21.8.19国際ME/CFS学会で免疫治療の講演

8月19日~21日に、国際ME/CFS学会主催の学術大会がオンラインで開催されました。19日の専門的ワークショップで「自己免疫ME/CFSのための新たな治療のオプション」と題して講演された、ドイツのシャリテー医科大学免疫研究所のカーメン・シャイベーボーゲン先生の講演の概要が、コート・ジョンソン氏のHealth RisingというHPで9月16日に掲載されましたので、ご紹介致します。

2010年からシャイベーボーゲン先生は、ME/CFSに関する30の共著論文を発表し、大きな学際的チームがこの疾患の研究をしていることを提示しました。「自己免疫ME/CFSのための新たな治療のオプション」と題する発表の中で、感染誘因(多くの場合は主要な自己免疫疾患の誘因であるEBウイルス)、自己免疫の家族歴の増加のエビデンス、様々な研究結果を示し、少なくとも一部の患者においてME/CFSの自己免疫的原因の症例を提示しました。

自分のドイツの研究室における2020年の研究で、感染性の発症のME/CFS患者は、非感染性の発症や健常対象群より2倍も多く、自己免疫に強く関連する2つの遺伝子多型を有する可能性を発見しました。2020年にはノルウェーのフルゲ先生とメラ先生も、自己免疫に関連するMHCクラスII分子の増加を見つけました。

先生はβアドレナリン受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体、ATI受容体、ETA受容体に対する自己抗体に着目してきました。それらは血管を収縮させ、血管拡張物質やブラジキニンのような痛みを強化する物質を放出させ、最終的に筋肉や脳への血流を減少させ、毛細血管からの漏出や血液量の減少を引き起こします。最近、先生のグループは、これらの自己抗体のレベルが、感染性発症のME/CFS患者の疲労や筋肉痛、認知機能障害、胃腸症状の重症度と相互関係があることを見出しました。

内皮の機能を評価した最近の研究は、血管の問題は共通である可能性を示唆しました。内皮の機能不全は、筋肉や脳等への血液の供給の減少を意味する可能性があります。研究はME/CFS患者の約半数で内皮の機能が低下しており、内皮の機能が低下している患者は、疾患がより重症であることを示しました。

リツキシマブ先生は3つのリツキシマブの治験(最初の2つの小規模治験は成功、第3相の大規模治験は失敗)についてレビューしました。第2相試験は28人の患者を15ヵ月以上追跡し、18人が薬に良く応答しました。しかし、151人の患者を15ヵ月以上追跡した第3相試験では、リツキシマブ群よりもプラセボ群に応答した人が多かったです。全体の3分の1の患者が応答しましたが、リツキシマブ群(26%)よりもプラセボ群(35%)の応答率が良かったことは問題でした。

10~15ヵ月後に、第2相試験において非常に重症から回復、又はほぼ回復した多くの患者と、第3相試験の結果を比較しました。先生は、第3相試験において維持投与量が削減されたことが、治験の失敗を決定的なものにした可能性を提案しました。第2相試験では、3カ月、6ヵ月、10カ月、15カ月目のフォローアップで500mg/体表面積1平方メートル(最高で1,000mg)の割合で点滴投与しましたが、第3相試験では、3カ月、6ヵ月、9カ月、12ヵ月目に500 mgを固定投与しました。先生は固定投与は経済的な問題が原因であったと報告しました。

先生は維持投与量は「極めて重要」と呼び、第3相試験においてB細胞をたたくのには投与量が少なかったのではないかと問いました。また、成功とする診断基準(4.5疲労スコアが8週間)が短すぎるのではと問い、第1相試験では応答があらわれるのに3カ月かかったと指摘しました。さらに、プラセボ群の患者は「標準的な」ケアも受け、このケアによって症状が改善した可能性を指摘しました。

リツキシマブ群の26%は「重大な有害事象」がありましたが、プラセボ群でも19%の患者に「重大な有害事象」があったことは留意すべきです。ME/CFS患者に深刻な事象は良く起こります。

シクロホスファミド:最近のシクロホスファミドの非盲検第2相試験は、50%以上の患者が応答しており、良い結果でした。18ヵ月の長期間の治験(4年まで期間が延長された患者もあった)では、一日6,000歩以上(一般に推奨されているよりもかなり少ないですが、6,000歩は平均以上)と、活動が増加した患者が約50%見られました。4年後に68%が「寛解」を維持していました。研究終了までに、22人の応答者の内、9名がパート、あるいはフルタイムの仕事又は勉学に戻ることができました。

シクロホスファミドは古くからある、より毒性が強い薬で、吐き気や便秘が良く起こり、研究者たちは治療期間が「きつい」としています。11人の患者が一時、入院しましたが、症状による負荷が高く、患者の多くが生活の質が低いことを考えたら、毒性は「許容範囲」であると研究者たちは評価しました。しかし、二重盲検・プラセボ対照試験が明らかに必要です。

免疫ブログリン療法(IgG)の治験、「IgG/ IgGサブクラス欠損症のME/CFS患者における皮下免疫グロブリンの.自己治療の許容性と有効性:概念実証研究―PubMed」と題する論文は、B細胞介在性免疫機能障害のもう一つの証拠を提供しました。12人のうち5人が、12カ月以内に「臨床的に意義のある応答」を示しました(健康に戻ったという意味ではありません)。

皮下免疫グロブリン療法で改善したすべての患者は、乳酸脱水素酵素のレベルがベースラインで高く、治療中に下がりました。乳酸脱水素酵素は、エネルギー産生に重要な役割を果たします。免疫グロブリン療法が乳酸脱水素酵素を減少させるのに役立つようであるという事実は、免疫系がME/CFSにおいてみられるエネルギー産生の問題に関連していることを示唆します。

免疫吸着療法は、先生が追跡調査してきた自己抗体を含むIgG抗体を、患者から除去します。小規模な5日間の免疫吸着療法の治験は、10人のうち7名で速やかな症状の改善が見られ、そのうちの3人は2年後も改善を維持し、自己抗体も急激に減少しました。

これらの治療的アプローチに共通のことが一つあります。それは自己免疫で最も重要な細胞の一つであるB細胞を異なった方法で標的にしていることです。リツキシマブとシクロホスファミドは、メモリーB細胞を枯渇させます。免疫吸着療法は、血液から自己抗体を除去します。免疫グロブリン療法は、有用な抗体を患者血液に満たします。

先生は、より良い次世代のモノクローナル抗体薬が開発され、市場に出回ってきていることに言及しました。2019年の「自己免疫疾患に対する次世代のFc受容体を標的としたバイオロジクスーPubMed」と題する論文を示しました。Long COVID-19の到来によって、会社がME/CFS患者にこれらの薬を試すことにより理解を示しやすくすると先生は考えており、一つの会社と話し合っています。

先生は、自己免疫療法には感染性の発症の患者だけを入れ、カナダの診断基準を使って患者を選別し、活動基準を使って応答を評価することを提案しました。