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21.9.17朝日新聞にコロナ後のME/CFS③

新型コロナウイルス感染症の後遺症について、厚生労働省の研究班等が実態把握を進めています。昨年9月以降に入院した512人に退院3ヶ月後の症状を調べた研究では、重症だった人では筋力低下が77%、息苦しさが50%、倦怠感が30%でした。別の研究班(246人)の診断後6ヵ月の調査では、疲労感・倦怠感が21%、息苦しさが13%、睡眠障害が11%、思考力・集中力の低下が11%でした。

米国国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は昨年7月の会見で、後遺症に悩む人の症状について「ME/CFSの患者にみられる症状に似ている」と話しました。

ME/CFSは、発熱やのどの痛み、嘔吐や下痢などの「風邪症状」を契機に発症することが多いため、ウイルスや細菌が関係していると考えられています。2003年のカナダや香港で流行したSARSでも、感染後のME/CFSが報告されています。厚労省は2014年度、ME/CFS患者が何をきっかけに発症したと考えられるかを調べ、105人の内、発熱と感染症がそれぞれ39人(重複あり)で最も多かったです。

国立精神・神経医療研究センターは今年4月、ME/CFS患者に共通する免疫異常を発見したと発表。発症のメカニズムの解明や診断法の確立などにつながると期待されています。

21.9.16朝日新聞にコロナ後のME/CFS②

9月15日から朝日新聞生活面の「患者を生きる」のコーナーで、「新型コロナ 強い疲労感」と題してコロナ後のME/CFSが取り上げられています。14日から4回の連載ですが、今回は16日の記事をご紹介します。

新型コロナウイルスに感染した後、体の強いだるさに悩まされていた40代の男性は、国立精神・神経医療研究センターの山村先生にME/CFSと診断されました。治療を始めて1ヶ月後の今年4月中旬、同様の症状がある患者で効果があったステロイドとリウマチの薬を併用する治療を始め、効果は明らかでした。

山村先生は「治療の方向性は見えた」と感じていましたが、治療が順調に進む中、男性は「クラッシュ」を起こしてしまいました。「クラッシュ」とは「労作後の消耗」のことで、症状が良くなったと思って無理をし過ぎると反動のように一気に症状が悪化することをいいます。治療の過程でよく起き、クラッシュの程度も、2,3日寝込む程度で済む場合もあれば、3カ月もトイレにも行かれない寝たきりの状態になる場合もあります。クラッシュを繰り返す人もいます。

男性は、日常生活での何げない行為や環境でのストレスの積み重ねでクラッシュしたと考えます。症状が再び悪化した男性は7月、約1週間入院し、新たな薬を加えるなどして治療しました。退院後は症状が3割ほど軽くなり、今後はこの治療を続ける予定です。

男性は自身の経験を踏まえ、「後遺症で本当に人生が変わってしまうことを知ってほしい。とにかく感染対策をしてほしい」と話します。

21.9.14朝日新聞にコロナ後のME/CFS

9月15日付の朝日新聞生活面の「患者を生きる」のコーナーで、「新型コロナ 強い疲労感」と題してコロナ後のME/CFSが取り上げられました。14日から4回の連載ですが、今回は14日と15日の記事をご紹介します。

関東地方の男性(40)が新型コロナウイルスに感染したのは昨年11月のことでした。息苦しさはありましたが肺炎はなく「軽症」で、7日目に退院しました。退院後は体のだるさがありましたが、自宅から3キロほど離れた実家まで自転車で往復したり、散歩で3キロほど歩いたり、少しずつですが、よくなっている実感がありました。

今年1月4日未明に突然、ひどい動悸と息苦しさに襲われ、発熱、吐き気、下痢、寒気、目の焦点も合わない状態で「死ぬかと思った」。夜が明けるころには症状は消えましたが、すぐに病院を受診しました。新型コロナへの再感染はなく、血液などの検査でも異常は見つからず、病院の記録には、「(新型コロナの)後遺症の疑い」と記されていました。

