれました。その中で、国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部の山村隆先生、小野紘彦先生、佐藤和貴郎先生の「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の免疫病態」と題する論文が6ページにわたって掲載されました。大変遅くなりましたが、ご紹介させて頂きます。「Brain and Nerve」は、『脳と神経』 『神経研究の進歩』 の統合誌として2007年に発刊されたもので、日々更新される神経学、神経科学の知見をわかりやすく紹介する医学雑誌です。

ME/CFSはの生物学的病因を探索する近年の研究により、血液・脳脊髄液における種々のサイトカイン上昇、ME/CFS亜群と関連した自己抗体などの異常が明らかにされています。また、B細胞を除去する抗CD20抗体(リツキシマブ)がME/CFSに有効であるという医師主導治験の報告もあり、自己免疫応答亢進などの免疫異常を背景とする中枢神経系炎症がME/CFSの本態である可能性が議論されています。

医学界における本疾患に対する認識は十分ではありませんが、近年、関心が高まり、神経炎症、免疫異常、代謝異常などを想定した生物学的研究が各国で始まっています。この背景には、米国国立衛生研究所(NIH)が積極的にME/CFSの研究を推進していることがあります。2014年にはNIHでワークショップが開催され、ME/CFSは精神疾患ではなく生物学的・器質的異常に基づいて発症し、生命を脅かす深刻な疾患であることが専門家集団によって明言されました。一方欧州では、ME/CFSに対する抗体医薬(リツキシマブ)の有効性を検証する医師主導治験が進行しており、ME/CFSにおける免疫系(とりわけB細胞)の役割が注目されています。また、ME/CFSが自己免疫疾患である可能性も議論されるようになっています。

米国医学研究所(IOM)の委員会は、ME/CFSに関連する多数の論文を精査した結果、ME/CFSはしばしば患者の生命を脅かす、重篤で慢性経過をたどる複雑な疾病であること、精神科的な問題は続発することはあっても問題の本質ではないこと、神経学的異常として白質障害に起因する情報処理能力の低下、PETや機能的MRIにおける異常所見などを合併することなどを明確にし、ME/CFSでは神経伝達物質シグナル異常を示唆する強いエビデンスが存在するとしています。これらの所見は、ME/CFSに相当する疾病概念を神経系疾患に分類しているWHOの国際疾病分類第10版に呼応するものです。

海外では過去に集団発生の報告があり、ウイルス感染との関連が推測されます。ME/CFSの臨床経過は、代表的な免疫性神経疾患である多発性硬化症と一部類似しています。ME/CFSの自己免疫疾患仮説を支持する研究者は、①ME/CFSでは感染性病原体が自然免疫系を活性化し、それに続発して自己抗原への感作が成立しやすくなる可能性、あるいは、②ウイルスが自己抗原と相同性を有するペプチド配列を有し、それに対する感作が自己免疫病態を誘導する可能性を考えています。

2015年にHorningらは、発症後3年以内の早期ME/CFS患者、3年以上経過した慢性期ME/CFS患者、健常者に由来する血液試料を対象とした研究によって、炎症性サイトカイン・抗炎症性サイトカインの上昇、及びサイトカイン間ネットワーク異常が早期ME/CFS患者において証明できること、このようなサイトカイン異常は重症度よりも罹患期間に強く関連することを報告しました。さらにHorningらは、ME/CFS、多発性硬化症、健常者の脳脊髄液試料を用いて51種類のサイトカインを解析したところ、好酸球の遊走に関連するケモカインCCL11のME/CFSにおける上昇を確認しました。またネットワーク解析では、1L-1シグナル経路に関する異常を見出し、中枢神経系における免疫系の活性化は明確であり、それはアレルギー性炎症またはTh2細胞介在性自己免疫応答を反映している可能性があると報告しました。

同じ研究者を含む研究グループによって、最近「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に発表された論文では、患者と健常者の比較解析において、患者群における血清トランスフォーミング増殖因子αの上昇とレジスチンの減少を証明しています。さらにME/CFSの重症度と17種類の液性因子が相関することを示しました。炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカイン、様々な機能を有するケモカインが同時に変化していることから、これらのME/CFS病態に及ぼす意義は現時点では不明ですが、炎症性サイトカインの介在する炎症反応に拮抗する形で抗炎症性サイトカインが上昇している可能性は考えられます。

