21.4.27NCNPで論文について記者会見

4月27日に国立精神・神経医療研究センター(NCNP)において、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の新たな免疫バイオマーカーの発見~B細胞受容体レパトア解析に基づく成果~」と題して、論文発表に合わせてオンライン記者発表会が開催され、20名以上のメディアの方が取材して下さいました。

司会はNCNP総務部の山本邦夫氏が務められ、NCNP神経研究所免疫研究部長の山村隆先生が、研究の背景・概要として、ME/CFSの症状や診断基準、血液バイオマーカーによる新しい血液診断法(B細胞受容体レパトア解析)を開発したことの意味(ME/CFSの医療の均てん化、明確な疾病概念の確立、指定難病などの患者救済、治療薬開発につながる画期的な成果)、自己免疫性疾患である可能性、ノルウェーの治療薬開発の試み、ME/CFS患者の脳の異常、COVID-19関連のME/CFSの集団発生の可能性について発表されました。最後に、「ME/CFS患者では特定の抗原に対する強い免疫応答が維持されていると推測され、発症初期の引き金を引くのは感染性病原体であるが、慢性期には自己抗体にシフトしている可能性が考えられる。ME/CFSは自己免疫病(神経免疫疾患)である可能性が高く、B細胞などを標的とする新規治療薬の開発が期待される。海外ではCOVID-19感染に続発するME/CFSの論文が続々と出版され始めている。先行感染が明確でないME/CFSの研究や診療にもB細胞受容体レパトア解析は有用」と結ばれました。

続いて、同研究所免疫研究部室長の佐藤和貴郎先生が、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群におけるB細胞受容体レパトアのかたより」と題して発表されました。

抗体を作る細胞であるB細胞は、抗体(免疫グロブリン)と同じ形をしたB細胞受容体を細胞の方に出しています。きわめて多様な種類があり、それによって無数の細菌・ウイルス等に反応・対応できるようになっています。そのたくさんのB細胞受容体のレパートリーが、B細胞受容体(BCR)レパトアです。

次世代シークエンサーを用いて、網羅的に全種類のB細胞受容体を調べることによって、色々な遺伝子の種類によってグループ分けできます。今回、ME/CFS患者群と病気でない健康な方と比較をして、レパートリーの頻度の違いを調べました。

様々な感染症でこうした研究が行われており、COVID-19に関する論文もすでに出ています。健康な方に比べて一部の遺伝子のレパートリーが患者群で偏りがあると書かれた論文もあります。同じ方法を用いて、自己免疫疾患である血小板減少症紫斑病の患者を対象にBCRレパトアを調べた研究では、患者さんで4-28という遺伝子ファミリーが増えており、この病気と特定のレパトアと関係があることが分かりました。

今回の研究参加者は37名の患者と健常者23名でした。平均年齢約40歳で、平均で病歴10年位、女性が7~8割、発症時に感染症様症状があった方が約半数、免疫系の病気を併せ持っている方も約半分おりました。重症度はPS値約6で、調子の良い日は少し動けるけれども、一週間の内半分以上は自宅で休まなければいけないというレベルで、日常生活を送るのが非常に大変です。

いくつかの遺伝子は患者集団で頻度が高いということが分かり、そうしたものが6つ見つかりました。6つのデータだけを見て、患者さんと健常者を見分けることができるかをROC解析という統計学的手法で調べ、精度80%以上というかなり高い確率で診断できることが分かりました。気管支喘息やアレルギー体質などがない患者さんでも同じ結果が得られたことから、ME/CFSそのものとの関係があると考えます。その後、最初の検討の後に別の患者さん(患者37名)に参加していただき、ほぼ同じ結果が得られましたので、再現性があると考えられます。

感染症後に発症した患者が約半数おられ、そうした方と関連のある遺伝子ファミリーは、IGHV3-30と3-30-3が浮かび上がってきました。この2つは相関関係があり、両方高い方が多く、発症からの年数が比較的短い(10年以下)方で高いことも分かりました。

プラズマブラストという抗体を盛んに産生する細胞は感染症の後に増えますが、フローサイトメーターを用いてB細胞の色々な種類を調べたところ、約2割の患者さんでプラズマブラストが非常に増えていることが分かりました。特に重症の方や、発症からの期間が比較的に短い方で増えていることが分かりました。さらに詳しく調べたところ、患者さんで増えている遺伝子機能の内の2つがMx1とIFI16で、患者さんのプラズマブラストはインターフェロンに反応して活性化しています。ウイルスとの関係、自己免疫疾患と関係する遺伝子が、抗体を作る細胞において増えていたという異常を見出したということです。

最後に、「今回の論文で見出したことは、患者さんでは特定のB細胞受容体ファミリーが血液中で増えていて、それが診断バイオマーカーとしての可能性があるのではないか。特に感染症のエピソードで発症した方で特に増えている3-30、3-30-3というファミリーを見出しました。抗体産生度の高いプラズマブラストでのインターフェロン誘導遺伝子が増えているという異常を見出しました」とまとめられました。

その後、活発な質疑応答が行われ、「B細胞受容体が抗原を認識するとB細胞としてどういう活動をするのか」「血液で容易に診断できるのか。マーカーの実用化までの課題は」「該当するレパトア群、B細胞を抑制すればこの病気の治療に結び付くのか」「受容体の増加等がこの病気の原因と考えうるのか。それが治療の確立につながるのか」「COVID-19との関係も含め今回の発見の意義について一言頂きたい」「関連するB細胞をたたいて治療するという技術はあるのか」等の質問が出されました。