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21.4.11北海道新聞に啓発イベントの告知記事 

4月11日付けの北海道新聞に、「筋痛性脳脊髄炎(ME)/慢性疲労症候群(CFS)の国際啓発デー(5月12日)にちなんだ初のイベン ト(オンライン) 」と題して、当会の啓発デーイベントの告知記事を掲載して頂きました。

5月9日午後1時~3時半。1部はこの疾患の啓発ドキュメンタリー映画鑑賞。2部は講演「感染後に発症する神経免疫系難病ー新型コロナ時代の医学常識」(講師・山村隆国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部長)と質疑応答。3部は参加者による交流会。

参加希望者は主催者のNPO法人筋痛性脳脊髄炎の会へ申し込む。申込期限は5月3日だが、先着定員100名になり次第締め切る。

21.4.3Newsweekにコロナ後遺症患者の苦悩

4月3日付のNewsweekに、「『ウイルスは検出されず』でも重い症状が何カ月も…偏見とも闘う長期患者の苦悩」と題する記事が掲載されました。サブタイトルは「検査を受けてもただの心理的な症状と周囲に相手にされず、二重に苦しむロングホーラーの闘いの記録」

2020年3月、ヨーロッパから帰国後10日ほどしてインフルエンザのような症状が出ました。病院に行き、検査を受けましたが、結果は陰性。ビッグデータを扱う社会疫学者である私は、偽陰性だと確信しました。それから4カ月余りたった今も、症状は続いています(編集部注:この体験記が執筆されたのは20年8月)。

新型コロナに感染し、当初の症状が治ってウイルスが検出されなくなっても、長期間後遺症に悩まされる人が増えており、「ロングホーラー」と呼ばれ、私もその一人です。後遺症の典型的な症状の1つは疲労感ですが、ほかにもさまざまな症状が表れ、「ブレインフォグ(脳の霧)」と呼ばれる神経系の症状に悩まされる人もいます。

当初、私がかかった医師は診断がつきかねているようでした。検査は陰性でしたし、熱もなかったのですが、一応、呼吸器疾患と診断されました。3月末までには症状はだいぶ落ち着きましたが、その後また急変。救急治療室に運ばれ、ようやく新型コロナと診断されました。その後何週間もカーテンを閉め切ってベッドに寝たきりで過ごし、光や音の刺激が耐え難かったです。

なぜつらい症状が続くのか、必死でネットを検索するうちに、新型コロナの後遺症に苦しむロングホーラーたちのサポートグループの存在を知りました。そうしたグループのサイトをいくつかのぞいて、インフルエンザよりもひどい症状があるのに、入院を断られる人が大勢いることや、新型コロナは神経毒性を持つ疑いがあり、血液脳関門を突破して脳内に入り込む数少ない病原体と考えられることも知りました。

伝染性単核症や慢性疲労症候群と似た症状を訴えるロングホーラーも多く、症状はさまざまでも、多くの後遺症患者に共通する悩みは、医師に訴えても「気の持ちよう」で片付けられ、二重に苦痛を受けることです。7月、インディアナ大学の研究チームがオンラインで行った患者の聞き取り調査を基に、新型コロナの後遺症とみられる100余りの症状を発表。米疾病対策センター(CDC)は7月末、基礎疾患のない若年層でも後遺症が出ることがあると警告を発しました。新型コロナに感染して回復した人でも、抗体を持たない人は多いです。

多くのロングホーラーと同様、私も普通の生活に戻りたいと思っていますが、今もひどいだるさや「脳の霧」、頭痛などの症状があり、1日のうちの多くの時間は体を休ませています。ロングホーラーが感染前と同じペースで仕事をこなすのは難しく、かといって障害者枠に入るかどうかは微妙です。「若年層に見られる(ウイルス消滅後も)長く続く症状が慢性疾患かどうかは数カ月、1年、あるいはそれ以上待たないと分からない」と、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は述べています。

経済的な安定は健康の維持に欠かせず、ロングホーラーが仕事を続けられるよう、雇用者はぜひ体制を整えてほしいです。長期にわたって体調が優れないストレスに加え、失業の不安が重なれば、精神疾患を引き起こす恐れもあります。新型コロナのリスクを解明し、より有効な予防や治療方法を確立するためにも長期に及ぶ後遺症の研究は欠かせません。

