20.10.26「難病と在宅ケア」に理事長の記事

日本唯一の難病専門誌「難病と在宅ケア」11月号の「写真紹介」のコーナーに、「COVID-19後にME/CFS患者急増を懸念」と題して、多くの写真と共に記事を掲載して頂きましたので概要を紹介致します。

「難病と在宅ケア」の編集委員は、国立精神・神経医療研究センター理事長、日本医師会会長、日本看護協会会長、日本薬剤師会会長、全日本病院協会会長、聖隷クリストファー大学教授です。
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篠原三恵子
私は1990年に、米国留学中にME/CFSを発症しました。ME/CFSはWHOで神経系疾患と分類されている神経免疫系の難病で、2014年の厚生労働省の実態調査で、約3割が寝たきりに近い重症患者であるという深刻な実態が明らかになっています。

【神経難病としての研究】
2010年に患者会を立ち上げ、2012年にNPO法人となりました。2011年には世界で最も信頼されているカナダの診断基準を訳すなど、海外の最新情報を翻訳してME/CFSの正しい認知を広める活動をしています。

当法人では神経難病としてME/CFSを研究して下さる先生を探していましたが、日本神経学会学術大会に患者会ブースを出展したことがきっかけとなり、2015年より国立精神・神経医療研究センター神経研究所において、本格的な研究を開始して頂くことができました。現在はAMEDに2つの研究班があり、指定難病に向けた研究が進んでいます。

【COVID-19とME/CFS】
現在、COVID-19が世界的に蔓延しています。ME/CFSの流行は、歴史的にウイルス性の集団発生後に起きており、COVID-19がME/CFSの引き金になり患者が多発する可能性があると、多くの専門家は警告しています。

米国国立アレルギー・感染症研究所所長であるファウチ博士が、COVID-19後に長引く症状は筋痛性脳脊髄炎の症状に似ていると発言したことがCNNニュースで取り上げられ、広くこのことは認知されるようになりました。COVID-19とME/CFSに関する情報は、当法人のHP「COVIDとME」をご覧下さい。

当法人では「ME/CFSとCOVID-19の研究促進を求める要望書」を提出し、7月に厚生労働省より、「COVID-19を契機としてME/CFSを発症するとの報告を承知している」「COVID-19とME/CFSの関連について注視して参りたい」とする、前向きな回答を頂きました。米国ではすでに国立衛生研究所(NIH)、スタンフォード大学、コロンビア大学、イェール大学等でCOVID-19とME/CFSの研究が開始されています。

【アンケート調査】
日本でもCOVID-19後にME/CFSを発症する可能性を調べるために、当法人ではアンケート調査を実施しました。当初はPCR検査陽性の方のみが対象でしたが、PCR未検査の方や、PCR検査陰性だったけれども体調不良が続いているという声が多く寄せられ、アンケートの対象に含めました。回答者は、PCR検査陽性の方が27名、陰性の方が82名、未検査の方が217名、合計326名でした。

ME/CFS様の症状を呈した人は全体の27.9%(91人)で、PCR検査陽性の方が6名、陰性の方が26名で、未検査の方が59名で、その後の専門医によるZOOM面談や実際の診察を経て、4人(陽性1名、未検査3名)の方に確定診断がおり、日本においてもCOVID-19後にME/CFSを発症することが確認されました。また、回答者全体の40.5%が「仕事(学校)に戻ることができない」、12.6%が「寝たきりに近い」と回答しており、多くの方が生活に著しい支障をきたしていることも分かりました。

COVID-19後にME/CFSを発症したばかりの症例を研究することができれば、発症のメカニズムを解明するのに非常に役立ちます。また、ウイルス感染後に発症することが証明できれば、ME/CFSの原因・病態解明、診断基準作成、治療薬開発などの研究が進む可能性が大きいです。

【PCR検査で陽性を得られなかった人々】
調査結果を三つの患者グループで比較した時に、ME/CFSの発症率や生活の困難さにおいて有意な差は認められませんでしたし、未検査の方の98%が、検査を受けたくても受けられなかったことも分かりました。日本においてPCR検査が諸外国に比べ抑制されていたことを鑑みると、検査で陽性の結果が得られなかったからといって、COVID-19の症状ではないと切り捨てるべきではないと思います。

PCR未検査や陰性の方も、ME/CFSに似た症状を訴える方が多く、こうした患者さん達を対象とした研究も行われるように願わずにはいられません。新型コロナウイルスについては、多くのことが分かっていませんので、あらゆる方面からの研究が必要であると改めて感じています。