症状には波があり、だるさや息苦しさ、関節の痛み、高い音が耳に響いたり、光がまぶしかったり、様々な症状が出て、それらの症状がスイッチが切り替わるよう、あらわれたり治まったりを繰り返しました。2月中旬に症状が再び悪化し、「携帯電話すら重くて持ち上げられない」状態になり、実家に戻ることにしました。症状は徐々に悪化し、だるさや息苦しさ、下痢なとが一気に出て「体が壊れ、機能せず、死なない程度に生きている」感覚でした。

3月初め、友人が見つけた国立精神・神経医療研究センターのME/CFSに関する記事に書かれている症状の多くが、あてはまりました。3月17日に受診し、センターの山村隆特任研究部長から初めて「治しましょう」と言ってもらいました。

山村さんはコロナ感染の後遺症で男性と同じような症状に苦しむ複数の患者を診ていて、男性をME/CFSと診断しました。この病気は免疫が誤って自分を攻撃してしまう自己免疫疾患と考えられています。慎重に治療を始め、約1ヶ月後、同様の症状がある患者で効果があった薬の組み合わせで劇的な効果が見られました。男性は「完治できるのでは」と期待しましたが、落とし穴が待っていました。

21.8.20国際ME/CFS学会の報告②ー感染症

8月19日~21日に、国際ME/CFS学会主催の学術大会がオンラインで開催されました。第2回目の報告です。

米国カルフォルニア州のEV Med Researchのジョン・チア先生
「ME/CFS患者におけるCOVID-19感染-予備的調査」

ME/CFS患者におけるCOVID-19感染について考察しました。急性COVID-19感染後に、Long-Haul-COVIDとして今はよく知られる、長期間持続する体を衰弱させる症状が続きます。この研究では、COVID-19に感染した場合、既存のME/CFSがさらに悪化するかどうかを考察しました。26名のME/CFS患者が研究対象となりましたが、全員がエンテロウイルスにもかかっていました。事前のエンテロウイルスは、胃生検によって診断されました。

COVID-19に感染した患者を、3~6ヵ月間追跡調査をしました。15人は軽症でしたが、11人はインフルエンザ様症状、疲労、グレインフォグ等の症状が2~4週間続き、寝たきりでした。26人中14人は、急性感染後数ヵ月間、ME/CFS症状が悪化しました。その11人の内4人は入院しました。1人はS状結腸憩室炎の穿孔で、3人が肺炎で(承認適応症外使用のレムデシビルとステロイドの治療を受け)入院しました。後者の回復には最高で3カ月かかりました。

経過観察中に、13人の患者の末梢血の白血球からエンテロウイルス蛋白が検出されましたが、誰もCOVID-19の蛋白が持続してはいませんでした。

COVID-19感染は半数の患者のME/CFS症状を非常に悪化させ、4人が入院する原因となったと結論づけました。レムデシビルがME/CFS症状を著しく改善させましたので、さらなる研究が必要です。

米国イリノイ州シカゴ市のデポール大学教授のレオナード・ジェイソン博士
「経時的なCOVID-19の症状:Long-HaulerとME/CFSの比較」

コロナ以前のパンデミックにおいて、10~20%の人は回復しませんでした。ジェイソン博士はlong-haul COVID患者を経時的に調査し、ME/CFS患者と比較しました。278人のlong-haul COVIDのどの症状がどのように時間とともに変化したかを、別の慢性疾患であるME/CFSの502人の症状と比較しました。標準的な症状の質問票を使用し、COVID-19の症状のリストも含めました。時間が経過するにつれ、long-halulersは回復のなされない睡眠や労作後の消耗(体調不良)を含むほとんどの症状が、全体的に減りましたが、神経症状は悪化しました。