21.4.2NewsweekにCOVID-19の脳への影響

4月2日付のNewsweekに、「意識障害、感情の希薄化、精神疾患…コロナが『脳』にもたらす後遺症の深刻度」と題する記事が掲載されました。サブタイトルは「呼吸器系感染症とばかり思われていたが、脳神経に与える影響が注目され始めた」

テキサス大学保健科学センターの神経学者のガブリエル・デエラウスキンに付いている研修医の30代の女性は、嗅覚と味覚を失った上に、感情も乏しくなっていました。この種の無関心や感情の解離は、脳の奥深くにあって、感情をつかさどる神経細胞の集まりである扁桃体との関係なしには説明がつきません。新型コロナに感染した人が脳機能の障害を示しているという報告は、この1年で増え続けています。

武漢の新型コロナ患者200人以上の調査研究によると、全患者の35%、重症者に限ると45%に神経系合併症が見られました。有力医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに発表されたフランスの研究では、患者の67%に神経系疾患が見られたといいます。このウイルスが脳神経にダメージを与えた結果、数十年後には認知症など神経変性疾患の患者が急増するのではないかと、専門家は懸念しています。

元患者の中には、慢性疲労症候群(CFS)に該当する症状を示す人が増えています。新型コロナの後遺症を持つ人がCFS患者と同じ道をたどるとすれば、感染経験者の10~30%がCFSの慢性的な症状に苦しむ恐れがあると、米国立衛生研究所(NIH)傘下の国立神経疾患脳卒中研究所(NINDS)のアビンドラ・ナス臨床部長は指摘します。

今は、新型コロナは脳を含むさまざまな器官に長期的なダメージを与える可能性があることが分かってきており、メディアも後遺症患者の苦しみや、認知力の低下を積極的に報じ始めました。「(新型コロナが)神経に影響を与えるという認識が広がってきたのは、ごく最近だ。患者の間からは(ブレインフォグなどの)異常を訴える声が上がっていたが、専門家は何の行動も起こさなかった」とナスは言います。

米議会は昨年、新型コロナ研究のために約15億ドルをNIHに拠出し、フランシス・コリンズNIH所長らがこの資金を各プログラムに配分していくことになります。NIHの広報担当者は、ウイルスが脳に与える影響に関する研究も、積極的に支援していく姿勢を示しました。一方で神経学者たちは、新型コロナ感染の早い段階で介入し、ウイルスが脳に与える長期的な影響を最小限に抑える方法を懸命に探っています。後遺症が長期化すると、治療が難しくなり、「それは何としても避けたい」と、ウォルター・コロシェッツNINDS所長は言います。

1918年のスペイン風邪の流行後は、世界で推定100万人が嗜眠性脳炎と呼ばれる神経変性疾患を患いました。エイズウイルスの場合、80年代に抗ウイルス療法が登場するまで、感染者の約25%に認知症が見られました。2003年にSARS、12年にMERSが流行したときも、一部患者の脳にウイルスが入り込んでいたことが解剖で明らかになりました。NINDSのナスは、リベリアのエボラ出血熱感染経験者で今も謎の慢性的な神経症状を患う200人の追跡調査を続けています。

マウント・サイナイ医学大学院のクレア・ブライス准教授(病理学)らは、これまでに63人の患者の脳を調べました。昨年4月、自宅で何度か転倒した後、意識がもうろうとした状態で緊急治療室に運び込まれ、11日目に死亡した74歳のヒスパニック系男性の脳を検査すると、神経細胞の萎縮や変色、酸素欠乏が認められる「死んだ」領域が多数ありました。同じ症状は、その後数カ月間に調べた他の62人の脳の約25%にも見られ、さらに11人の患者で、少なくとも数週間前の細胞死の痕跡が見つかり、一部の脳は腫れ上がり、多くの血管が詰まっていました。

