21.2.17NHKラジオにエール大学の岩崎教授

2月17日のNHKラジオの「NHKジャーナル」で、「新型コロナの脳への感染 “ブレインフォグ”症状に着目した最新の研究」と題して放送されました。エール大学医学部で免疫学が専門の岩崎明子教授が中心になり、アメリカの研究チームが、新型コロナウイルスが脳に感染することを明らかにし、新型コロナウイルスの新しい面を明らかにしたと注目されています。

岩崎教授:新型コロナウイルスは、肺を中心に標的にすると考えられていましたが、たくさんの新型コロナの患者さんに脳に関わる症状が目立ってきました。例えば、約80%の患者さんに頭に“もや”がかかってぼーっとする症状、“ブレインフォグ”と呼ばれる症状が出ているということが分かっており、脳に直接感染が起こっているのではないかと思いました。

そこで、3つの研究を行いました。1つ目は、新型コロナで亡くなった3人の患者さんの脳の解剖実験で、そのうち1人の脳にコロナウイルスが感染していることが分かりました。2つ目はマウスの研究で、脳、あるいは肺だけに新型コロナを感染させると、脳だけに感染させたマウスは1週間以内に死んでいますが、肺だけに感染させたマウスは死にませんでした。これらの結果から、脳に感染した場合、呼吸器感染以上に命に関わる危険性がある可能性が浮き上がりました。

3つ目の実験は、脳に似た3次元の細胞培養を使った「オルガノイド」の実験です。オルガノイドに新型コロナを感染させると、神経細胞に感染が起こり、その周りの細胞が酸欠で死にました。新型コロナは、「ACE2」とくっついて細胞に侵入して感染を起こしますが、このACE2はほとんど肺にしか感染しないと考えられていました。私たちの実験で、脳にもACE2の発現があり、ACE2を使ってウイルスが侵入して感染が起こり、脳も感染の対象に値することが分かりました。脳にもACE2があることを見つけ出した、ということです。

オルガノイドに新型コロナウイルスを感染させる段階で、ACE2をブロックする抗体も一緒に入れると感染が起こらなくなりましたので、ACE2を介して脳に感染が起こっている証拠になりました。新型コロナウイルスは脳の神経細胞に感染を起こしますが、感染した細胞自体は殺さずに、ウイルスを増やすために生かしておき、その周りの神経細胞が酸素を奪い取られ、酸欠のために急激に死ぬことでダメージを起こしていることが分かりました。

マウスの実験では、脳に感染したときに死ぬ率がすごく高くなりましたので、脳は感染したら危険な場所だということが分かりました。脳に直接感染するとダメージが脳に直接いってしまい危ないと思います。一度脳の細胞に感染が起こると、そこのダメージや酸欠などで脳梗塞になったり、免疫の暴走や自己免疫疾患の場合でも、脳にダメージが起こって脳梗塞になったり、脳にダメージが起こります。

脳の中は免疫の攻撃を受けなくてすむので、ウイルスにとっては“居心地のいい場所”で、ヘルペスや水痘ウイルスなど他に多くのウイルスが、脳神経に感染して一生そこに隠れていますので、一度感染を起こすと長引く可能性も考えられます。今のところ軽症の患者さんの脳というのは調べられていませんが、一度感染すると長引く理由につながる可能性はあります。

一度隠れたウイルスがまた出てきてダメージを与えるという証拠はまだありませんが、可能性がないとも言えません。軽症でも長期間にわたって症状が出ている人もたくさんいますので、予防がとても大切です。