ME/CFSと比較すると、COVID-19患者は最初は免疫や起立性の領域の症状をより多く呈しました。ME/CFS患者は胃腸や神経認知領域の機能障害が強かったです。しかし、時間の経過と共に、起立性の領域以外では、long-halulersはME/CFS患者より有意に症状が軽くなったことが証明されました。long-halulersは、経過と共にいくつかの神経認知症状が悪化しましたが、他のほとんどの領域では改善していました。

異なる症状のパターンのこうした研究により、両方の疾患の病態生理の理解がより進む可能性があります。

米国カルフォルニア州のEV Med Researchのジョン・チア先生
「ME/CFSの発症機序には脳神経細胞へのエンテロウイルス感染、免疫の活性化と細胞死が関与している」

チア先生はME/CFSの発症機序と、脳神経細胞へのエンテロウイルス感染、免疫の活性化と細胞死との関連について考察しました。彼は、ME/CFSにエンテロウイルスが関与していると、長い間主張していました。1994年と2001年の研究、及び2004年の自分の患者の研究に言及しました。動物では、エンテロウイルスが脳神経細胞の持続感染の原因となります。

この研究では、6か所の異なった領域から脳のサンプルが採取されました。ウイルス性のカㇷ゚シド蛋白1が、異なった脳の領域の神経細胞において見つかり、小脳のプルキンエ細胞中が最も顕著でした。また、過剰な炎症性細胞やグリアの活性化がなくとも、脳神経細胞の慢性エンテロウイルス感染のエビデンスが見られました。

この研究は、ME/CFSにおける体を衰弱させる神経症状についての免疫病理学的な説明を提供します。

21.9.1NCNPニュースに新型コロナとME/CFS

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)より、「NCNP診療ニュース」2021年9月号が発刊され、その6ページに「新型コロナウイルスの後遺症とME/CFS」と題する記事が、山村隆先生の写真と共に掲載されています。

「新型コロナウイルスに罹患したあと、長期間にわたって日常生活に支障を来す患者さんがいらっしゃいます。一番多い症状は倦怠感や集中力の低下で、仕事や学業を続けられないなどの深刻な問題が起こっています。以前から筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群(ME/CFS)という病気が知られていますが、ME/CFSでは疲労症状、睡眠障害、痛み、自律神経症状、光や音に対する過敏などの多彩な症状がみられます。ME/CFSはウイルス感染後に発症することが多く、新型コロナ感染でも、一部の患者さんがME/CFSを発症しているようです。ME/CFSは診断・治療の難しい病気ですが、脳画像検査や免疫検査(自律神経受容抗体検査、抗体遺伝子検査など)の結果から、神経と免疫に異常のある病であることが明らかになってきました。私たちは病態の解明や治療法の開発に向けて診療と研究を進めています。」

また、その下にはコロナ後遺症外来の案内も掲載されており、「当院の総合内科(脳神経内科専門医)の医師を中心にコロナ後遺症に悩む多くの患者さんやワクチン接種に関連する様々な身体的・精神的症状に対応していきます」としています。

21.8.20国際ME/CFS学会でのナス先生の講演

8月19日~21日(米国時間)に、国際ME/CFS学会(IACFS/ME)主催の学術大会がオンラインで開催されました。国際ME/CFS学会副会長のリリー・チュー先生より、日本でも学術大会の報告をして下さいという依頼があり、当会の小冊子「患者さんへの手引き」の著者であるニュージーランドのME/CFS専門医であるロサムンド・ヴァリングス先生と、セーラ・ダルジール先生が書かれた学術大会の報告を、翻訳することになりました。少しずつご紹介致します。

はじめに
このオンライン学術大会は、国際ME/CFS学会学会長のフレッド・フリードバーグ先生(米国Stoneybrook)の歓迎のあいさつで始まりました。大会の前には、素晴らしい臨床的ワークショップの数々と患者のための会議(1日間)が行われました。