NINDSのナスも、16人の遺体の脳組織に同様の損傷を発見。高倍率の顕微鏡で調べた結果をニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに発表しました。ナスが遺体を調べた患者の多くは、医師の診察を受ける前に突然死しており、ナスは症状が軽かったので病気の自覚がなかったのだろうと結論付けたにもかかわらず、遺体の脳には神経細胞の損傷や炎症、血管の損傷が多数認められました。急性の新型コロナで死亡した患者の脳に見られた損傷は、軽症患者の脳にも同様に存在するのか、その後に発症する未知の後遺症によるものなのかも不明です。

新型コロナによる脳の損傷の原因について、今のところ専門家はウイルス感染と自己免疫反応に最も強い関心を寄せています。最も懸念されるのはウイルスが脳細胞に「定着する」可能性で、この場合、新型コロナが長期的に見て神経変性疾患の原因となる可能性が高まります。一部のウイルスは脳に入り込んだ後、一時的に「休眠状態」になり、いずれ再活性化することも分かっています。

嗅覚の喪失は、嗅球という鼻につながる脳の小さな領域が感染した可能性を示唆し、嗅球は記憶や感情の制御をつかさどる脳の領域付近にあるため、ブレインフォグの症状やパンデミック初期にデエラウスキンの研修医が経験した奇妙な感情の解離は、これで説明できます。

その後、新型コロナは、「転移する」能力があることが分かったと、医学大学院や病院を傘下に持つマウント・サイナイ医療システム(ニューヨーク)のカルロス・コルドンカルド病理学部長は言います。「ウイルスは鼻から入って、肺、腎臓、肝臓に侵入でき、今では脳に到達することも分かっている。そして特定の場所で合流して、臓器にダメージを与えることがある」

エール大学の岩崎明子教授(免疫生物学)らは、幹細胞由来の神経細胞とそれを補助する細胞の小さな「コロニー」を培養し、この「オルガノイド(ミニ臓器)」を新型コロナに接触させたところ、ウイルスはすぐに神経細胞の一部に感染しました。感染した神経細胞は細胞の増殖メカニズムを利用して自己複製を加速させ、この猛烈なウイルスの増殖過程で、感染細胞は周辺領域の酸素を「全て吸い出し」、近くにある神経細胞から不可欠な栄養分を徐々に奪い取ることで、「死のスパイラル」に陥らせます。

オルガノイドのコロニーを新型コロナに接触させると、ウイルスはごく一部の神経細胞に感染しただけでしたが48時間以内にさまざまな細胞間のシナプス結合の50%を破壊しました。これは脳に大きなダメージを与える可能性があります。

遅れて発症する神経症状の一部は、脳の細胞に潜むウイルスによるものとも考えられますが、脳に潜むウイルスが悪さをするという仮説は解剖結果と一致しません。岩崎らが解剖した脳損傷が見られる3体の遺体のうち、脳内へのウイルスの侵入がはっきり確認できたのは1体だけで、NINDSのナスも今のところ、脳のウイルス感染の兆候は発見していません。「私の専門は神経系の感染なので、パンデミックのたびに脳を調べてきた。(新型コロナの死者の脳では)ウイルスを全く検出できないので、非常に驚いている」

ナスはCFSの発症について、感染症にかかると病原体が消えた後も免疫系が活性化したままになり、体が自分自身と静かな戦争を続けることがあるという仮説を支持しています。新型コロナの長期的な症状の一部もそれと同じメカニズムで起きるのではないかと、彼は考えています。

新型コロナの長く続く後遺症を説明するこの2つの仮説、つまり脳のウイルス感染説と自己免疫説はどちらか一方が正しいとは限らず、両方が発症に絡んでいる可能性もあると、岩崎は指摘します。岩崎は「自己抗体」の影響を調べ、新型コロナに感染した194人と、感染していない30人の血液サンプルを解析して比較したところ、感染者では自己抗体が「劇的に増加」し、多くのケースでは免疫細胞を攻撃していました。研究中に亡くなった15人の患者では、1人を除いて全員が自己抗体の大量放出により免疫系の正常な働きが阻害されていました。

