20.9.14COVID-19後遺症のアンケート最終報告

日本においてもCOVID-19後の体調不良(後遺症)が続いている方が、ME/CFSを発症する可能性を調べ、COVID-19とME/CFSに焦点を絞った研究の早期開始を促すデータを提供するために、当法人ではアンケート調査を実施し致しました。8月23日に中間報告を発表しましたが、この度、最終報告がまとまりました。

アンケート調査は5月31日よりウエブ上で開始し、当初はPCR検査陽性の方のみを対象としていましたが、PCR検査を受けられなかった方や、PCR検査陰性だったけれども体調不良が続いているという声が多く寄せられ、7月初めよりPCR検査が未検査の方や陰性の方も対象に含めました。8月末日にアンケートを締め切り、回答者は、PCR検査陽性の方が27名(全体の8.3%)、陰性の方が82名(全体の25.2%)、未検査の方が217名(全体の66.6%)、合計326名でした。

日本でもCOVID-19後にME/CFS発症する可能性を確認
326人の回答者の内、ME/CFS様の症状を呈した人は全体の27.9%(91人)でした。PCR検査陽性の方が6名(陽性患者全体の22.2%)、陰性の方が26名(陰性患者全体の31.7%)で、未検査の方が59名(未検査患者全体の27.2%)で、3つの患者グループにおいてME/CFS様症状を呈した患者の割合に、大きな差は認められませんでした。その後の専門医によるZOOM面談や実際の診察を経て、3名(未検査)の方がME/CFSの確定診断を受け、日本においてもCOVID-19後にME/CFSに移行する可能性が明らかになりました。この3名の内のお2人はご夫婦で、2月に旅行した際、宿泊したホテルにたくさんの中国の方がおり、レストランで隣に座った方が咳をしていたそうで、次の日には微熱や咳などの症状が出現。8月にME/CFSの確定診断を受けました。

陰性の方の割合が少し高い傾向がありますが、陰性の方の中には偽陰性であった方が含まれ、PCR検査で偽陰性の結果が出る割合は2~3割とも言われていることを考慮すれば、陽性者より陰性者の方がME/CFSの症状を呈している方が多くても不自然ではありません。初めて症状がでてからPCR検査を受けるまでの期間を尋ねたところ、平均は41.9日後で、2ヶ月後であった方が23名、中には5ヶ月後という方もおり、発症から10日以内にPCR検査を受けられたのは14人にすぎませんでした。

未検査の方(未回答の方4名を除く213名)にPCR検査を受けられなかった理由(複数回答あり)を尋ねたところ、自己都合で検査を受けなかった4人を除く209人(98%)の方が、「熱が37.5度以下」「保健所に拒否」「渡航歴がなく濃厚接触者でない」「医師による判断」「CT・レントゲン・血液検査で異常なし」「肺炎症状なし」「(医療機関不明)拒否された」等の理由により、検査を受けたくても受けられなかったことが分かりました。

後遺症に苦しむ方々の深刻な実態
回答者全体の40.5%(132人)が「仕事(学校)に戻ることができない」、11.3%(37人)が「身の回りのことができない」、12.6%(41人)が「寝たきりに近い」、3.7%(12人)が「基本的動作(飲み込みや歩くなど)を学習する必要がある」と回答しており、多くの方が生活に著しい支障をきたしている深刻な実態が明らかになりました。グラフ深刻な状況の

自由回答欄に寄せられた切実な声
・体調が悪く、病院に行っても治療法がない。医師は感染症の後遺症に理解がなく、若いから大丈夫などの無責任な対応をされる。体調不良で仕事も退職し、いつ復帰できるか分からない。同居の妹も私よりひどい症状で仕事を辞め、療養している。
・複数の医療機関でのあらゆる検査で異常なしなので、治療がはじまらない。
・辛いのに誰にも取り上げられず、話題にもしてもらえず、治療もしてもらえない。同じ症状の人が何万人もいるのに、見殺しにしようとしている。
・ほとんどの症状が2月から続いて、普通の生活もできず、学校へも行かれない。
・保健所にPCR検査を断られ、罹患証明ができず、保険請求もできず、金銭的に困難で、いつ元の生活に戻れるかが分からず、精神的に不安定。
・倦怠感が強く、長時間歩くことができず、息も切れてしまうのでスーパーにも行かれない。
・急に不安な気持ちになって震えたり涙が出たりする。
・微熱が5ヶ月たっても平熱にもどらず、この先どうなるのか不安。

