21.5.14科学新聞にバイオマーカー発見の記事

5月14日付の科学新聞に、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の新たなバイオマーカー発⾒」と題する記事が掲載されました。

国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部の佐藤和貴郎室長と山村隆特任研究部⻑らの研究グループは、ME/CFSの新たな免疫異常を発見し、血液診断マーカー候補を発見したと4月27日に発表しました。リンパ球の1つであるB細胞受容体(BCR)を解析することで、特定のB細胞受容体が患者で増加していることがわかり、客観的な診断法の確立につながる成果と期待されます。成果は国際科学誌「Brain Behavior and Immunity」に掲載されました。

ME/CFSは、発熱などの風邪症状を契機に突然発症することが多く、ウイルスや細菌が免疫系に作用することが発症に重要と考えられています。大規模な感染症流⾏後の集団発生が報告され、近年では03年にはカナダや⾹港でのSARS感染後の集団発生が報告。毒物への暴露や外傷などの後にも発症が確認され、いずれも免疫系への影響が考えられています。リンパ球の1つであるB細胞の除去が一部の患者に有効との報告も出されています。

これまで研究グループは、拡散尖度画像で同疾患の異常が検出できることを明らかにしていました。今回研究グループは、ME/CFSを神経免疫疾患として捉え、典型的なME/CFS患者と判断した37⼈の血液を採取。B細胞の特徴を調べるため、BCRの種類の頻度分布および、B細胞の1種であるプラズマブラストを解析しました。患者集団の平均年齢は約40歳で、発症から平均して約10年が経過し、⼥性が7-8割を占めていました。

B細胞は表面に抗体に対応したBCRを持ち、抗原が結合すると活性化。遺伝子再構成などの機構で多様なBCRが生み出されることで、多様な抗原への対応を実現しています。個⼈のBCRのコレクションはBCRレパトアと呼ばれ、遺伝子を指標にBCRファミリーに分類できます。BCR遺伝子を網羅的に解析することで、個⼈のB細胞が持つ様々な種類のBCRファミリーの頻度を解析でき、特定のBCRファミリーの増加は感染症や自己免疫疾患とそれぞれ相関があることがわかっていました。

そこで次世代シークエンサーを用いて、患者のBCRレパトアを解析し健常者(23⼈)と比較しました。その結果、患者集団と健常者集団ではBCRレパトアが異なり、患者集団では6つのBCRファミリーが有意に増加。これをもとにME/CFSの診断が可能か統計解析で調べると、従来の診断基準とあわせることで80%以上の確率で診断可能なことがわかりました。ほぼ同数の他の患者および健常者集団でも、この結果が再現されることも確かめした。

さらに感染症とBCRファミリーとの関係を調べると、IGHV3-30、IGHV3-30-3との相関が認められました。これらBCRファミリ-を持つ患者は、感染症を契機とし、かつ発症後の期間が比較的短かかったです。

またフローサイトメーターでB細胞の頻度を比較すると、患者群ではB細胞の頻度が有意に高く、なかでもプラズマブラストが患者の20%で増加。患者由来のプラズマブラストの網羅的遺伝子発現解析を行うことで、インターフェロン誘導遺伝⼦の機能が亢進していることがわかりました。インターフェロンはウイルス感染などで体内で産生されますが、患者のプラズマブラストはこの機能が慢性的に活性化している可能性が示されました。

COVID-19の後遺症の長期化には、ME/CFS発症も含まれるとみられており、今回の成果は治療法開発にもつながるものと期待されます。