新型コロナのスパイク・タンパク質が結合するACE2受容体は血管壁の内側を覆う「内皮細胞」に広く発現しています。脳の毛細血管の壁が破壊されると、脳に有害物質が入るのをブロックする「血液脳関門」が壊れ、さまざまな物質が脳内に流入します。「本来なら入ってこないはずの物質が流入し、脳の機能に支障を来す」とNINDSのコロシェッツは言います。

白血球は通常なら脳に入れませんが、関門が壊れると病原体も白血球もどんどん脳内に流入するようになります。コロシェッツによると、白血球は「戦車」のようなもので、大規模な攻撃を加えるため、ウイルスに感染した細胞だけでなく周辺の細胞も破壊されます。

デエラウスキンらは今年1月、 30カ国余りの最大4万人を対象に新型コロナが脳に及ぼす長期的な影響を調査するという、後遺症の大規模な国際的調査の計画案を発表しました。NIHは新型コロナ関連の研究調査に約15億ドルを助成する方針です。コロシェッツによると、「正常な回復」の要件を突き止め、長期にわたって後遺症が残るケースとの違いを明らかにする大規模な研究計画も助成対象の候補に挙がっています。

新型コロナでは条件が許せば発症初期の段階から調査を開始し、ウイルスが検出されなくなっても長期間続く症状を追跡できます。その成果は、CFSなど原因不明の脳の疾患の謎を解く貴重な手掛かりになると、NINDSのナスは期待しています。「脳の病気は謎だらけ。長期戦を覚悟しないと」とナスは言います。

21.3.25#MEActionがMEとCOVIDの記者会見

3月25日に国際的な啓発団体である #MEActionは、ME/CFSとLongCOVIDについて記者会見を開き、多くのメディアが出席しました。スピーカーの方々は、COVID-19が長引いている人々の一部はMEの診断基準を満たしており、米国国立衛生研究所(NIH)においてME/CFSとLong COVIDを一緒に研究することが、両方の病態を最もよく理解するために必要不可欠であることを明らかにしました。

当日のスピーカーは、NIHにおけるME/CFSの主任研究者であるアビンドラ・ナス先生、ハーバード大学医学部のアンソニー・コマロフ教授、ME/CFSの専門医であるルシンダ・ベートマン先生、ME/CFS患者の方、Long COVIDの方でした。

出席したメディアは、The New York Times、Fox News、NBC、CNN、Chicago Tribune、Nature、Scientific American、US News & World Report、Medscape、Future Medicine、Women’s Health UK、Mercury News、Fast Company、Luzerner Zeitung(スイス)、Carte Blanch(南アフリカ)。

当日の記者会見は英語の字幕付きYouTubeでご覧頂けます。

21.5.9初めてのME/CFS啓発デーイベント

5月12日はME/CFSの国際啓発デーです。当会として初めての啓発デーイベントを、5月9日(日)にオンラインで開催します。このイベントは国際的アドボカシー団体#MEActionの「#MillionsMissing2021」と連帯して行います。また、当日に当会製作のME/CFSの啓発ショート動画を発表する予定です。

当会製作のドキュメンタリー映画「この手に希望を~ME/CFSの真実~」(医療関係者用短縮版)上映後、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所の山村隆先生にお話し頂きます。その後、交流の時間を持ちたいと思います。多くの医療関係者や一般の方に参加して頂けるのをお待ちしております。事前申し込みが必要です。

ME/CFSは、WHOの国際疾病分類で神経系疾患と分類されている難病です。2014年の厚労省の実態調査で、約3割の患者が寝たきりに近いという深刻な実態が明らかになりましたが、指定難病でも障害者総合支援法の対象でもありません。

米国国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長の、COVID-19後に長引く症状は筋痛性脳脊髄炎に似ているとの発言が7月にCNNニュースで取り上げられ、COVID-19の後遺症としてME/CFSを発症する可能性が示唆されました。

当法人はアンケート調査を実施し、日本でもCOVID-19後にME/CFSを発症した方を確認しました。過去の科学的エビデンスを基にすると、COVID-19の全感染者の約1割がME/CFSを発症すると推計されます。

