21.3.5日経メディカルにLong-COVIDの脳幹障害

3月5日付の日経メディカルに、「Long-COVIDにおける持続性脳幹機能障害仮説を検討」と題する、ACS Chemical Neuroscience誌に掲載された論文のレビューが掲載され、Long-COVIDの持続的脳幹機能障害とME/CFSの関連についても取り上げられました。記事の著者は脳神経内科医である春日井市総合保健医療センター参事の平山幹生先生です。

Long-COVIDの原因として、持続性の脳幹機能障害の関与を提唱する報告です。COVID-19患者の約81%は無症候性で軽度で、子どもを始め、軽症のケースであっても、COVID-19生存者のかなりの割合が完全には回復せず、陰性となったのに、Long-COVIDとして知られるウイルス感染後症候群に苦しんでいるとされます。

Long-COVIDの定義や診断基準はまだ確立していませんが、現在のところ、倦怠感、呼吸困難、頭痛、認知障害、咳、関節および胸痛、気分の変化、臭いおよび味覚の機能不全、および持続性の筋肉痛などが認められ、症状発現または退院後から少なくとも4週間持続するとされます。

Long-COVIDが起きる原因として、一般的な説明では、COVID-19急性期から改善していない残存する組織損傷、ウイルスの持続、および慢性炎症が原因とされます。筆者らは、もう1つの原因として、S新型コロナウイルスの脳幹向性とその結果として生じる持続性の軽度の脳幹機能障害である可能性を提案しています。

新型コロナウイルスのRNAは、死亡したCOVID-19患者の剖検例の30〜40%で脳に発見されましたが、他の剖検では、COVID-19で亡くなった患者の脳に組織学的変化や新型コロナウイルスの痕跡は認められませんでした。これは、新型コロナウイルスに神経向性があるまたは脳浸潤する可能性を示唆しますが、かといって全てのケースに発生するわけではないことも示しています。

脳の剖検研究では、炎症反応、神経変性、ウイルス侵入など、COVID-19に脳幹が関与している証拠が示されています。様々な剖検研究より、新型コロナウイルスは嗅覚系から脳幹への指向性がある可能性を示唆します。また、死亡したCOVID-19患者の脳剖検で新型コロナウイルスのRNAが存在しないにもかかわらず、脳幹神経病理が観察されたケースも報告されており、新型コロナウイルスはウイルスの侵入、炎症、血管の活性化を通じて脳幹に損傷を与える可能性があります。

新型コロナウイルスが細胞に感染するために使用する受容体であるACE2は脳幹にも発現しており、注目すべきは、脳幹の橋と延髄でのACE2の発現が最も高いことです。また、COVID-19の呼吸不全の原因として、脳幹に対する新型コロナウイルスの指向性が関与するという考え方も出てきました。興味深いことに、脳幹の機能とlong-COVIDの症状はかなり重複します。こうした結果から筆者は、脳幹機能障害がLong-COVIDの病態に関与しているという仮説を提唱しています。

ただし、この仮説の注意点として脳幹機能障害の大きさのあいまいさであるとも述べています。脳幹機能障害は慢性疾患の病態生理にも関与していると示唆されています。一つには、慢性の筋骨格痛と神経因性疼痛患者で、脳幹の拡散性と機能的連絡性の変化が認められており、頭痛または頭痛に対する脳幹機能障害の関与も示されています。ME/CFSの症状の重症度が、脳幹機能障害と関連していることも示されています。したがって、脳幹機能障害は致命的または持続性の疾患を引き起こす可能性があり、後者にはLong-COVIDが含まれる可能性があるとまとめています。

Dr Hirayama’s Eye-Long-COVIDの病態把握に、急性期からの脳幹機能検査の実施が望まれる-

 Machadoらは、脳幹のSARS-CoV-2感染は、呼吸中枢に深刻な損傷を与え、不随意呼吸調節に影響を与える機能的逸脱を引き起こすとしています。この先、無症候性の患者であっても、脳幹反射を調査する一連の神経学的検査が推奨されるかもしれません。ニューロイメージング技術は、ICUで人工呼吸器を装着している患者に常に使用できるとは限りません。聴覚および体性感覚誘発電位、定量的EEG、経頭蓋ドプラなどの補助検査を使用して脳機能検査を代替できることを生かした検討が有用ではないでしょうか。