PCR検査陰性の方や未検査の方から伺った感染経路と思われるエピソード
・上司が2月にヨーロッパ旅行から帰って来て高熱があるのに職場で働いていた
・団体の中国人観光客と空港の喫煙待合室で一緒だった
・1月~2月中旬に子供の学校のクラス(中国の同級生が数人いる)で体調不調の生徒がたくさんおり、「よくわからないけど怠い」「動くのがしんどい」「頭が痛い」と言いながら学校に来て、体がきつく授業中に寝ていた子や早退を繰り返す子、何度もトイレに駆け込む子がいた。両親も体調不良。
・同居の姉が陽性だったのに自分はすぐにPCR検査を受けられず、数ヶ月後に受けたら陰性だった
・職場の前の席の人がずっと咳をしていて体調不良で何週間も休んでいたら、自分も同じ症状が出た。
・2月の大阪のライブハウスのクラスター後に、大阪の友人と一緒に鍋を囲んで食事をした。

一日も早く研究体制の構築を!
世界の多くの専門家の警告通り、日本においてもCOVID-19後にME/CFSを発症する可能性が確認されました。感染症の収束の見通しはたっておらず、今後さらにME/CFSを発症する方が増加することが予想されます。早期に診断し治療につなげることで、重症化を防ぐことができますので、一日も早く診療体制を整備することが急務です。そのためには、COVID-19後にME/CFSを発症する可能性があることを、広く医療関係者に周知する必要もあります。

急性のCOVID-19から回復された方の中で、どういった方がME/CFSを発症し、どういった方が同じような症状を呈していてもME/CFSを発症しないのかを研究することができれば、発症のメカニズムの解明の研究のために大いに役立ちます。また、ウイルス感染後に発症することが証明できれば、ME/CFSの原因・病態解明、診断基準作成の研究に大いに進む可能性があり、このまたとない機会を逃すことなく、早期に研究体制を構築することが非常に大事です。

アンケート調査を開始するまで、PCR検査が抑制されたことにより、日本でどんな影響が出ているのかについて、当法人でも気付いていませんでした。陽性の方は、少なくとも精神的なものと言われることもなく、ある程度の治療が受けられますが、COVID-19にかかってもPCR検査すら受けられなかった方たちは、治療の面でも精神的な面でも、違う意味でより困難な状況に追いやられていると言えると思います。こうした問題を解決するためには、PCR検査を希望する全ての人が検査を受けられるよう、検査体制の拡充が大事だと考えます。

このアンケート調査に、PCR未検査の方や陰性の方を含めましたので、COVID-19でない方も含まれた可能性は否定できません。しかし、調査結果を比較した時に、ME/CFSの発症率や生活の困難さにおいて有意な差は認められず、日本においてPCR検査が抑制されていましたし、PCR検査のタイミングが遅れた影響も大きいことから、検査で陽性の結果が出なかったからといって、COVID-19の症状ではないと切り捨てるべきでないと考えます。COVID-19患者の実態調査をする際に、PCR検査陽性の方に限定してしまうことで、かえって重要な情報が失われる可能性があると思います。

PCR検査と抗体検査の問題
パンデミック初期においてPCR検査が不足していたために、検査を受けられずにCOVID-19の後遺症が続いている多くの人がいる問題は、アメリカにおいても問題化してきました。中には、後に受けた抗体検査において陰性の結果が出た方も多くいることが分かってきました。

新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査に関して、その正確性を裏付ける質の高いエビデンスはほとんどなく、特に検査室外で実施するタイプの検査についてはエビデンスが弱いとする研究結果が、カナダのマギル大学ヘルスセンターのバストス氏らにより「BMJ(英国医師会の医学雑誌)」7月1日付けオンライン版に報告されました。日本におけるPCR検査数は、今でも国際的に非常に低いことを鑑みると、抗体検査陰性の結果をもってして、COVID-19に感染していなかったと判断することはできないと思います。

後遺症外来と社会保障の必要性
アンケート調査にも、後遺症の診療体制を求める声が多く届いており、海外においてすでに取り組みが始まっています。そして、回答者の約4割が仕事・学校に復帰できないと回答していますので、それに対する社会保障の必要性も明らかになりました。全ての後遺症に対する治療薬ができるまでには時間がかかるでしょうから、診療体制と社会保障を整備することが求められます。その場合には、PCR検査陽性の方だけではなく、全てのCOVID-19患者を対象とすることができるよう、柔軟な対応を願います。

このアンケート調査はインターネット上で実施されたため、アンケートにアクセスできた方は限定的であることを付け加えます。最後に、アンケートにご協力頂いた皆様に心から感謝致します。

※アンケートの最終報告の全文はこちらからご覧頂けます