ME/CFSの啓発デーイベント
日 時:2021年5月9日(日)13:00~15:30
対 象:どなたでも(要申し込み)
参加費:無料

定員:100名(先着順)
申込み:メール answertomecfs@gmail.com、又はファックス 03‐6685‐6233
締切:2021年5月3日(定員に達し次第、締め切ります)
※数日前にZOOMのURLをお送りします。

啓発デーイベントのプログラム】
第一部 映画鑑賞(約43分) 監督:有原誠治
・ドキュメンタリー映画「この手に希望を~ME/CFSの真実~」
第二部 トークと質疑応答)
山村隆先生
「感染後に発症する神経免疫系難病ME/CFS:COVID-19時代の医学常識」
(国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部部長) 
「ME/CFSに対する診療・研究のネットワーク構築」研究班班長
第三部 交流

主 催:NPO法人筋痛性脳脊髄炎の会
後 援:NPO法人有明支縁会
問合せ:NPO法人筋痛性脳脊髄炎の会
  
5月9日の啓発デーのチラシはこちらから(表面裏面)ご覧頂けます。
予告編(トレーラー)は当会のHPのトップページよりご覧頂けます

「この手に希望を」のストーリー】
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は通常、ウィルス感染後に発症し、免疫障害、神経機能障害、認知機能障害、睡眠障害、自律神経系機能障害を伴う神経難病です。患者たちは通常の日常生活すら送れなくなり、学校や仕事に行かれなくなり、寝たきりになる患者も多く、社会から孤立しています。ところが、診療できる医師は非常に少なく、通常の検査では異常が見つからないため、「考え方を変えれば治る」「性格の問題」などと言われ、家族や友人からも理解を得られず、怠けているのではないかという眼差しを向けられます。日本には約10万人の患者がいると推定されているにも関わらず、重症患者はほとんど家から出ることもできないため、その実態は闇に葬られてきました。

理解してくれる医師が一人もいない中、1990年にアメリカ留学中にME/CFSを発症した寝たきりに近い一人の重症患者が、患者の実態を描く米国のドキュメンタリー映画を翻訳し、試写会を開始しました。少数の理解者と共に2010年には患者会を発足し、欧米の診断基準や最新の医学情報などを翻訳し、神経内科医による神経難病ME/CFSの研究促進を訴え続け、やっと2015年にその願いが叶いました。ME/CFSはまだ原因が解明されておらず、治療法も確立していませんが、この数年は海外においても飛躍的に研究が進み、根治薬が開発されることを世界中の患者が待っています。

※この啓発デーイベントはウェスレー財団の助成を受けて開催致します。また、ドキュメンタリー映画は、日本理学療法士協会、パルシステム東京市民活動助成基金、カリタスジャパンから助成を受けて作製致しました。

21.3.25ロイター通信にコロナ後遺症

3月25日付のロイター通信に、「コロナ後遺症、40─50代の女性に多い傾向=英研究」と題する記事が掲載されました。英国で24日発表された2つの研究で、40代と50代の女性に新型コロナ感染症での退院後、後遺症のリスクが高いことが示されました。

「PHOSP」と呼ばれる研究では、昨年3月~11月の間に英国の病院を退院した男女1077人を調査。中年の白人女性で基礎疾患がある場合は、退院後5カ月たってもコロナ後遺症を訴える確率が高く、およそ40~60歳で少なくとも2つの基礎疾患のあった白人女性に、最も深刻な後遺症の長期化が見られました。多くが筋肉や関節の痛み、倦怠感、息苦しさ、ブレインフォグを中心に複数の症状を訴えました。

もう1つの研究は「国際重症急性呼吸器新興感染症協会」が主導し、327人を調査。50歳未満の女性は男性や50歳以上に比べ、基礎疾患がなくても倦怠感が2倍、息苦しさは7倍で、記憶や動作や意思疎通の問題もより多かったです。

PHOSPの研究に参加した呼吸器専門家は、男性と女性の免疫反応の違いが女性にコロナ後遺症が多いことの説明になるかもしれないと指摘。中年期の女性には「自己免疫」が多いことが知られていると説明しましたが、この問題を十分に理解するにはもっと研究が必要だとしています。

