20.7.8医療NEWSにNCNPの論文の記事

7月8日付けのLifePro医療NEWSに、「原因不明で症状が多様、診断がつかないケースも多い」と題して、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は7月3日、ME/CFSの自律神経受容体に対する自己抗体に関連した脳内構造ネットワーク異常を明らかにしたことが取り上げられました。これは、同センター病院放射線診療部の佐藤典子部長、神経研究所免疫研究部の山村隆特任研究部長らの研究グループによるもので、研究成果は「Journal of Neuroimaging」に掲載されました。

発熱、咽頭痛、下痢など風邪でみられる症状の後に発症することが多いことから、さまざまなウイルスが引き起こす疾患であることが共通認識になっています。一方、脳画像研究によって脳内炎症が認められるという報告や、免疫系の異常を示す論文、免疫療法の有効性を示す医師主導治験の結果など、新しい知見が報告されています。

ME/CFSは、診断がなかなかつかないケースが多いのが実情。患者によって症状の組み合わせが異なること、病院で受ける血液検査や脳画像検査では異常が出ないことなどがその理由です。

研究グループは、AMEDの研究班「ME/CFSに対する診療・研究ネットワークの構築(研究代表者:山村隆)」にて、ME/CFS診療を行っている内科医との連携を構築し、神経研究所免疫研究部と病院放射線診療部が連携して免疫学的解析・脳画像解析を進めています。先行研究において、右上縦束の異常を検出し、ME/CFSの症状である脳内処理作業やワーキングメモリの機能低下の原因である可能性を示しています。

そこで、ME/CFS患者の脳内構造ネットワーク異常と抗自律神経受容体受容体抗体価との相関を調べ、抗自律神経受容体受容体抗体がME/CFS患者の脳にどのような影響を与えているのかを調べました。その結果、抗β1アドレナリン受容体自己抗体価と右背外側前頭前野の媒介中心性との間に正の相関、抗β2アドレナリン受容体自己抗体価と右中心前回の特徴的経路長との間に負の相関を認めました。

背外側前頭前野は、注意力やワーキングメモリに関与する他、痛みの調整も担っています。つまり、抗β1アドレナリン受容体自己抗体は右背外側前頭前野に微小な構造変化を引き起こし、注意力やワーキングメモリの低下、痛みの調整の異常をきたしている可能があります。背外側前頭前野は、上縦束が投射する部位であり、先行研究で示された右上縦束の異常に密接に関連していると考えられました。また、特徴的経路長の減少は、持続的な痛みによる中心前回の活性化を反映していると考えられ、その原因として抗β2アドレナリン受容体自己抗体の存在が考えられました。

今回の研究から、抗β1および抗β2アドレナリン受容体抗体が、ME/CFS患者の痛みを始めとするさまざまな症状を説明しうる脳内の特定の部位の異常と結びついていることが明らかとなりました。一方で、自己抗体が脳内異常を引き起こすメカニズムについては今後の検討が必要です。

研究グループは、「ME/CFSにおいて右上縦束の重要性がさらに確実になったことで、将来、脳画像解析がME/CFSの診断に活用されることが期待される。また、この自己抗体が新たな血液診断バイオマーカーの一つとなる可能性もある。この自己抗体を除去する、あるいは産生を減少させる治療法が、抗体価の高い患者に有効な可能性も考えられる」と、述べています。