2021.1.28AERAdot.にCOVID-19後のME/CFS

1月28日付のAERAdot.に、「40代男性の告白『自殺を考えた』 ”コロナ後遺症”に悩む患者の深刻な現実」と題する記事が掲載されました。

東海地方に住むYさん(40代)は、2020年4月に感染して数週間後に退院しましたが、体調は改善せず、体全体が不快感と倦怠感に覆われ、「感染前の生活を送れない」と話します。患者団体の「筋痛性脳脊髄炎の会」によるアンケートでは、約4割の人が「仕事(学校)に戻ることができない」と回答。同法人理事長は「当時、PCRを受けられずに後遺症を発症している人たちは、行政の補填から落とされてしまうのでは」と訴えます。

Yさんは重症化せず、3週間ほどで退院。退院後、担当医から「1カ月ほど安静にして、外出を控えるように」と指示を受けましたが、自身の症状に不安を抱き、2カ月の自粛生活を続けました。しかし、自粛を終えた後も感染前の生活スタイルが戻ることはありませんでした。「肌の痛みと体全体に走る激痛、37度前後の微熱、鉛を付けられているかのような体のダルさ、睡眠障害。憶障害もあり物事をパッと思い出すことができず、考え事をしても頭の中が真っ白です。」

入院時の担当医を受診してもメンタルクリニックへの受診を勧められ、そこでうつ予防の薬をもらいましたが、その薬を飲んだ後、Yさんは救急車で病院に運ばれてしまいました。症状に危機感を覚えたYさんは、インターネットで症状を調べ続け、ME/CFSにたどり着きました。

Yさんは10月にMEと診断を受けました。「動くと息苦しさと疲れ、皮膚のヒリヒリが続きます。3日間寝られない時もあり、ちょっと無理をすると、一日の最後にダメージがきます。自殺を何回も考えました。」寺の住職や地域の自治会長として多忙な毎日をおくっていたYさんは、「感染前は毎日朝早くから夜遅くまで仕事し、犬の散歩や体力作りのための筋トレが日課でしたが、いまは一切できません。少しでも体に負担がかかることをすると、その疲れと息苦しさ、皮膚の痛みが襲ってきます。」

実はこのME/CFSは、新型コロナウイルスが原因で発症する可能性があると言われ、アメリカやヨーロッパでは流行当初から注意喚起がなされている難病です。国立精神・神経医療研究センターの山村隆医師はME/CFSについて、こう説明します。

「新型コロナはME/CFSを引き起こす可能性があります。極度の体力消耗といった身体的負荷、作業後の消耗、認知機能障害、過眠や不眠といった睡眠障害など、いくつもの症状が同時に発生します。これが6カ月以上続くと、ME/CFSの可能性が高い。中には歯ブラシを持てない人、髪の毛を3カ月間洗えない人もいました。症状の一番のポイントは、”集中力や思考力の低下”といった認知機能障害です。本を読んでも集中して読めない。2~3行読んだら疲れて、読んだ内容を忘れてしまう。学校へ行っても教科書を読めず、仕事をされている方は書類をきちんと読めない。」

「ME/CFSにかかると脳(中枢神経系)に異常をきたします。認知、言語、ワーキングメモリーで重要な役割を果たす右上縦束という大切な部分に異常が出ることはわかっています。ME/CFSが起こる原因は、まだよくわかりませんが、体内から排出されていないウイルスに免疫系が過剰に反応して暴走し、脳の中で炎症反応を起こし、症状が起きているのではないでしょうか。ME/CFSは発症前の日常生活に戻ることができない病気ですが、周囲の人には患者さんの訴えが理解できず、怠けているのではないかと言われることすらあります。また、病院で受ける血液や脳の検査では異常が出にくく、患者さんによって症状の組み合わせが異なったりするため、医師も診断がしにくいのが現状でしょう。ME/CFSに詳しい医師の数も日本では少ないのも問題点のひとつです。」

患者団体の「筋痛性脳脊髄炎の会」は昨年、COVID-19後の体調不良(後遺症)が続いている人がME/CFSを発症する可能性を調べるため、インターネット調査を実施し、326人から有効回答数を得ました。検査数抑制のためにPCR検査を受けられなかった人や陰性となった人も調査対象としました。調査では、40.5%が「仕事(学校)に戻ることができない」、11.3%が「身の回りのことができない」、12.6%が「寝たきりに近い」、3.7%が「基本的動作(飲み込みや歩くなど)を学習する必要がある」と答えました。その後、専門医の診察や検査を経て、5人(陽性1人、未検査4人)がME/CFSの確定診断を受けました。また、ME/CFSの症状を呈した人は全体の27.9%で、陽性患者全体の22.2%、陰性患者全体の31.7%で、未検査患者全体の27.2%という結果でした。

同団体理事長は、調査結果についてこう話します。「日本においても、新型コロナ感染後にME/CFSを発症した人が確認され、多くの人がこれまでの生活を送れなくなった実態が浮かび上がってきたのです。私たちが一番心配をしているのは、20年1月から5月あたりのPCR検査が抑制されていた時期に、PCR検査を受けられなかった人たちが後遺症に苦しんでいることです。新型コロナに感染してもPCR検査すら受けられなかった方たちは、治療の面でも精神的な面でも、より困難な状況に追いやられています。こうした問題を解決するためには、PCR検査を希望する全ての人が検査を受けられるよう、今からでも検査体制の拡充が大切ではないでしょうか。」