8月20日の基調講演 
米国国立衛生研究所・国立神経疾患・脳卒中研究所のアビンドラ・ナス先生
「ME/CFSとLong COVID:重複しているか、それとも異なる病態か」

COVID-19感染は、神経症状を引き起こすことで知られています。嗅覚障害、脳症、脳卒中、髄膜炎/脳炎、発作、白質脳症、脳幹異常による突然死を含む、急性新型コロナウイルス感染症の感染に関連する複数の症状が報告されています。COVID-19で入院した患者の3分の1は、精神状態の変容を経験し、平均で3倍入院期間が延びています。こうした患者の3分の2は、退院時に日常生活動作に支障があります。急性COVID脳症の患者の死亡率も増加しています。

英国のデータによると、他のウイルス性疾患に比べ、急性COVID-19後には脳出血、虚血性脳梗塞、認知症、精神疾患を含む神経症状が多いことが示されています。Long COVIDは(後遺症の)一つの表れ方の一つにすぎません。Long COVIDの患者は4つのグループに分けられます(重複する症状もあります)。

  1. 運動不耐と疲労
  2. ブレインフォグー特に言語検索困難
  3. 頻脈/体位性頻脈症候群など、低血圧、体温調節障害、胃腸系の症状、末梢血管収縮(多くの場合、手足のチクチクした痛みとして現れる)を含む自律神経機能障害
  4. 関節・筋肉・胸の痛み

ME/CFSとLongCOVIDには表現型として重複があります。

持続感染、及び又は持続的な免疫活性化の、2つの病理生理学的メカニズムが提案されています。両方のメカニズムを裏付ける研究のエビデンスがあります。

脳脊髄液はT細胞の枯渇と、感染への免疫反応と一致した脱分化した単球を示しており、自然免疫系の免疫調節障害を示唆しています。COVID-19の症例による剖検の研究の結果、脳のあらゆる部分に炎症性浸潤を示し、特に脳幹において顕著でした。嗅球で血管漏出や白血球浸潤も見られますが、ウイルスやスパイク蛋白は検出されませんでした。血管壁内の血小板の活性化の増加が特に内皮細胞の回りで見られ、損傷個所を示唆している可能性があります。死後のMRI画像は、脳幹の大血管と微小血管損傷、ニューロン損傷を示しています。

治療の可能性は、抗ウイルス薬(ウイルスの持続感染が認められる場合)、免疫調節薬、T細胞の枯渇を逆転させうる治療法等があります。

質疑応答:COVID-19から回復後、2,3週間後に新しい症状が出る人がいます。
これは持続感染によって、免疫系が、あるいは免疫応答が徐々に増加することにより、自己免疫反応を引き起こしている可能性があります。

21.9.7NHK首都圏ナビに世田谷の後遺症調査

9月7日のNHK首都圏ナビに、「約半数に後遺症” 東京・世田谷区コロナ患者アンケートの詳細」と題する記事が掲載されました。

世田谷区では、新型コロナで区内の病院に入院した患者や自宅療養した区民などを対象に、コロナ後遺症アンケート調査を行い、3710件の回答を得ました。後遺症が「ある」と回答した人は全体の半数近いおよそ1800人にのぼり、最も多かった症状は嗅覚障害で54%、次いで、けん怠感が50%、味覚障害が45%、せきが34%などでした。

10代から30代まででは嗅覚障害が最も多く、40代より上はけん怠感がもっとも多いと回答し、年齢によって後遺症の症状に違いがある結果となりました。中には半年以上にわたり症状が続いている人もおり、区は後遺症の影響などを分析するとともに、対策を検討することにしています。

世田谷区長は「働いたり、日常生活を送ったりするのに支障をきたす人が多い一方で、受け皿は十分でない。今回のデータを出すことで、臨床の現場でも後遺症治療が新型コロナの治療と連続線上に行われていく体制を国にも求めたい」と話しています。