21.3.20日本経済新聞にコロナ後遺症

3月20日付の日本経済新聞に、「コロナ後遺症『脳に霧が』 慢性疲労症候群と関係か」と題する記事が掲載され、山村隆先生のコメントが取り上げられました。

新型コロナウイルスの感染後に回復したにもかかわらず、様々な後遺症で苦しむ人が相次いでおり、「ブレインフォグ」とよぶ脳に霧がかかったような状態を経験する人が少なくありません。ブレインフォグは頭の中に霧がかかったような状態で、考えたり集中したりするのが難しくなります。日本神経学会理事の下畑享良・岐阜大教授は「臨床医にとってなじみの薄い用語だ」と話します。正式な病名ではなく、あくまでも患者が訴える自覚症状で、新型コロナウイルス感染症に関する論文報告などでたびたび使われるようになり、注目を集めています。

米科学誌サイエンスに2020年8月に掲載された記事は、新型コロナ感染後の長引く症状の一つとしてブレインフォグを挙げ、ウイルスによる脳細胞のダメージや、脳や全身での炎症が神経症状につながる可能性を指摘します。ワシントン大学の研究チームは軽症者を主に含む患者177人を対象に感染から約6カ月後の状況を調べ、約3割の患者で症状が続いており、全体の2.3%にあたる4人がブレインフォグを訴えました。感染後に長引く症状について岐阜大の下畑教授は「疲労や不眠症、めまいなどのブレインフォグに関連する症状は高い頻度に報告されている」と指摘します。

国立精神・神経医療研究センター神経研究所の山村隆・特任研究部長は新型コロナ回復者や感染疑いのあった人で、ブレインフォグを訴える患者の治療にあたります。山村特任研究部長は「ブレインフォグは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の重要な症状のひとつ」とみています。日本は米国などと比べてME/CFSなどの診断や治療をできる医療体制が乏しく、新型コロナに関連するブレインフォグなどの症状も見つかりにくい可能性があります。

ブレインフォグを含む新型コロナに関連した神経症状の発症の仕組みはよく分かっていません。脳の細胞には新型コロナが感染する足がかりになるたんぱく質があり、肺と同じように感染しやすいとの研究報告もあります。下畑教授によると、ウイルスの神経細胞への感染のほか、血液と脳を隔てる血液脳関門や血管内皮の異常などが関係するとの推測もあるといいます。

こうしたなかで、米ニューヨーク大学ランゴーン医療センターは米国立衛生研究所傘下の国立神経疾患・脳卒中研究所の支援のもと、新型コロナに関連する神経症状を追跡するためのデータベースを立ち上げました。匿名化された臨床情報や検体を集める。発症頻度や機序の解明に役立つ可能性があるといいます。

21.3.10日刊ゲンダイにコロナ後のME/CFS

3月10日付の日刊ゲンダイに、「コロナ後遺症『筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群』を疑う症状」と題する記事が掲載され、山村隆先生のコメントが掲載されました。

新型コロナウイルスの後遺症として注目を集めているのがME/CFSです。ME/CFS治療・研究の第一人者である国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部部長の山村隆医師に話を聞きました。

「ME/CFSは原因がはっきりと分かっていませんが、3~4割はウイルス感染後の発症です。また、患者の脳を特殊なソフトを使って調べると、右上縦束という部分に異常が見られることが、我々の研究で明らかになっています。」

山村医師らはME/CFSの原因を、感染症から回復しても体内に残っているウイルスに対して、免疫機能が過剰に反応し、脳に炎症が起こっているのではないかと考えています。

診断のポイントは、「激しい疲労」「労作後の消耗」「睡眠障害」「思考力・集中力・記憶力低下」「起立性不耐症」の5つの脳の異常による症状です。激しい疲労とは、歯ブラシを持つのもつらい、食事やシャンプーができない状態。労作後の消耗は、少し体調が良くなったからと仕事や勉強をした後で、数時間後から翌日には寝たきりになるほど消耗するもの。

睡眠障害も、何日間も眠れない、眠れても1~2時間ほど。思考力・集中力・記憶力低下は、本も読めない、電話番号を思い出せない、自分の名前の難しい漢字を書けないほど。起立性不耐症は、立ったままだと心臓がドキドキして目まいがし、作業困難になること。「関節痛や筋肉痛、微熱が続くなどの体温調節障害、下痢や便秘の消化器症状、光や音、匂いへの過敏性などの周辺症状もあります。」

