20.10.30ElementalにCOVID-19とME

10月30日付のElementalに、「COVID-19のブレインフォグについての最新の科学的理論」と題する記事が掲載されました。サブタイトルは「新型コロナウイルスに対する免疫系の応答が、睡眠と覚醒のサイクルを混乱させる方法で脳の活動を変化させる可能性があると専門家は語る」

デトロイトに住むコリー・マクファーソン氏は、3月に新型コロナウイルスにかかり、36歳になった4月終わりには、急性期の症状からはほぼ回復したことは覚えていますが、その頃の多くのことは思い出せず、今でも多くのことを忘れます。COVID-19前は頭も切れ、ほぼ毎日運動し、健康でした。今では簡単な単語が思い出せなかったり、文章を終わらせることにも苦労する場合もあり、よく混乱します。「最初は回復中の一時的なものかと思ったのですが、もう6ヶ月たちますが、良くなっていません。」

「ブレインフォグ」という用語は明確に定義されていませんが、COVID-19感染後に多くの人が何か月も経験している神経症状のことを説明するために、ますます多くの専門家が使っています。記憶力と集中力の低下、頭の明晰さの欠如を指し、頭痛、質の浅い睡眠、不安、脳に根差すと思われる他の長引く症状も含みます。

Journal of Infectionに掲載された最近の研究では、120人のCOVID-19患者を退院後3ヶ月までの追跡調査したところ、約3人に1人が記憶喪失は持続的問題であり、28%は集中力低下があると答えました。

インディアナ大学の研究者が7月に発表した報告では、COVID-19にかかり数ヶ月後も健康問題を抱えている1500人以上の人々を調査しました。集中力低下と記憶力低下は、「COVID-19が長引いている人々」の中で最もよく見られる症状の一つでした。この報告の著者でありインディアナ大学医学部准教授のナタリー・ランバート博士は、さらに4000人の調査報告の準備をしていますが、「半分以上の回答者に集中力低下があり、39%には記憶力低下があると回答した」と語ります。現時点で、新型コロナウイルス感染者のどのくらいの人がブレインフォグや他の認知症状を発症するのかを推定するのは困難です。「感染者の中で入院するのは1%以下ですから、大部分の患者のデータを集めていないことになります。」

マサチューセッツ総合病院、ハーバード大学医学部、キングスカレッジ・ロンドンの研究者による、アプリを使った400万人以上の調査によると、だいたい20人に1人が感染8週間後にブレインフォグを含む持続的症状を経験しています。感染初期に多くの症状があればあるほど、ブレインフォグや他の持続的症状を発症する可能性があることが、調査で分かりました。また、年齢の高い人は「長引くCOVID」を発症する可能性が高い一方、18~49歳でも多いことも分かりました。ランバート博士は、「誰にでも起こりうることは明らかです」と語ります。

「ウイルスへの応答において免疫系が過剰に反応すると、脳内でサイトカインが急増し、あらゆる種類の害が及ぶ可能性があります」と、デポール大学臨床心理学教授で、コミュニティーリサーチ・センター長であるレオナード・ジョンソン博士は語ります。「免疫系がやられると、脳に構造的な損傷が起きます。」ジェイソン博士はME/CFS の研究をしており、ME/CFSの症状や経過は、COVID-19後症候群関連の症状や経過と非常に似ていると語ります。

Nature Reviews Neurologyというジャーナルの研究では、サイトカインとそれと関連する免疫活動が、どのようにCOVID-19患者の脳内で有害なほど高レベルの炎症の誘因となるかを説明しています。また、最初は気付かれないものの、認知機能の損傷や破壊の原因となる軽度の脳卒中のきっかけとなる可能性があります。

ウイルスが血球や血管に感染しうるというエビデンスがあり、これが体中を動き、脳を含む臓器に合併症を引き起こす一つのルートかもしれないと、研究者達は語ります。

「私達は特に脳波を調べ、脳波がウイルス感染後の病気の多くの問題の原因となっているのかを明らかにしようとしています。また、ニューロンを見て、ニューロンがどうやって互いにコミュニケートするのかを調べています」とジェイソン博士は語ります。「新型コロナウイルスに対する免疫応答が睡眠と覚醒のサイクルを混乱させる方法で脳の活動を変化させる可能性があります。夜に脳がさらに過活動になり、日中は徐波になるのかもしれません。」この種の調節異常が、「長引くCOVID」の人々のブレインフォグや他の脳に関連する症状を説明できる可能性があります。

「ブレインフォグや記憶力低下、神経系の調節異常を、どうやって治療したら良いかまだ分かりません」と、ランバート博士は語ります。予後を語るには、現時点では分からないことが多すぎます。ランバート博士や他の専門家は、こうした症状のある人々は、精神的なサポートが必要であると語ります。「家族や医師さえも信じてくれず、それは精神的に破壊的だと患者達は話しています。」 ジェイソン博士も同感です。「こうした症状のある多くの人々の周りには、彼らを疑ったり、なぜ仕事をしないのか、なぜ子供の面倒を看ないのか、どうして昔のような意欲がないのかといぶかる人々がいます。そして汚名を着せられたように感じてしまい、それは非常に有害である可能性があります。」 

※英語の原文はこちらからご覧頂けます