21.9.8朝日新聞に世田谷区のコロナ後遺症調査

9月8日付の朝日新聞に、「コロナ後遺症あり 半数~世田谷区、感染3710人回答」と題する記事が掲載されました。

世田谷区は、新型コロナウイルスに感染した区民や区内病院に入院した人を対象に実施した後遺症に関するアンケートの結果(速報)を公表しました。回答を得た3710件の内容から、コロナの症状がおさまっても、様々な後遺症の症状や退院後の不安などに苦しむ姿が浮き彫りになりました。

区はコロナ感染者に郵送とインターネットで3710人(有効回収率41.4%)から回答を得ました。回答者のうち、「後遺症がある」と答えたのは48.1%、「ない」は49.3%で、年代別の後遺症の有無の割合では、30、40、50代で「ある」がいずれも半数を超えていました。後遺症の症状別で最も多かったのは嗅覚障害で971件。全身のけんたい感(893件)、味覚障害(801件)と続きました。

療養中や療養後に困ったことでは、体調や健康面への不安が1270件と最多で、家族への感染の不安(1169件)、療養生活での不安やストレス(1033件)も多く、「自宅待機中の生活」「うわさなどへの不安」「風評被害・誹謗中傷」など、経済的な不安もありますが、家族や自身の体調や周囲からの目への不安を訴える声も目立ちました。

区長は、退院後の受け皿が不十分で、後遺症治療がコロナ治療の延長として必要だとの考えを示しました。10月下旬に最終結果をまとめて、区のサイトなどに掲載し、感染予防の啓発活動などに役立てたいとしています。

21.9.7産経新聞にコロナ後のME/CFS

9月7日付の産経新聞に、「コロナ後遺症 長期化ケース~感染時軽症 悪化…寝たきりも」と題する記事が掲載されました。新型コロナウイルスに感染後、深刻な後遺症を抱える患者が後を絶たちません。感染時の症状は比較的軽くても痛みや倦怠感などが長期間続き、寝たきり状態まで悪化するケースがあり、治療が困難な神経系疾患との関連も疑われます。

昨春から約1年半にわたり、倦怠感などを抱え、今も仕事を休職している埼玉県の男性会社員(51)は「職場への完全復帰は難しい」とつらい胸の内を明かします。症状当時、PCR検査を受けられず、しばらくすると嗅覚障害や睡眠障害、抜け毛などの症状も表れました。数カ月たっても倦怠感などの症状は改善しないまま、無理を強いて仕事を続けていました。

不安が募り複数の診療科を受診しましたが、異常は見つからず、後遺症外来を昨年9月に訪れ、検査では陰性だったものの、新型コロナに感染していた可能性が高いと指摘されました。昨年12月に別の医療機関でも同様の指摘を受け、「筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群(ME・CFS)」と診断されました。

国立精神・神経医療研究センターの山村隆特任研究部長によりますと、ME・CFSはウイルス性の感染症の流行とともに患者が増えることで知られ、2003年にSARSの感染者が相次いだカナダでも、患者が確認されたといいます。国外ではすでに新型コロナの感染拡大下で、ME・CFSが増加しているとの報告もあります。新型コロナ感染との科学的な因果関係は明らかになっていませんが、山村氏は「新型コロナへの感染で免疫機能が過剰に反応し、脳に炎症が起こることで、さまざまな症状が引き起こされているのではないか」と推測します。

発症後、心身に大きな負荷をかけた後に症状が悪化することがあり、介護が必要になるケースもあり、「無理をして元の生活に戻したことで起き上がれなくなり、数カ月間オムツをして介護を受けることになった方もいる」(山村氏)

重症化予防には安静と早期発見が重要ですが、国内に専門医は少なく、患者団体のNPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」によると、医師に症状を訴えても取り合ってもらえず医療機関を渡り歩く患者は多いです。篠原理事長は「国は新型コロナがME・CFSの引き金となる可能性を早急に調査し、診療体制を整備してほしい」と訴えます。