患者は女性が多く、患者の年齢層は幅広く、中高生もいます。現段階では確立された治療法はなく、症状を改善するものでは、漢方薬、和温療法、上咽頭擦過療法などがあります。対症療法になるため、睡眠薬、胃腸薬、ステロイド、免疫抑制剤などを使用することもあります。

コロナ感染後、ME/CFSを疑う症状が出てきたら、「ネットで最新情報を徹底的に探し、ME/CFSに関心を持って診療している医師を、早い段階で受診して下さい。」古い教科書に掲載されているME/CFSの治療法を活用するのは危険です。

21.3.9毎日新聞にCOVID-19後のME/CFS

3月9日付の毎日新聞デジタルに、「コロナ後遺症か~倦怠感や痛み招く神経免疫系疾患ME・CFS」と題する記事が掲載されました。

新型コロナウイルスの感染者らの間で、後遺症とみられる症状に悩むケースが相次いでいます。神経免疫系疾患「ME・CFS」が強く疑われるといい、国内外の専門家は「新型コロナが引き金になる可能性は十分ある」と警鐘を鳴らします。

相模原市の女性(48)は昨年3月、微熱や頭痛、息切れ、倦怠感などを発症しましたが、熱が37・5度を超えなかったためPCR検査は受けられませんでした。女性はパートを休職、半年かけて血液検査やレントゲン検査などで全身を調べても原因は見つかりませんでしたが、1月には「ME・CFS」と診断されました。現在も1日の大半をベッドで過ごしています。

ME・CFSに詳しい国⽴精神・神経医療研究センターの⼭村隆医師は「SARSなどのウイルスに感染した⼈が発症しており、新型コロナもMEを引き起こす可能性がある」と指摘します。⼭村医師も新型コロナの後遺症が疑われる約20⼈の患者をME・CFSと診断しました。⽶国神経学会誌には昨夏に新型コロナとME・CFSとの関係についてまとめた論⽂が掲載されており、⽶国で大規模な研究も始まっているといいます。

これまでの研究で、ME・CFSにかかると、認知や⾔語で重要な役割を果たす脳の中枢神経系に異常をきたすことがわかってきました。⼭村医師は「体内からウイルスが排出された後も、免疫系が過剰に反応して、脳の中で炎症反応を起こしているのではないか。コロナの感染拡⼤でMEの患者はさらに増加するだろうが、安静にして早期に治療することで、重症化を防ぐことができる」と話しています。

NPO法⼈「筋痛性脳脊髄炎の会」は昨年5〜8⽉に新型コロナの感染疑いのある⼈を対象に調査し、326⼈から回答を得ました。その結果、ME・CFSの診断基準を満たした⼈は27・9%に上ったといいます。同会理事⻑は「新型コロナ後にMEを発症するメカニズムがわかれば治療法の開発にもつながる。⽇本でも研究を進めて治療法を確⽴してほしい」と話しています。

NPO法⼈「筋痛性脳脊髄炎の会」のインターネット調査に答えた326⼈には、PCR検査を受けられなかったり、検査で陰性になったりした213⼈も含めました。新型コロナ感染者らの主な生活への影響として、「仕事、学校に戻ることができない」(40.5%)、「寝たきりに近い」(12.6%)、「身の回りのことができない」(11.3%)が挙げられました。

ME/CFSは、全⾝性の神経免疫系疾患。睡眠障害、思考⼒・集中力・記憶⼒の低下、筋⾁痛などの症状が6カ月以上続き、健全な社会⽣活が送れなくなります。厚生労働省の2014年の調査によると約3割が寝たきりになっているといいます。SARSやEBウイルスに感染した患者のうち、一定数がME・CFSを発症しているとの研究結果が欧⽶で報告されています。

 