ME/CFSにおける神経系抗原に反応する自己抗体の研究が盛んになっています。最近では、ME/CFS患者の一部においてβアドレナリン受容体、及びムスカリン受容体に対する自己抗体が検出されることが報告され、リツキシマブの治療効果やPOTS(体位性頻脈症候群)やCRPS(複合性局所疼痛症候群)との関連が推測されています。ME/CFSにおけるナチュラルキラー細胞の機能異常については多くの研究があります。また、ME/CFSにおいて腸内細菌叢異常の存在が注目されており、抗炎症性菌種の減少により腸管炎症が持続し、制御性T細胞の異常などが生じる可能性が考えられます。

前述したノルウェーのFlugeらによるリツキシマブの治験は、152例のME/CFS患者を対象とする多施設共同研究が実施されて、半年以内に結果が公表される模様です。リツキシマブの効果の発現には、数ヶ月以上の時間が必要であり、これはB細胞から分化する抗体産生細胞の枯渇に要する時間に対応する可能性があります。ME/CFSの治療薬として開発されてきた薬剤として、二本鎖RNA医薬でありToll様受容体3のアゴニストであるアンプリジェンは重要な位置を占めますが、米国では承認に至っておらず、今後の開発については先が読めない状態が続いています。

神経免疫疾患は、その免疫異常や炎症をコントロールすることで制御が可能な疾患群として理解され、そのこと自体はME/CFSが将来的には治る疾患になることすら意味します。ME/CFSを慢性ウイルス感染と関連づける考え方もあり、その可能性はME/CFS神経免疫疾患仮説と矛盾するものではありません。疾患研究は患者を診療するところから始まるべきであり、ME/CFSの診療を行う医療機関が増えることが必要です。そのために何ができるのか考えるだけではなく実行すべきときが来ているのではないでしょうか。

 

18.12.20「障難協」会報に福祉講座の記事掲載

12月20日発行の一般社団法人埼玉県障害難病団体協議会(障難協)の会報「障難協」に、「県民講座に参加して」と題して、11月25日に開催された第37回県民福祉講座に参加した3名の方の報告・感想を、写真入りで掲載して頂きました。

【障難協事務局の宮野さん】
ドキュメンタリー映画「この手に希望を~ME/CFSの真実~」上映後、専門医と患者会代表に講演して頂きました。この疾患の患者は、病状そのものが過酷であるだけでなく、社会的な偏見や制度の谷間で苦しんでいます。WHOにおいて神経内科の領域の疾患と分類されているにもかかわらず、日本ではずっと末端の症状にすぎない「疲労」に焦点を当てた研究が続けられてきました。

今回の講座では、神経内科の専門医である国立精神・神経医療センター神経研究所免疫研究部部長の山村隆先生に、この疾患の原因、病態の解明など研究の最前線についてお話しいただきました。今年4月にはAMED(日本医療研究開発機構)に山村先生を班長とする研究班が発足されました。また、ほぼ寝たきりの重症患者でありながら、2010年に患者会を立ち上げ、ドキュメンタリー映画も製作した、NPO法人筋痛性脳脊髄炎の会理事長にもお話しを伺いました。アメリカ留学中の1990年にME/CFSを発症、帰国後、日本では身体的な病気として認められず、神経内科医が誰もME/CFSを神経系疾患と認識していない中、患者会を発足させ、海外の最新の論文等を翻訳し、神経疾患としての研究を訴え続けてきました。

この疾患は平成26年度の厚労省の実態調査によって、3割が寝たきりに近い重症患者であると判明したにもかかわらず、指定難病にも、障害者総合支援法の対象疾患にもなっていません。山村先生率いる研究グループにより、国内でもME/CFSの新薬のための治験の可能性が出てきており、免疫細胞であるB細胞に特異的な異常があることや、脳のMRI画像の解析により脳内の構造に異常があることなどが分かってきました。さらに研究が進み、診断基準が確立し、指定難病への道が開かれることを切に望みます。

【さいたま市在住の40代の女性】
TVでCFSのことを知り、病院を調べて病名が付きましたが、体が薬を受け付けず、民間療法に切り替えました。そんな中で患者会の存在を知り、色々な情報を得ることができました。それまでは、痛みの辛さだけではなく、病気がよく分からない不安が大きく、周囲の理解も援助も期待できず、何度死にたいと思ったかわかりません。この講座に参加して、病気の研究の現状を知ることができ、患者会理事長がここまでやってこられた軌跡とその努力の大きさが理解できました。何より夫が参加して、この病気を理解し受け止めてくれて本当に良かったです。心から感謝しています。

