20.12.30NIHのCOVID-19患者の脳の研究

2020年12月30日付の米国衛生研究所のHPに、「NIHの研究により、COVID-19患者の脳に血管の損傷と炎症はあるが、感染はしていないことが明らかになった」と題する記事が掲載されました。サブタイトルは「死亡した19人の患者の研究結果は、脳の損傷は患者の疾患による副産物であることを示唆している」

COVID-19がどう患者の脳に影響を与えるのかに関する徹底的な検査において、米国国立衛生研究所(NIH)の研究者たちは、感染したばかりで死亡した患者の組織の検体の中に、薄くなり漏出しやすくなった脳の血管によって引き起こされた損傷の顕著な特徴を何度も見つけました。さらに、組織の検体中に新型コロナウイルスの痕跡は見られず、損傷はウイルスの直接的な攻撃が原因でないことを示唆しています。研究結果は「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に投書として発表されました。

新型コロナウイルスに感染した患者の脳は、微小血管を損傷しやすい可能性があることが分かりました。我々の研究結果は、ウイルスに対する体の炎症反応によって引き起こされた可能性を示唆している」と、NIHの国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)の臨床主任でありこの研究の最終著者であるアビンドラ・ナス先生は語ります。「患者が苦しむ可能性のある全領域の問題を医師達が理解することに役立ち、より良い治療法を見つけ出せることを願っています。」

COVID-19は主に呼吸器系疾患ですが、患者は頭痛、せん妄、認知機能低下、目まい、疲労、嗅覚喪失などの神経系の問題をよく経験します。感染症は脳卒中や他の神経病理学的疾患の原因になる可能性もあります。感染症が炎症や血管損傷を引き起こしうることが、いくつかの研究で示されています。こうした研究の一つで、研究者達は一部の患者の脳に少量の新型コロナウイルスのエビデンスを見つけました。しかしながら、科学者達はまだどう感染症が脳に影響を与えるのかを理解しようとしているところです。

本研究では、2020年3月~7月にCOVID-19に罹って死亡した19人の患者の脳の組織検体を、徹底して検査しました。16人の患者の検体は、ニューヨーク市の検視局から提供され、他の3人はアイオワ市のアイオワ大学医学部病理学部から提供されました。患者は5~73歳までの幅広い年齢で、症状を訴えてから数時間~2ヶ月の間に死亡しました。多くの患者は、糖尿病、肥満、循環器疾患等のリスク要因を1つ以上抱えていました。患者のうち8人は自宅もしくは公共の場で死亡し、他の3人は突然に倒れて死亡しました。

「我々は非常に驚きました。当初は酸素欠乏が誘因となった損傷が見つかるだろうと思っていましたが、一般的に脳卒中や神経免疫系疾患に関連した多病巣領域に損傷を見つけました」とナス先生は語ります。最終的に研究者達は、新型コロナウイルスの遺伝物質や蛋白質を検出するために、いくつもの方法を用いたにも関わらず、脳の組織検体の中には感染が見られませんでした。

「これまでのところ、研究結果は我々が見つけた損傷は、新型コロナウイルスが直接脳に感染したことによって引き起こされたのではない可能性を示唆しています。将来、COVID-19が脳の血管にどうやって害を及ぼすのか、そしてそれによって患者に見られる短期的及び長期的症状の一部は生じているのかを、研究する計画です」とナス先生は語ります。

※英語の原文はこちらからご覧頂けます