21.5.28COVID-19有識者会議に後遺症

自治医科大学学長の永井良先生を座長とする「COVID-19有識者会議」のHPに、5月28日に「新型コロナウイルス感染症後遺症について」と題する記事が掲載されました。著者は国立国際医療研究センター病院国際感染症センターの森岡慎一郎先生です。

これまでにエボラウイルス病やデング熱といったウイルス性疾患でも後遺症があることが知られていますが、COVID-19にも後遺症があることが分かってきました。2020年7月頃より欧米から疫学報告が散見され、その後、本邦からは国立国際医療研究センターや和歌山県からコロナ後遺症の疫学が報告されました。

発症リスク因子に関しては、高齢、女性、肥満、発症から7日以内の症状の数が5以上であることが報告されています。また、症状別では、倦怠感や筋力低下のリスク因子として高齢、女性、重症であること、不安障害やうつのリスク因子として女性、重症であることが挙げられました。

コロナ後遺症の病態は明確になっていませんが、英国の国立衛生研究所がコロナ後遺症をLong COVIDと呼び、急性期症状の遷延、ウイルス後疲労症候群、集中治療後症候群、心臓や脳への影響の4つの病態が複雑に絡み合ったものと定義付けています。

現段階では明確なコロナ後遺症の原因が分かっていませんが、いくつかの仮説が提唱されてます。新型コロナウイルスはスパイクと呼ばれる突起がACE2受容体に結合することで細胞内に直接侵入・増殖し、組織を障害します。ACE2は肺、脳、鼻や口腔粘膜、心臓、血管内皮、小腸に存在するため、後遺症として多様な症状を呈する可能性があります。その他の仮説として、サイトカインストームの影響、活動性ウイルスそのものの影響、抗体が少ないことによる不十分な免疫応答などが挙げられています。

現段階ではコロナ後遺症に対する確立した治療法はなく、対症療法が中心となります。外来診療を受けたCOVID-19患者214名を対象とした研究では、亜鉛製剤やビタミンC(アスコルビン酸)の投与を行うことは、症状の持続期間の短縮には寄与しなかったとの報告があります。今後の研究においてコロナ後遺症の病態を解明していくとともに、有効な治療法を見つける必要があります。

コロナ後遺症に関しては医学的、社会的、経済的問題があり、これらは喫緊の課題であると考えられます。まず、コロナ後遺症の概念を広く周知することが重要でしょう。コロナ後遺症の多くは客観的な指標で定量評価しにくいですが、多様な症状を”気持ちのモンダイ”で片付けるのではなく、患者の声を傾聴する必要があります。COVID-19は地域全体で取り組むべき疾患となりつつあり、今後は地域単位で急性期・慢性期のCOVID-19患者を支えていく体制づくりが必要になるでしょう。

次に、コロナ後遺症の定義作成は重要です。この定義を考える際、筆者は何らかの新型コロナウイルスの感染を示唆する客観的所見は必要と考えています。具体的には、PCR検査、抗原検査、抗体検査などがそれにあたります。

コロナ後遺症患者のための社会保障も課題です。コロナ後遺症のために復職困難となったり、定期通院が必要となったりすることがあり、経済的救済が必要となります。今後は臨床研究を通して後遺症が出現もしくは遷延するリスクを明らかにし、病態解明による有効な治療薬開発につなげる必要があります。

COVID-19は後遺症という点だけ見ても風邪やインフルエンザとは異なり、同様に考えてはいけません。多様な症状が月単位で長引き、回復者の生活の質を低下させ、美容というデリケートな面でも問題を引き起こしています。重症者だけでなく、軽症・中等症の患者や若年者にも一定の割合でコロナ後遺症が長く続くという事実を認識し、患者への啓発活動に繋げることが大切です。