20.8.23COVID-19後遺症のアンケートの中間報告

COVID-19がME/CFSの引き金になる可能性があると多くの専門家は警告しており、欧米ではすでにCOVID-19とME/CFSに焦点を絞った研究が開始されています。

日本においてもCOVID-19後の体調不良(後遺症)が続いている方が、ME/CFSを発症する可能性を調べ、COVID-19とME/CFSに焦点を絞った研究の早期開始を促すデータを提供するために、5月31日よりウエブ上でアンケート調査を開始しました。当初は、PCR検査陽性の方のみを対象としていましたが、PCR検査を受けられなかった方や、PCR検査陰性だったけれども体調不良が続いているという声が多く寄せられ、7月初めよりPCR検査が未検査の方や陰性の方も対象に含めました。

アンケートの締め切りは8月末日ですが、早期の研究開始を求めるため、7月22日までに寄せられた回答を基に、中間報告をまとめました。7月22日時点での回答者は、PCR検査陽性の方が17名(全体の7%)、陰性の方が57名(全体の23%)、未検査の方が171名(全体の70%)、合計245名でした。

日本でもCOVID-19後にME/CFS発症する可能性を確認

245人の回答者の内、ME/CFS様の症状を呈した人は全体の23%(57人)でした。PCR検査陽性の方が4名(陽性患者全体の24%)、陰性の方が16名(陰性患者全体の28%)で、未検査の方が37名(未検査患者全体の22%)で、3つの患者グループにおいてME/CFS様症状を呈した患者の割合に、大きな差は認められませんでした。その後の専門医によるZOOM面談や実際の診察を経て、2名(未検査)の方がME/CFSの確定診断を受け、日本においてもCOVID-19後にME/CFSに移行する可能性が明らかになりました。

発症初期に神経症状(めまい、頭痛、意識障害、急性脳血管障害、運動失調症、けいれん発作、味覚障害、嗅覚障害、視覚障害、神経痛、肉離れや筋肉痛)が出たかどうかを尋ね、症状の数を集計したところ、陽性の方、陰性の方、未検査の方のいずれにおいても、ME/CFS様症状を呈している方のほうが、2倍近い症状が出現したと回答しており、COVID-19後にME/CFSを発症する方は、発症初期においてより多くの神経症状が出現することを示唆していると考えます。

後遺症に苦しむ方々の深刻な実態

回答者全体の36.3%(89人)が「仕事(学校)に戻ることができない」、11.0%(27人)が「身の回りのことができない」、10.6%(26人)が「寝たきりに近い」、2.9%(7人)が「基本的動作(飲み込みや歩くなど)を学習する必要がある」と回答しており、生活に著しい支障をきたしている方が多くいるという深刻な実態が明らかになりました。

今困っていること

自由回答欄に寄せられた切実な声

・体調が悪く、病院に行っても治療法がない。医師は感染症の後遺症に理解がなく、若いから大丈夫などの無責任な対応をされる。体調不良で仕事も退職し、いつ復帰できるか分からない。同居の妹も私よりひどい症状で仕事を辞め、療養している。
・医師が最新情報を知らず、精神的問題だと言われ、満足な医療を受けられない。
・体調が優れないせいで職場復帰できず、それに対して理解を得られない。
・ほとんどの症状が2月から続いて、普通の生活もできず、学校へも行かれない。
・保健所にPCR検査を断られ、罹患証明ができず、保険請求もできず、金銭的に困難で、いつ元の生活に戻れるかが分からず、精神的に不安定。
・微熱が5ヶ月たっても平熱にもどらず、この先どうなるのか不安。

PCR検査陰性の方や未検査の方から伺った感染経路と思われるエピソード

・上司が2月にヨーロッパ旅行から帰って来て高熱があるのに職場で働いていた
・2月に宿泊したホテルにたくさんの中国の方がおり、レストランで隣に座った方が咳をしていた
・団体の中国人観光客と空港の喫煙待合室で一緒だった
・1月~2月中旬に子供の学校のクラス(中国の同級生が数人いる)で体調不調の生徒がたくさんおり、「よくわからないけど怠い」「動くのがしんどい」「頭が痛い」と言いながら学校に来て、体がきつく授業中に寝ていた子や早退を繰り返す子、何度もトイレに駆け込む子がいた。両親も体調不良。
・同居の姉が陽性だったのに自分はすぐにPCR検査を受けられず、数ヶ月後に受けたら陰性だった。

一日も早く研究体制の構築を!

世界の多くの専門家の警告通り、日本においてもCOVID-19後にME/CFSを発症する可能性が確認されました。感染症の収束の見通しはたっておらず、今後さらにME/CFSを発症する方が増加することが予想されます。早期に診断し治療につなげることで、重症化を防ぐことができますので、一日も早く診療体制を整備することが急務です。そのためには、COVID-19後にME/CFSを発症する可能性があることを、広く医療関係者に周知する必要もあります。

急性のCOVID-19から回復された方の中で、どういった方がME/CFSを発症し、どういった方が同じような症状を呈していてもME/CFSを発症しないのかを研究することができれば、発症のメカニズムの解明の研究のために大いに役立ちます。また、ウイルス感染後に発症することが証明できれば、ME/CFSの原因・病態解明、診断基準作成の研究が大いに促進される可能性があり、このまたとない機会を逃すことなく、早期に研究体制を構築することが非常に大事です。

アンケート調査を開始するまで、PCR検査が抑制されたことにより、日本でどんな影響が出ているのかについて、当法人でも気付いていませんでした。陽性の方は、少なくとも精神的なものと言われることもなく、ある程度の治療が受けられますが、COVID-19にかかってもPCR検査すら受けられなかった方たちは、治療の面でも精神的な面でも、違う意味でより困難な状況に追いやられていると言えると思います。こうした問題を解決するためには、PCR検査を希望する全ての人が検査を受けられるよう、検査体制の拡充が大事だと考えます。

このアンケート調査に、PCR未検査の方や陰性の方を含めましたので、COVID-19でない方も含まれた可能性は否定できません。しかし、調査結果を比較した時に、ME/CFSの発症率や生活の困難さにおいて有意な差は認められず、日本においてPCR検査が抑制されていましたし、偽陰性も広くみられることから、検査で陽性の結果が出なかったからといって、COVID-19の症状ではないと切り捨てるべきであるとは考えません。COVID-19患者の実態調査をする際に、PCR検査陽性の方に限定してしまうことで、かえって重要な情報が失われる可能性があると思います。

このアンケート調査はインターネット上で実施されたため、アンケートにアクセスできた方は限定的であることを付け加えます。最後に、アンケートにご協力頂いた皆様に心から感謝致します。

8月23日にアンケート調査の中間報告を厚生労働省の難病対策課に送り、その晩の内に受け取った旨のお返事を頂きました。

※アンケートの中間報告の全文はこちらからご覧頂けます