【高知市在住のHさん】
妻がMEですが、山村先生のお話が大変すばらしかったです。MEの研究がどこまで進んでいるのかについて、研究の最前線にいらっしゃる方ならではのお話が聞けました。私の理解度がついてゆかず、理解度30%という感じですが、励まされ、とても心強く感じました。明るい気分で高知に戻り、家族に報告しました。

18.12.21ME/CFSの会ニュースNo.36発行

2018年3回目のME/CFSニュースNo.36を発行致しました。お読み頂ければ、神経系疾患としての研究が飛躍的に進んでいることを実感して頂けると思います。また、NHK EテレのハートネットTVやヤフーニュースなどで、大きく取り上げて頂くことができました。

ME/CFSの会ニュースNo.36を多くの方にご紹介頂ければ幸いです。

・埼玉県民講座で山村先生が講演しました
・日本神経免疫学会で山村先生発表
・NCNPから患者の脳に異常があるとの論文発表!
・NCNPの論文は様々なところで紹介されています
・NHK Eテレの「ハートネットTV」で放送
・Yahoo!ニュース特集で動画と記事公開
・ガイドライン(案)への国際学会の見解の翻訳
・国際学会からの見解についての記者会見
・神経治療学会に患者会ブース出展

・東京保険医協会と東京都との交渉
・狛江市で上映会を開催しました
・健康まつりで上映しました
・山口県の研修会で上映しました
・JDと年金局との交渉
・障害年金再審査請求の公開審理
・新しい難病対策課長補佐へご挨拶
・クラウドファンディングの支援者の皆様
・事務所が移転致しました

ME/CFSの会ニュースNo.36はこちらからご覧頂けます

18.10.23NHK EテレのハートネットTVで放送

10月23日(火)にNHK Eテレの「ハートネットTV」という30分間の番組で、「忘れられた病~筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の現実~」と題して、夜8時からME/CFSを取り上げて頂きました。重症患者の実態、福祉サービスを受けることの困難さ、診断が得られない苦しみ、行政の無理解に苦しむ患者、当法人の取り組み、神経系疾患としての研究、治療への取り組みなどを取り上げて頂きました。10月30日(火)13:05~13:35には、再放送されました。

東京都内に暮らすSさん(47)は、10年ほど前にME/CFSを発症しました。全身が鉛のように重く、音や光にも敏感なため、一日の大半を電気を消した部屋で横になって過ごしています。病気で動けないため、家事の多くは高校生の娘(17)が担っています。少しの音でも心臓や脳に突き刺さるように感じるため、お皿の出し入れも、音が出ないように気を付けています。ヘルパーを頼もうともしましたが、わずかな刺激でも体調が悪化してしまうため断念しました。

36歳で発症した時、Sさんはホームヘルパーとして働きながら、まだ幼い娘を一人で育てていました。ある時、肺炎にかかり微熱や倦怠感などがいつまでも続き、次第に起き上がれない日も増え、やむを得ず40歳で退職。治療に専念することにし、様々な病院を回り検査を受けましたが、異常は見つからず、体調はどんどん悪化していきました。「とにかく眠れず、光とか音とかに過敏になって、立っていられないし、もう寝てても横になっていてもしんどい」

たまたまある病院のスタッフから「慢性疲労症候群」という病気があると聞き、インターネットで患者会のホームページを調べると、そこには、自分とまったく同じ症状が書かれていました。患者会の資料を持って大きな病院を受診しましたが、血液などの検査結果には異常が見られないため、医師は資料を見ることもなく、「慢性疲労症候群っていうのはあるみたいだけど、あれってはっきり言って病気じゃないしね」と言われてしまいました。この病気を診てくれる医師はいないのか必死で探し、ある病院にたどり着いたのは発症から8年後、ようやく診断を受けることができました。

