21.2.5日経新聞にウイルスの脳神経への感染

2月5日の日本経済新聞に、「新型コロナウイルスは脳神経細胞に感染するか」と題する記事が掲載されました。

新型コロナウイルス感染が脳神経系に障害をもたらしたとみられる症例が世界で報告されており、感染の可能性を探る研究が進んでいます。入院中の患者がせん妄を経験したとの報告や、回復後に頭痛や著しい倦怠感、ブレインフォグと呼ばれる思考力の低下など脳神経に関わる障害が残ることがあることがわかっています。

シャリテー・ベルリン医科大学の研究チームは昨年11月、新型コロナで亡くなった人の脳などを調べた結果、鼻腔内の嗅覚粘膜にウイルスが感染し増殖、脳内からもウイルス由来のたんぱく質やRNAを見つけたと報告しました。嗅覚の神経系を介して脳にウイルスが到達した可能性を示しました。

米エール大学の岩崎明子教授らの研究チームは今年1月に、3つの異なる手法でニューロンへの感染の可能性を示す論文を発表しました。ヒトの脳を模したオルガノイドをiPS細胞から作製、新型コロナウイルスに感染させたところ、ウイルスはニューロン内で増殖し、感染細胞の代謝が非常に活発になり、感染細胞の周りの細胞が酸素不足に陥って死にました。ウイルスの感染をブロックする抗体を与えると感染は起きませんでした。

次に、ACE2を発現させた遺伝子組み換えマウスを作製、呼吸器からウイルスを取り込ませたところ脳での感染が確認できました。さらに、新型コロナで亡くなった3人の患者の脳を調べ、ウイルス由来のたんぱく質を見つけました。これらは脳細胞に直接的にウイルスが侵入できる証拠だと岩崎教授らはみています。

米国立衛生研究所(NIH)のコリンズ 所長は1月14日付の自身のブログで「新型コロナの脳への影響はもっと詳しく見る必要がある」とし、NIH傘下の国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)の研究グループの結果を紹介しています。

MRIを使い、感染で亡くなった患者13人の嗅球や脳幹などを観察した結果、炎症や出血の痕跡を見つけましたが、脳組織への感染は確認できなかったといいます。新型コロナが引き起こす炎症反応が脳内の血管を傷つけていることを示唆しており、脳内にウイルス由来のたんぱく質などが存在するのは、血管が傷つき血液内に存在したウイルス由来の物質が染み出したためとも考えられます。

宮坂昌之・大阪大学名誉教授も「現段階ではヒトの脳細胞への直接的な感染が証明できたとは言えない」と話します。この問題は新型コロナ患者の治療や後遺症の改善に深く関係している可能性があり、コリンズ所長によると、世界から症例データを集めて詳しく究明する研究がNINDSで進行中だといいます。