感染第5波で軽症者の多くが自宅療養を強いられる中、一定期間を経ても残る症状が見落とされている恐れもあります。山村氏は「社会復帰に当たっては、決して無理をしない。回復後も少しずつ仕事をこなすなど個々のペースで生活する意識や職場の環境づくりが重要になる」と強調しました。

筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群(ME・CFS) 世界保健機関(WHO)は「神経系疾患」に分類。発症原因は特定されておらず、根治につながる治療法も確立されていません。平成26年度の厚生労働省の調査では、約3割が重症患者でした。

21.9.1英国NICEにガイドライン発表を要請

9月1日付のVirology Blog(ウィルス学ブログ)に、「誤りによる治験:英国国立医療技術評価機構(NICE)に速やかにME/CFSのガイドラインを発表するよう強く要請する手紙」と題する記事が掲載され、9月1日にNICEの最高責任者であるギリアン・レング教授宛に、デビッド・チューラー博士が送った手紙が公開されました。

手紙は、ハーバード大学のコマロフ先生、デポール大学のジェイソン先生、国際ME/CFS学会会長のフリードバーグ先生、同副会長のチュー先生、英国ME協会顧問医師のシェパード先生など、世界中の126名が署名しています。チューラー博士は2015年10月に、「誤りによる治験: PACEによるCFSの研究の厄介な真相」と題する記事をVirology Blogに掲載しています。

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親愛なるレング教授

新しいME/CFSのガイドラインをNICEに速やかに発表するよう強く要請する手紙を添付していますのでご覧下さい。この手紙には、イギリスやアメリカ、その他の国々の科学者・臨床医・学者・他の専門家の方が署名しています。

先週、医学誌メイヨ―・クリニック・プロシーディングに発表された、この疾患のための別のガイドラインについて言及する良い機会です。この文書「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群:診断と症状の管理の要点」は、米国ME/CFS臨床医連合によって書かれました。現在の議論の大きな背景を強調する意見の中で著者たちは、「アメリカや他の国の政府、主要な医療団体は最近、ME/CFS患者の治療の選択肢として段階的運動療法と認知行動療法を取り消しています」と指摘しています。

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親愛なるレング教授

英国国立医療技術評価機構(NICE)は、様々な疾患に対して、エビデンスに基づく臨床ガイドラインを作成することを委託されています。NICEは科学的エビデンスに関する独立した権威機関として高い評価を得ていますので、そのガイドラインは国内ばかりか世界中の医療に影響を与えます。

2017年よりNICEは、現在、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と呼ばれる疾患の新しい臨床ガイドラインを策定中です。この任務を達成するためにNICEは、様々な視点を代表するバランスの取れた委員会の委員を選び、関連する研究の徹底的なレビューを実施しました。そのレビューは、段階的運動療法と認知行動療法という最も普及している治療法を支持する知見の質について、「非常に悪い」もしくは「悪い」と判断しました。

8月18日(水)に発表されるはずであった新しいガイドライン策定にあたり、委員会は綿密で最新の評価について適切に検討を行いました。予定されていたこのイベントの前日になって、突然に延期を発表しました。新しい情報があったからではなく、現状維持の方を好む強力な医学の権威者らによる明白な反対があったからです。NICEが外部の圧力に屈して、最後の最後になって計画を変更するとすれば、大きな問題です。

このような最終段階になって変更を加えることや発表を中止することは、提供されている研究と一致したケアを受ける患者の権利よりも、様々な専門職の既得権が優先することを示しているのではないでしょうか。この件に関する科学者・臨床医・学者やその他の専門家のグループとして、これ以上先延ばしにすることなく新しいエビデンスに基づくME/CFSのガイドラインを発表するよう、NICEに強く要請します。

※英語の原文はこちらからご覧いただけます