Sさんを診断した静風荘病院・特別顧問の天野惠子先生は、「筋痛性脳脊髄炎」の診断の難しさをこう語ります。「どんな病気でもそうですが、教科書に載らないと、なかなか一般のお医者さんがこの病気を認知することは無理なんです。検査をしても『何でもない、気のせいでしょう、もうちょっと様子みましょう』と言われ、その様子をみましょうが、あっという間に何年もたってという状況になります。その間にどんどん悪くなって、普段できていたことができなくなり、仕事を辞めることになります。教科書以外の色々な病気をひろって、患者さんを治してあげようという気持ちがない限りは、門前払いになります。」

ようやく診断がついても、根本的な治療法はまだ見つかっていません。Sさんは今もつらい症状に悩まされ、一人の時の食事は介護用の宅配弁当で済ませますが、指先の筋力が低下し、箸は使えません。食事をするだけで体力を消耗し、倒れ込んでしまいます。この3年間、通院以外で家の外に出たことはほとんどありません。日本の患者はおよそ10万人。その内の3割がSさんのように重症な人たちです。いまだに診断さえ受けられない人が少なくありません。

一方で、患者の置かれた状況を変えようとする取り組みが始まっています。患者会代表の篠原三恵子さんは28年前にこの病気を発症。8年前に患者会を立ち上げ、病気への理解を求めて活動しています。ドキュメンタリー映画の上映会では、情報を得られず困っている患者たちの姿もありました。現在、障害者手帳を取得し、ヘルパーの介助を受けながら生活していますが、篠原さんのように福祉制度を利用できる患者はまだ少ないのが現状です。患者会では国に対して病気の実情を知ってもらい、医療と福祉を充実させるように陳情を重ねてきました。「最終的な目的は、治療薬ができ、少しでも働けるようになるとか、学校に戻って勉強するとかが患者さんたちの本心ですので、それを目指したいと思っています。」

障害者手帳があれば、医療費の助成や車いすの支給などの様々なサービスを受けることができますが、意見書は法律で定められた指定医でなければ書けません。しかしこの病気を理解している指定医はまだわずかです。たとえ歩けたとしても、その後、回復できずに寝込んでしまう場合は、障害の程度を重く見なければならないと言います。困っている患者と出会ったのをきっかけに、3年前から意見書を書くようになったこの医師のもとには、全国から患者がやってきますが、これ以上の受け入れは難しいとも感じています。「患者さんを診て同情する、やる気のある医者が各都道府県にたった1人でもいてくれたら・・・」

今年の4月、国は新たな研究班を立ち上げて、病気の解明に乗り出しました。国立精神・神経医療研究センターでは、患者の血液からリンパ球を分離して解析。すると免疫を司る細胞に、明らかな異常が見つかりました。AMEDの「ME/CFSに対する診療・研究ネットワークの構築 」研究班の班長・山村隆先生は、病気のメカニズムを読み解くカギになると考えています。「免疫系が暴走して、脳の中に免疫系が入り込み、炎症を起こしているのではないかというのが一つの仮説です。血液を採るだけでこの病気の確率がどれくらいなのか、あなたは100%この病気にかかっています、と言えるような時代が来ると思っています。」

強い電磁石を頭にあてて、脳の表面に電流を発生させるrTMSと言われる新しい治療法の研究も始まりました。4年前に発症した女性は、一時は家事さえできずに、家で寝たきりでした。「浮き沈みはありますが、症状が悪化してから体調がベストの状態になってきてると思います。仕事とか、社会とつながりたい。」研究班ではこの治療の成果を検証し、全国に広めていきたいと考えています。

医療が進歩する一方で、時間との闘いをせまられている人たちがいます。新潟市に暮らすMさんは、9年前に発症し、今はほぼ寝たきりの状態です。病気で仕事を失い、生活保護を受けながら一人で暮らしています。新潟市内の病院では診断がつかず、知り合いの患者から富山にあるクリニックを紹介してもらいました。そこでは近くの医療機関と連携してrTMSにも取り組んでいます。Mさんは今年2月に受診し、ようやく診断を受けることができました。

定期的に受診したいたいと思い、新潟市に医療費の支給を申請しましたが、申請は却下されてしまいました。理由はクリニックが近くでないことと、対症療法は新潟市内でも行うことができるはずとされました。生活保護を受けている人は、健康保険に入れず、行政から医療費を支給されないと全額自己負担になります。現在、Mさんは弁護士を通じて処分の撤回を求めていますが、次に受診できる見通しはたっていません。全身の疲労感や筋力の低下が進み、体調は悪化し、最近は食事をとることも困難なため、栄養剤でしのいでいます。この2ヶ月で体重は10キロ以上、減ってしまいました。希望を見失いそうになる日々が続いています。

