20.7.24Yahoo NewsにCOVID-19の後遺症

7月24日にJBpressに、「軽症者も苦しむ新型コロナの後遺症」と題する記事が掲載され、Yahoo Newsでも取り上げられました。自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長は、軽症でも普通の生活になかなか戻れないと警鐘を鳴らしていることが取り上げられました。

イタリアでの新型コロナ感染症の後遺症に関する報告によると、回復後(発症から平均2か月後)も87.4%の患者が何らかの症状を訴えているといいます。日本でも後遺症を示す事例の報告が相次いでいます。私はICUで新型コロナ感染症の重症患者を専門に診ているので、軽症・中等症の患者は診ていませんが、日本や世界で退院する患者が増えるにつれ、軽症・中等症でも一定数の患者が後遺症に苦しんでいることを知るようになりました。

30代の看護師は、4月上旬に感染しました。夜中に38度の熱が出た頃から、筋肉痛と倦怠感が顕著になり、匂いはまったく感じず、味もしなくなりました。熱が4日続いたので保健所に相談。近所の病院で肺炎が判明し、即入院、次の日にはPCR検査が陽性で、新型コロナ感染症専用病棟に移りましたが、エレベーターまで歩くのもたいへんで、この頃から、電気が走るような頭痛が。入院後3~4日は、午後に熱が38度近くまで上がり、トイレまで歩くと脈拍数が120~140、サチュレーションが80台に。サチュレーションは最悪時には70台まで下がり、必要に応じて酸素吸入。その後も、トイレに行くのさえ重労働で、シャワーを浴びると全身がチアノーゼになり、咳が止まらない、息も苦しいという症状が続きました。

10日目ぐらいに解熱し、呼吸もよくなってきたので、ホテルに移って療養。ホテルで約1か月療養しましたが、1日3回お弁当をロビーまで取りに行くだけでも息が切れ、体重は10キロぐらい減りました。なかなか陰性になりませんでしたが、45日目に自宅に。体調は徐々に回復してきて、体重も少しずつ増えましたが、今も喋り続けているだけで少し苦しくなります。新型コロナ感染症が発症してから3か月あまり経ちますが、体調はまだまだで、以前の6~7割というのが実感です。

この看護師は、3か月経過して、まだ完全回復とは言えない状態。少しでも動くと息切れし、チアノーゼが出たそうですから、相当、肺機能が落ちていたようです。深く息を吸えなかったと言っていることから、肺の浸潤が深刻で、酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなっていたのでしょう。新型コロナ感染症では、人工呼吸器やECMOを使用した場合が重症、この看護師のように一時的にでも酸素を投与した場合が中等症、それ以下の場合が軽症とするのが一般的です。筋力が低下したのは、からだが自ら筋肉を壊して病気と戦うエネルギーとしたからです

新型コロナ感染症は、陰性化するまでも長い時間がかかる例が多く、陰性化後もなかなか元に戻れない・治った後も生活に支障がある人が多いことが、今明るみに出てきています。重症感染症、SARS、MERSのデータによれば、特に重症の患者では肺機能の回復が思わしくなく、半年後もまだ人工呼吸器が必要、5年後も呼吸機能が元の80%までしか戻らない、などの報告があります。今後、後遺症がなぜ起こるか、特に軽症・中等症の患者で、どの程度の後遺症が、どれくらいの期間続くのか、それに対して我々急性期専門の医師ができることはないのかなど、明らかにする必要があります。

今のところ後遺症を起こす原因は3つに分けられるのではないかと考えています。
①サイトカインストーム、すなわち強い炎症によって、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓などの多臓器不全が起こる。従来から知られていたように各臓器のダメージが重いほど、やはり回復に時間がかかり、後遺症も重い。
②新型コロナ感染症の特徴と言ってもよい血栓症によって、たとえば血管が詰まり血が流れなくなります。また、脳梗塞の後遺症で、脳機能低下や心の不調が長引くこともあるかもしれません。
③新型コロナウイルスが、肺だけでなく、直接、脳・心臓・肝臓・腎臓に感染すること。たとえば匂いや味がわからなくなる、頭痛、ボーッとする、幻覚が起こる、痙攣が起こる、などは、脳への直接感染の証拠と考えられています。

症状が長く続くのは、おそらく患者がウイルスをなかなか排除できないことが関与していると思われます。回復までに長くかかったり、PCRが陰性化しても再度陽性化するケースがあることは、なかなかウイルスを排除できないケースがあることを示しているのではないでしょうか。さらに想像すると、軽症・中等症の患者で退院後、ちょっと動くとすぐ息切れがしたり、疲れたりするのは、肺機能や筋力が完全に戻っていないことを示しているのかもしれません。はっきりしているのは、原因やメカニズムはまだわからないけれど、重症患者はもちろん軽症・中等症であっても後遺症に苦しんでいる人が一定数存在しているという事実です。