21.3.5日経メディカルにLong-COVIDの脳幹障害

3月5日付の日経メディカルに、「Long-COVIDにおける持続性脳幹機能障害仮説を検討」と題する、ACS Chemical Neuroscience誌に掲載された論文のレビューが掲載され、Long-COVIDの持続的脳幹機能障害とME/CFSの関連についても取り上げられました。記事の著者は脳神経内科医である春日井市総合保健医療センター参事の平山幹生先生です。

Long-COVIDの原因として、持続性の脳幹機能障害の関与を提唱する報告です。COVID-19患者の約81%は無症候性で軽度で、子どもを始め、軽症のケースであっても、COVID-19生存者のかなりの割合が完全には回復せず、陰性となったのに、Long-COVIDとして知られるウイルス感染後症候群に苦しんでいるとされます。

Long-COVIDの定義や診断基準はまだ確立していませんが、現在のところ、倦怠感、呼吸困難、頭痛、認知障害、咳、関節および胸痛、気分の変化、臭いおよび味覚の機能不全、および持続性の筋肉痛などが認められ、症状発現または退院後から少なくとも4週間持続するとされます。

Long-COVIDが起きる原因として、一般的な説明では、COVID-19急性期から改善していない残存する組織損傷、ウイルスの持続、および慢性炎症が原因とされます。筆者らは、もう1つの原因として、S新型コロナウイルスの脳幹向性とその結果として生じる持続性の軽度の脳幹機能障害である可能性を提案しています。

新型コロナウイルスのRNAは、死亡したCOVID-19患者の剖検例の30〜40%で脳に発見されましたが、他の剖検では、COVID-19で亡くなった患者の脳に組織学的変化や新型コロナウイルスの痕跡は認められませんでした。これは、新型コロナウイルスに神経向性があるまたは脳浸潤する可能性を示唆しますが、かといって全てのケースに発生するわけではないことも示しています。

脳の剖検研究では、炎症反応、神経変性、ウイルス侵入など、COVID-19に脳幹が関与している証拠が示されています。様々な剖検研究より、新型コロナウイルスは嗅覚系から脳幹への指向性がある可能性を示唆します。また、死亡したCOVID-19患者の脳剖検で新型コロナウイルスのRNAが存在しないにもかかわらず、脳幹神経病理が観察されたケースも報告されており、新型コロナウイルスはウイルスの侵入、炎症、血管の活性化を通じて脳幹に損傷を与える可能性があります。

新型コロナウイルスが細胞に感染するために使用する受容体であるACE2は脳幹にも発現しており、注目すべきは、脳幹の橋と延髄でのACE2の発現が最も高いことです。また、COVID-19の呼吸不全の原因として、脳幹に対する新型コロナウイルスの指向性が関与するという考え方も出てきました。興味深いことに、脳幹の機能とlong-COVIDの症状はかなり重複します。こうした結果から筆者は、脳幹機能障害がLong-COVIDの病態に関与しているという仮説を提唱しています。

ただし、この仮説の注意点として脳幹機能障害の大きさのあいまいさであるとも述べています。脳幹機能障害は慢性疾患の病態生理にも関与していると示唆されています。一つには、慢性の筋骨格痛と神経因性疼痛患者で、脳幹の拡散性と機能的連絡性の変化が認められており、頭痛または頭痛に対する脳幹機能障害の関与も示されています。ME/CFSの症状の重症度が、脳幹機能障害と関連していることも示されています。したがって、脳幹機能障害は致命的または持続性の疾患を引き起こす可能性があり、後者にはLong-COVIDが含まれる可能性があるとまとめています。

Dr Hirayama’s Eye-Long-COVIDの病態把握に、急性期からの脳幹機能検査の実施が望まれる-

 Machadoらは、脳幹のSARS-CoV-2感染は、呼吸中枢に深刻な損傷を与え、不随意呼吸調節に影響を与える機能的逸脱を引き起こすとしています。この先、無症候性の患者であっても、脳幹反射を調査する一連の神経学的検査が推奨されるかもしれません。ニューロイメージング技術は、ICUで人工呼吸器を装着している患者に常に使用できるとは限りません。聴覚および体性感覚誘発電位、定量的EEG、経頭蓋ドプラなどの補助検査を使用して脳機能検査を代替できることを生かした検討が有用ではないでしょうか。