20.7.2LancetにCOVID-19と神経症状の論文

7月2日に「Neurological associations of COVID-19COVID-19と神経症状との関連)」と題する論文が、有名な医学誌The Lancetに発表になりましたので、一部をご紹介致します。

要約:背景
新型コロナウイルスによって引き起こされた感染症、COVID-19のパンデミックは、1918年のインフルエンザのパンデミック以来の大きさの規模である。顕著な臨床症状は呼吸器疾患だが、神経症状もますます認められるようになってきている。他のコロナウイルス、特にSARSとMERSの原因となったコロナウイルスの知見に基づくと、新型コロナウイルスによって引き起こされる中枢神経系と末梢神経系の疾患はまれであることが予期されうる。

神経疾患の調査
新型コロナウイルスの拡大が続き、神経症状を伴う患者がますます認められるようになってきているため、早く発表したいという願いは、注意深い臨床・診断・疫学の研究の必要性とバランスが取れている。臨床医は、COVID-19関連の神経系疾患の可能性のある患者を詳細に調べるための系統的アプローチを取り入れなければならず、確定された症例、可能性の高い症例、可能性のある症例を鑑別する症例定義を定めて、ウイルス感染のエビデンスや付けられている臨床診断を検討する必要がある。

神経障害、脳血管疾患、急性播種性脳脊髄炎の患者では、損傷は宿主のウイルス感染への応答によって引き起こされた可能性があり、特にウイルスが上咽頭から消えた後で患者を診る場合は、因果関係を立証するのはさらに難しい。病歴や、肺の画像と血液検査の特徴的な検査結果に基づいたCOVID-19のための(上述の)症例定義は有用だろう。脳卒中の患者には血管炎を探すために、臨床医は脳血管撮影、頭蓋内血管壁イメージング、必要であれば脳生検を検討すべきである。COVID-19患者において、圧倒的に大血管疾患が多く、血栓形成傾向が高いことを示すマーカーを伴う脳血管性疾患の発生率が明らかに高いことは、因果関係を示唆している。しかし、パンデミック中はウイルスへの罹患率が高く、ほとんどの脳卒中患者には他にも危険因子があるために、原因を確定するのが困難であることを意味する。新型コロナウイルスとの関連は、最終的には注意深い症例対照研究によって証明される必要がある。

結論と将来の方向性
他のコロナウイルスや呼吸器ウイルスについての既存の知見を考慮すると、COVID-19と中枢神経や末梢神経系との広範囲の関連性は驚くべきではなく、このことが最近のほとんどの報告の焦点になっている。しかし、他の地域流行性のウイルス感染や今までに報告された症例の知見に基づくと、新型コロナウイルス陽性であるが、COVID-19の典型的特徴がほとんどない、あるいは全くない患者においても、神経疾患がますます多く見られるようになるであろう。このような患者において新型コロナウイルスが原因であるのか偶然の一致であるかを立証するのを助けるには、症例対照研究が必要である。一部の急性ウイルス感染ではめったに見られない凝固亢進状態と脳血管疾患は、COVID-19の重要な神経系合併症である。

全体的にみれば、神経症状のある患者の割合は、呼吸器疾患患者に比べれば少ない。しかし、パンデミックは継続しており、集団免疫が獲得されるまでに世界の人口の50~80%が感染する可能性が予期されていることは、神経症状を持つ患者の全体数が大きくなる可能性を示唆している。神経系の合併症、特に脳炎と脳卒中は一生涯に渡る障害を引き起こしうり、それに関連した長期的ケアが必要となり、健康・社会的・経済的コストが大きくなる可能性を伴う。医療計画作成者や政策立案者は増加する負担を認識する必要がある。

神経系疾患の症状や負担を明確にするのに役立てるためには、注意深い臨床・診断・疫学的研究が必要である。この任務を遂行するには、臨床医と研究者の専門知識の広範な共同と、領域を超えた調和的アプローチを必要とする。小規模の症例シリーズやレジストリーは、標準化された症例報告フォームや症例定義も提供しているブレイン・インフェクション・グローバル(訳注:急性脳感染症の管理を向上させるための英国国立衛生研究所のグローバルヘルス研究グループ)を通して運営されているCOVID-19神経ネットワークのようなものと、メタアナリシスをするために結合させるべきである。

※英語の原文はこちらからご覧頂けます