8月19日~21日に、国際ME/CFS学会主催の学術大会がオンラインで開催されました。第2回目の報告です。
米国カルフォルニア州のEV Med Researchのジョン・チア先生
「ME/CFS患者におけるCOVID-19感染-予備的調査」
ME/CFS患者におけるCOVID-19感染について考察しました。急性COVID-19感染後に、Long-Haul-COVIDとして今はよく知られる、長期間持続する体を衰弱させる症状が続きます。この研究では、COVID-19に感染した場合、既存のME/CFSがさらに悪化するかどうかを考察しました。26名のME/CFS患者が研究対象となりましたが、全員がエンテロウイルスにもかかっていました。事前のエンテロウイルスは、胃生検によって診断されました。
COVID-19に感染した患者を、3~6ヵ月間追跡調査をしました。15人は軽症でしたが、11人はインフルエンザ様症状、疲労、グレインフォグ等の症状が2~4週間続き、寝たきりでした。26人中14人は、急性感染後数ヵ月間、ME/CFS症状が悪化しました。その11人の内4人は入院しました。1人はS状結腸憩室炎の穿孔で、3人が肺炎で(承認適応症外使用のレムデシビルとステロイドの治療を受け)入院しました。後者の回復には最高で3カ月かかりました。
経過観察中に、13人の患者の末梢血の白血球からエンテロウイルス蛋白が検出されましたが、誰もCOVID-19の蛋白が持続してはいませんでした。
COVID-19感染は半数の患者のME/CFS症状を非常に悪化させ、4人が入院する原因となったと結論づけました。レムデシビルがME/CFS症状を著しく改善させましたので、さらなる研究が必要です。
米国イリノイ州シカゴ市のデポール大学教授のレオナード・ジェイソン博士
「経時的なCOVID-19の症状:Long-HaulerとME/CFSの比較」
コロナ以前のパンデミックにおいて、10~20%の人は回復しませんでした。ジェイソン博士はlong-haul COVID患者を経時的に調査し、ME/CFS患者と比較しました。278人のlong-haul COVIDのどの症状がどのように時間とともに変化したかを、別の慢性疾患であるME/CFSの502人の症状と比較しました。標準的な症状の質問票を使用し、COVID-19の症状のリストも含めました。時間が経過するにつれ、long-halulersは回復のなされない睡眠や労作後の消耗(体調不良)を含むほとんどの症状が、全体的に減りましたが、神経症状は悪化しました。
ME/CFSと比較すると、COVID-19患者は最初は免疫や起立性の領域の症状をより多く呈しました。ME/CFS患者は胃腸や神経認知領域の機能障害が強かったです。しかし、時間の経過と共に、起立性の領域以外では、long-halulersはME/CFS患者より有意に症状が軽くなったことが証明されました。long-halulersは、経過と共にいくつかの神経認知症状が悪化しましたが、他のほとんどの領域では改善していました。
異なる症状のパターンのこうした研究により、両方の疾患の病態生理の理解がより進む可能性があります。
米国カルフォルニア州のEV Med Researchのジョン・チア先生
「ME/CFSの発症機序には脳神経細胞へのエンテロウイルス感染、免疫の活性化と細胞死が関与している」
チア先生はME/CFSの発症機序と、脳神経細胞へのエンテロウイルス感染、免疫の活性化と細胞死との関連について考察しました。彼は、ME/CFSにエンテロウイルスが関与していると、長い間主張していました。1994年と2001年の研究、及び2004年の自分の患者の研究に言及しました。動物では、エンテロウイルスが脳神経細胞の持続感染の原因となります。
この研究では、6か所の異なった領域から脳のサンプルが採取されました。ウイルス性のカㇷ゚シド蛋白1が、異なった脳の領域の神経細胞において見つかり、小脳のプルキンエ細胞中が最も顕著でした。また、過剰な炎症性細胞やグリアの活性化がなくとも、脳神経細胞の慢性エンテロウイルス感染のエビデンスが見られました。
この研究は、ME/CFSにおける体を衰弱させる神経症状についての免疫病理学的な説明を提供します。