20.8.11NeurologyにCOVID-19とMEの論文

8月11日付けの米国神経学会誌Neurology(神経学)に、米国国立衛生研究所(NIH)・国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)の主任研究員であるアビンドラ・ナス先生による、「長引く新型コロナウイルス感染症」と題する、COVID-19とMEに関する論文が掲載されましたので、一部を紹介します。ナス先生はNIHにおけるウイルス感染後ME/CFSの包括的研究の主任研究者です。

急性期のCOVID-19から回復した患者の多くに、様々な症状が持続していることが明らかになってきている。これには思考力低下、睡眠障害、運動不耐症、自律神経症状(軽度の運動や起立時の頻脈、寝汗、体温調節異常、胃不全麻痺、便秘/軟便、末梢血管収縮)を含み、持続的な微熱やリンパ節腫脹を訴える患者もいる。こうした患者に関する査読付き論文は現在、まだ存在しないが、この病態については多くの新しい記事が書かれており、数千人の患者によるフェイスブックのグループが、これらの症状について報告している。これらの患者の中には、パンデミック初期に大量のウイルスに暴露された医療従事者も少なくなく、「100日間以上」続く症状と表現している。

これらの患者のほとんどは、新型コロナウイルスに感染するまでは良好な健康状態で、急性期には全員に数えきれないほどの症状があった。熱や呼吸器症状が良くなるにつれ、全身性の持続的症状の中には徐々に良くなる症状もあったが、全ての症状がそのような経過をたどる訳ではなかった。急性感染症からはほぼ回復したのに、数日後には多くの症状が出現し、今も継続していると感じている患者や、中には症状が良くなったり悪くなったり、数日間隔で繰り返していると述べる患者もいる。

肺の症状のために病院に入院する患者もいたが、大多数は自宅で隔離された。検査や医療は限られていた。中には内科医や感染症の専門医、循環器専門医、呼吸器内科専門家などから広範な検査を受けた患者もいたが、症状を説明するものは何も見つからず、「機能性」と片付けられることもあった。これらの症状の多くはME/CFS患者の症状と重なる。

他の原因の可能性(根本に潜む合併症を明らかにする、急性感染症の後遺症的損傷、持続的ないし限定的なウイルスの複製、持続的な免疫活性化など)を探求してからでなければ、ME/CFSにかかっていると早合点しないように、気を付ける必要がある。

ME/CFSの原因は、何十年に及ぶ研究にも関わらず分かっていない。ME/CFS患者の多くは似たように、きっかけはウイルス感染であったと報告するが、症状が発症してから何年もたってから我々が知ることが多く、様々な症状の引き金となったかもしれないものが何であるかを知ることは不可能である。それゆえ、「長引くCOVID」は、ME/CFSの病態生理を研究し、そうすることでより広範な研究へとつながる可能性を秘めた素晴らしい機会である。

これまでのところ、ウイルスが脳において広範囲に感染しているという確かなエビデンスはない。脳脊髄液と脳においてウイルスは非常にまれな症例で検出されたに過ぎないが、広範囲のグリア細胞活性化のエビデンスが報告されており、代謝機能障害や末梢における重度で広範囲な免疫活性化と関連している可能性がある。また、特定の免疫応答が脳と自律神経の特定の領域を標的にしている可能性もある。作動している主な根本的な病態生理学的メカニズムに応じた、的を絞った治療が可能になるかもしれない。

様々な症状の多くは本質的に神経系の症状であるから、COVID-19が長引いている人々の管理には、神経学者達が役割を果たすだろう。調査し治療するために、臨床症状を注意深く記録することが重要であり、必要に応じて、この疾患の生物学的基板を見極めるために、研究を行う必要がある。「長引くCOVID-19」は我々の使命であるから、先頭に立つべきである。国立衛生研究所の所内プログラムにおける研究など、症状が持続しているこれらの患者を前向きにフォローするための様々な取り組みが進行中である。こうした取り組みを実施するにあたり、この病気を研究・治療するのではなく、この病気にかかっている患者を研究・治療すべきであることを忘れないことが重要である。そうして初めて、患者たちがタイムリーに安らぎを見出すことを望みうる。

※英語の原文はこちらからご覧頂けます