20.9.11WIREDにCOVID-19とME

9月11日付のWIRED(ワイアード:米国の雑誌)に、「正式にCOVID-19に罹ったとは認められず、数ヶ月後は地獄の生活」と題する記事が掲載されました。サブタイトルは「3月に具合が悪くなった人達が、生活を制限する症状でまだ苦しんでいる。多くはCOVID-19検査で陽性が得られず、奇妙で苦痛な忘却の彼方に置かれている」

COVID-19が「長引いている人々」がどのくらいいるのか、誰にも分かりません。キングス・カレッジ・ロンドンの症状の追跡研究のデータによると、10人に1人は3週間後にまだ症状があることを示唆しています。イタリアの患者の小規模の研究では、COVID-19で入院した87%の患者は、発症して60日後にも様々な症状を経験していることが分かりました。ドイツの別の研究では、最初に診断されてから2、3ヶ月後にフォローアップした患者の78%に、心臓のCTスキャンで異常があることが分かりました。一方、英国医師会は、3人に1人の医師が長期にわたるCOVID-19症状のある患者を治療したことが分かりました。

ポートランド市の54歳のマクロウさんは、ウイルスの検査を一度も受けたことがなく、そもそもCOVID-19に罹っていたと納得させるのが困難で、COVID-19の確定症例とはみなされません。多くのCOVID-19の「長引いている人々」は同様の状況に置かれています。

5月に患者主導の調査チームによる、長期的なCOVID-19の症状のある640人の調査結果が発表されました。23.1%の回答者しか検査結果が陽性だった人はおらず、27.5%は陰性で、残りの47.8%の方はそもそも検査を受けていません。3月中旬に多くの「長引いている人々」が発症した時、検査は十分でなく、入院しない患者は多くの場合、ウイルスにかかったかどうかを確定する鼻腔拭い液検査を受けずに、自己隔離するために自宅に帰されました。

イギリスでは3月12日に政府が、広く地域社会全体を対象とした検査を制限しました。症状のある人が鼻腔拭い液検査を受けられるようになったのは5月18日でした。こうした検査は、検査時にCOVID-19に罹っていたかを知ることしかできず、最初の症状が出てから3日頃に受けると最も正確です。多くの「長引いている人々」が検査を受けた時(発症してから数週間か数ヶ月後)には、検査は陰性であることが多かったのです。

新型コロナウイルスに暴露されたかどうかを検出できるはずの抗体検査も、完全に信頼できる訳ではありません。COVID-19の抗体検査は、擬陽性の結果を避けるよう調整されていることが多く、抗体が低閾値の患者は検査で全く見過ごされる可能性があります。新型コロナウイルスの特定部位に特異的な抗体を見過ごす検査もあり、COVID-19の抗体がある人でも、検査で捉えられる種類の抗体でない可能性があります。

悩ます体に閉じ込められながらも、COVID-19が「長引いている人々」は、信じてもらうために闘うエネルギーを見つけなければなりません。私がこの記事のために話した「長引いている人々」は、誰も入院するほど重症ではありませんでしたが、全員が様々な症状のために生活が完全に狂わされていました。

この国のパンデミックの対応で最も有害な重大ミスの一つは、何千人もの長期のCOVID-19患者に疑いと不信という余分な重荷を負わせたことです。人口知能の会社を運営するメルビルさんは、「私を含め『長引いている人々』のほとんどは入院しなかった、又は検査が陰性、又は抗体検査が陰性だと思います」と話します。彼女が検査できた時には発症から65日たっており、検査は陰性でした。多くの「長引いている人々」のように、彼女も同じ状況に置かれた人々のための代弁者になりました。他の患者たちは、極度の疲労を含む長期のCOVID-19の症状のいくつかが共通である、長期に及ぶ病気である慢性疲労症候群と最終的に分類されることを願って踏ん張っています。

