21.4.23日経サイエンスにコロナ後遺症

4月23日付の日本経済新聞WEB版に、日経サイエンスの「コロナ後遺症『ブレインフォグ』 免疫異常が関与か」と題する記事が掲載されました。

新型コロナウイルス感染症にかかった人には、回復後も強い倦怠感や、頭がぼうっとする「ブレインフォグ」に悩むケースが多いです。最近の研究から、こうした症状には免疫の異常が関わっている可能性が出てきました。

長期にわたる倦怠感は、新型コロナの後遺症の中で最も頻度が高く、中国・武漢の研究チームが1月に英医学誌ランセットに発表した退院患者のアンケート調査では、約1700人のうち6割以上が発症から半年たった後も倦怠感や筋力の衰えを感じると答えました。

全身性の極度の疲労やブレインフォグはME/CFSでよくみられる症状です。買い物などの日常的な活動の後に極度の疲労が起こり、睡眠障害や記憶障害、集中力の低下、自律神経障害などが起きます。ウイルスが引き金となって起きる疾患と考えられています。

国立精神・神経医療研究センター神経研究所特任研究部長の山村隆氏は、同センター病院で20年秋から21年3月末までの間に、コロナウイルス感染症から回復した後にME/CFSを発症したとみられる30人弱の患者を診察しました。PCR検査を受けておらず感染が確認されていない人なども含まれており、ME/CFSの診断基準を必ずしも満たしませんが、症状からME/CFSとよく似た病気だと考えられるといいいます。「急性期の症状がおさまり、職場などに復帰してから体調を崩したケースが相当ある」と山村氏は話します。

ME/CFSの発症メカニズムは、最近、本来は体内に入ってきた異物を攻撃するはずの抗体が、間違って自分の体のたんぱく質を攻撃してしまう「自己抗体」によって引き起こされる可能性が浮上しています。新型コロナの流行が始まる前、山村氏らはME/CFS患者約90人の脳をMRIで調べ、血中の自己抗体の濃度が高い患者ほど、脳のネットワーク構造に多くの異常が起きていることをつきとめました。自己抗体が、脳神経細胞の表面にある情報伝達の「アンテナ」となるたんぱく質を攻撃するとみられます。

新型コロナの倦怠感がME/CFSとどこまで同じメカニズムで起きているかは現時点では不明ですが、新型コロナ患者には自己抗体の血中濃度が高い人がいるとの報告もあります。「新型コロナの後遺症は、自己免疫反応によるものがかなりの割合を占めるのではないか」と山村氏はみます。

新型コロナに感染した英リバプール熱帯医学校のポール・ガーナー教授は、後遺症に悩む患者が医師や雇用先、家族にすら症状を理解されず、精神的に追い詰められている状況を訴えます。度重なる流行の拡大で感染者数が増大するなか、後遺症に悩む患者が十分なケアとサポートを受けられる体制を整えることの重要性が高まっています。