21.3.20日本経済新聞にコロナ後遺症

3月20日付の日本経済新聞に、「コロナ後遺症『脳に霧が』 慢性疲労症候群と関係か」と題する記事が掲載され、山村隆先生のコメントが取り上げられました。

新型コロナウイルスの感染後に回復したにもかかわらず、様々な後遺症で苦しむ人が相次いでおり、「ブレインフォグ」とよぶ脳に霧がかかったような状態を経験する人が少なくありません。ブレインフォグは頭の中に霧がかかったような状態で、考えたり集中したりするのが難しくなります。日本神経学会理事の下畑享良・岐阜大教授は「臨床医にとってなじみの薄い用語だ」と話します。正式な病名ではなく、あくまでも患者が訴える自覚症状で、新型コロナウイルス感染症に関する論文報告などでたびたび使われるようになり、注目を集めています。

米科学誌サイエンスに2020年8月に掲載された記事は、新型コロナ感染後の長引く症状の一つとしてブレインフォグを挙げ、ウイルスによる脳細胞のダメージや、脳や全身での炎症が神経症状につながる可能性を指摘します。ワシントン大学の研究チームは軽症者を主に含む患者177人を対象に感染から約6カ月後の状況を調べ、約3割の患者で症状が続いており、全体の2.3%にあたる4人がブレインフォグを訴えました。感染後に長引く症状について岐阜大の下畑教授は「疲労や不眠症、めまいなどのブレインフォグに関連する症状は高い頻度に報告されている」と指摘します。

国立精神・神経医療研究センター神経研究所の山村隆・特任研究部長は新型コロナ回復者や感染疑いのあった人で、ブレインフォグを訴える患者の治療にあたります。山村特任研究部長は「ブレインフォグは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の重要な症状のひとつ」とみています。日本は米国などと比べてME/CFSなどの診断や治療をできる医療体制が乏しく、新型コロナに関連するブレインフォグなどの症状も見つかりにくい可能性があります。

ブレインフォグを含む新型コロナに関連した神経症状の発症の仕組みはよく分かっていません。脳の細胞には新型コロナが感染する足がかりになるたんぱく質があり、肺と同じように感染しやすいとの研究報告もあります。下畑教授によると、ウイルスの神経細胞への感染のほか、血液と脳を隔てる血液脳関門や血管内皮の異常などが関係するとの推測もあるといいます。

こうしたなかで、米ニューヨーク大学ランゴーン医療センターは米国立衛生研究所傘下の国立神経疾患・脳卒中研究所の支援のもと、新型コロナに関連する神経症状を追跡するためのデータベースを立ち上げました。匿名化された臨床情報や検体を集める。発症頻度や機序の解明に役立つ可能性があるといいます。