5月にNHS(英国の国民健康保険)は、COVID-19患者のためにリハビリテーション・センターを開設しましたが、入院した患者が主に使っています。9月7日に英国政府は、軽症の新型コロナウイルス患者の約10%は4週間以上様々な症状を経験していることを認める声明を発表しましたが、医師や地域医療従事者向けのNHSのガイダンスは、COVID-19患者で退院した人々だけを紹介します。COVID-19から回復中の患者にアドバイスをするNHSのHPがありますが、症状の管理についてのアドバイスがほとんどで、この感染症の長期的経過についての情報はほとんどありません。

科学者達は何十年も前から、ウイルスが人間の体を長期にわたって荒らす可能性があることを知っていましたが、その方法はほとんど理解されないままでした。ウイルス感染後症候群は歴史的に軽くあしらわれ見過ごされてきました。トロントの22人の慢性的に具合の悪いSARS患者の一つの研究では、ウイルス感染から20ヶ月たっても、1人を除いて元の仕事に戻れた人はいませんでした。107人のトロントのより大きい研究では、発症して1年後に87%の人にまだ症状が残っており、17%が仕事に全く戻れていなかったことが分かりました。

米国国立衛生研究所(NIH)・国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)の神経学者であるアビンドラ・ナス先生は、感染症がどのように脳に影響を与えるかを理解することが専門です。COVID-19のパンデミックが定着すると、ブレインフォグ(脳に霧がかかったようで頭が働かない)、筋肉のちくちくする痛み、睡眠障害などの長期的な神経系の合併症を訴える大量のメールを受け取りました。「我々はそれが起きることを予期していました。一定の割合の感染症患者は、ME/CFSと呼ばれる症候群を発症し、ほぼすべてのウイルス感染症において起こります」と彼は語ります。「多くの人に影響を与えますので、こうしたウイルス感染後症候群を訴える人がかなりいても驚くことではありません。」

なぜ感染症がこうした長期的症状を引き起こすのかは分かりませんが、感染時に免疫系の働きが高まり、完全に静まらないというのが一つの仮説です。ナス先生は、闘い続け、敵がいなくなったら、その代わりに自分達の兵隊を殺してしまう軍隊になぞらえます。なぜウイルス感染後症候群患者は多岐にわたる症状を呈するのかを説明できる可能性がありますが、こうした反応を起こす方がなぜいるのか、また中には比較的短期間の病気を経験するのかは説明できません。

ナス先生は、COVID-19が人間の脳に与える長期に及ぶ影響を探究するために、2つの研究を実施しています。一つの研究には、発症時に神経系の症状があった人々を含み、もう一つの研究では長期に及ぶ症状に苦しむ人々を研究します。参加者はクリニックに2,3日入院し、胸の検査、MRI、神経機能障害の検査を受けます。研究は抗体検査、あるいは鼻腔拭い液検査でCOVID-19陽性だった人に限ります。検査で陽性でなかった「長引いている人々」が、臨床試験に参加することができないことは、欲求不満のもう一つの原因です。

イギリスでは一握りのグループが、COVID-19の長期的影響を探究し始めました。ノッティンガム医科大学のシャーロット・ボルトン先生は、COVID-19で退院した患者の研究を主導していると、発症後数ヶ月しても具合が悪い患者が殺到している一般開業医からの電話を受け始めました。「多くの患者は、重度の疲労、息切れ、不安、体重の減少などの、本当に深刻な症状を訴え、仕事に戻ることができません。」

長期にわたるCOVID-19に対する認知は、患者たち自身の精力的な権利擁護活動によるところが大きいです。イギリスが本拠地のグループLongCovidSOSは、キャンペーンを指揮して政府に手紙を送り、COVID-19の研究を委託し、患者へのより良いケアを構築するよう力説しました。メッセージは届いているようで、9月8日に保険医療相のマット・ハンコック氏は、若者がこのウイルスをもっと深刻にとらえるべき理由として、長期に及ぶCOVID-19について言及しました。「若者はこの感染症で死ぬ確率は低いと論説しますが、若者は体を衰弱させる長期的影響を受ける可能性があります」と、国会で語りました。

※英語の原文はこちらからご覧頂けます