日本で患者が確認されておよそ30年。正しい診断と治療が受けられることを患者たちは願っています。

18.10.19Yahoo!ニュース特集で動画と記事公開

10月19日(金)に、インターネットのYahoo!ニュース特集「深層クローズアップ」に、「社会から理解されず、見過ごされ 『慢性疲労症候群』患者の切実な声」と題して、記事と動画が公開されました。4人の患者さんの実態や、AMEDの「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群に対する診療・研究ネットワークの構築 」研究班班長である国立精神・神経医療研究センター神経研究所の山村隆先生のお話しを取り上げて頂きました。

この病気は、明確な原因は分かっておらず、治療法も確立されていません。3割が重症患者とされ、重度になると寝たきりになってしまうにも関わらず、患者たちの多くは「怠けているだけじゃないか」といった心ない言葉を浴びてきました。「慢性疲労症候群」は「筋痛性脳脊髄炎」とも呼ばれ、症状が進むと光や音の過敏症になり、音のない暗い部屋で寝たきりでいるしかない患者もおり、家族と一緒に住んでいると、廊下を歩く音や冷蔵庫を開け閉めする音も耐えられないケースがあるといいます。

【動画】
28年前に発症したSさんは、介助がなければ外出することができず、40分間買い物に出ただけで寝込んでしまいます。最近、一日のほとんどをベッドで過ごしています。症状が一番重かった時には、「真剣におむつをすることを考えたくらい。背中は痛いし、力も入らないし、寝られなくて」食事はすべてヘルパーに作ってもらい、食事介助を受けています。現在、患者会の代表を務めています。医師にも社会的にもこの病気を理解してもらえなかったために、8年前に患者会を立ち上げました。「人に会う時は珍しく体調が整っている時だけなので、元気そうじゃないと言われますが、その後は誰にも会えず、家族とも口をきかないで寝ている状態になります。それを外の人は絶対に見ないので、この病気の深刻さをわかってもらえません」

9年前に発症したKさんは、心理カウンセラーとして働いていましたが、現在は仕事を辞め、一日のほとんどをベッドで過ごしています。「週に一回、往診で痛み止めの注射を受けていますが、効果は一時的なものです。」治療ができる病院が少ないため、一か月ぶりの通院に、1時間かけ3つの電車を乗り継いで通院しています。Bスポット療法と呼ばれ、鼻の奥を刺激してリンパの流れを促し血流の循環を正常化させるのもで、Kさんは頭痛が取れ意識がはっきりすると言います。数少ない治療法の一つで、症状緩和の効果は2週間ほどです。この病気には他の難病とは違った難しさがあります。「一番大変なのは社会的認知の低さだと思います。病気だけを相手にしているのではなく、医療の方で理解のある方になかなか巡り合えないと、たらいまわしが続きます」

【記事】
Sさんは1990年、32歳のときに米国の大学に通っている時に発症。発症の6年後に帰国し、そこで思いがけない現実に直面します。「アメリカでの診断書を持って、大学病院や都内の病院などいくつも病院を回りましたが、どこに行っても否定され、最終的には『身体表現性障害』だと言われました。何人ものお医者さんから『怠けているんだ』、考え方とか、私の人格の全てが悪いから体がおかしくなるみたいに説教されました。」2010年、患者会「慢性疲労症候群をともに考える会」を立ち上げ、そこで出会った医師に診断された時には、帰国から既に14年が過ぎていました。

病気を医師にも社会的にも理解してもらえない現状は、今も大きく変わっていません。Sさんは「深刻さを理解してもらえず、お医者さんからも行政からも、ひどいことを言われ……。患者会を立ち上げるまでは、病名を隠していました。例えば、お医者さんには何日も前から体調を整えて行き、通院後にどっと疲れて1〜2週間は寝込んでも、家族以外は本当に具合の悪い状態は見ませんから、お医者さんが知っている姿は、この病気の本当の姿ではないんです。」

Gさん(25)は大学3年生ですが、13歳だった中学2年生のときに体に異変を感じ、6年後に診断されました。「光過敏症」もあるため自宅の部屋は薄暗く、ベッドの周りのすぐに手に取れる近さに、本が積み上がっていました。Gさんは発症後、大学病院で2年間の検査入院を強いられました。「マイコプラズマ肺炎にかかって、2週間くらいで肺炎は治ったのですが。」小児科から精神科まで、あらゆる診療科で検査しましたが異常は見つかりません。医師たちは「小児科では何も悪いところがないから精神科で原因を見つけてくれ」「なんでもかんでも精神科に持ってくるのはやめてくれ」などと責任を押し付け合うようでした。

母のMさんは「『お母さんが甘やかしたから、学校に行きたくなくてわがままを言っているんじゃないですか』と言われたり、『虐待した心当たりはありませんか。胸に手を当てて思い出してみてください』と言われたりしました。私が悪いことをしたから、それが(心の)傷になって動けないのかなと思いましたが、自分には『虐待は絶対にしていない』という思いがありました」と語ります。Gさんは高校に進学せず、自宅で療養を始めたころ、患者会代表になっていたSさんの新聞記事を見つけ、患者会に連絡を取って診断できる医師を紹介してもらいました。Mさんは「病名が分かって本当に良かったです」と打ち明けます。

日本では「ストレスを原因とする疲労の病気」として研究が進みました。病気の理解が進まない理由の一つは、血液検査や一般的な精密検査をしても異常が見つからない点にあり、しかもストレスや心因性要因で生じる重度の「うつ症状」と酷似していることなどから診断は難しく、研究している研究者や医師も少なく、専門的に診察している医師は全国に十数人しかいないとされています。神奈川県の内科医Jさんはその1人です。

J医師のもとには、診断された全国各地の患者から、身体障害者手帳を取得するために必要な医師の「意見書」を出してもらうための診察の依頼があります。J医師は、「身体障害者福祉法に基づく指定医の意見書に、障害の程度を検査に応じて記入するのですが、(この病気に理解のない指定医に依頼すると)病名を見ただけで、拒否されるケースが非常に多いんです」と語ります。「手帳の交付は本来、病名で判断するのではなく、障害の程度によって認定するのですが、指定医であってもこの病気にはめったに出会いません。どう検査したらいいのか知識がなく、初めて診る疾病だから記入にとても時間が掛かります」

この病気に対する理解の乏しさは、「障害年金」にも及んでいます。栃木県宇都宮市のAさんは、6年前に発症。病気になる前は派遣社員として働いていましたが、今は無職です。AさんはJ医師に意見書を書いてもらい、「身体障害者手帳」の交付を受け、毎月約2万円の「重度心身障害者手当」を得ていますが、収入はそれだけです。国民年金法などの規定によると、障害年金の申請では、その疾病と因果関係があると考えられる最初の診察日を「初診日」とする決まりです。Aさんの場合は6年前、仕事中に倒れて病院に行った日から今の症状は続いているため、普通に考えれば、6年前のその日が「初診日」ですが、日本年金機構はAさんの申請を「却下」しました。

このためAさんは、再申請の準備を始めました。自分の倒れた6年前を「初診日」として認めない行政の判断に、どうしても納得できないからです。患者団体などによると、Aさんのような「初診日」の認定問題によって、経済的に苦しむ患者は少なくありません。「再申請でもダメだったら、訴訟もしたい。裁判ができるのであれば、『初診日』について闘っていこうと思います」

この病気には、確立した治療法が現在もありません。国立精神・神経医療研究センターの神経研究所特任研究部長(神経内科が専門)の山村医師は、この病気の原因解明で先端的な研究を手掛けています。「慢性疲労症候群は単なる疲労の状態を示すものではなく、最近の研究では、脳の中で何らかの炎症が起きているということが分かってきました。それがさまざまな症状を引き起こしており、原因の根っこには免疫系の異常があると考えています。引き金はいろいろですが、特定のウイルス感染、あるいは咽頭や扁桃の炎症です」

山村医師によると、10年前には研究の手がかりさえなかったのに、「脳の炎症」と「免疫系の異常」という原因が分かってきたため、免疫系と脳の炎症の研究者が積極的に研究を進め始めており、今後は画期的な診断法や治療法が見つかる可能性があるといいます。「研究はとにかく始まりましたが、決定的なレベルのものが出ている段階ではありません。治験には時間が掛かります。私たちがその成果を手にして患者さんに届けられるのは5年先かもしれませんが、私の感覚では夜明け前です」