20.6.4AtlanticにCOVID-19後の不調の記事

6月4日付のThe Atlanticに、「COVID-19は数ヶ月持続しうる」と題する記事が掲載されました。サブタイトルは「この病気が“長引いている人々”は、体を衰弱させる症状の容赦のない波と、医師や友人たちから向けられる不信の目に耐えてきた。」この長い記事の中には、COVID-19後に長い間、体調の戻らない9人の患者の事例と、COVID-19後にME/CFSを発症する可能性について書かれています。

ボニー・ルクレークがCOVID-19の症状を初めて感じたのは3月16日でした。「その前は元気で健康な32歳だったのに、今では疲れてシャワーを浴びながら立ち上がることもできないし、スーパーに買い物に行った後、何日も寝込んでしまいます。」もうあれから80日。

WHOによると、感染症の約80%は“軽症か無症状”で、平均2週間で回復するとしています。しかし、SlackやFacebookでのサポートグループには、ルクレークのような人が何千人も参加しており、重篤なCOVID-19の症状と2~3ヶ月とまではいかずとも、少なくとも1ヶ月は闘っていると言います。自分達のことを“長期の人”とか“長引いている人”と呼んでいる人もいます。

この記事のために9人に取材しましたが、ほとんどの人は集中治療室に入院せず、人口呼吸器を使用しませんでしたので、専門的には「軽症」とみなされます。それにも関わらず、彼らの生活は容赦なくうねる様々な症状の波に打ちひしがれ、集中や運動すること、簡単な身体的な作業を行うことを困難にしています。

世界はCOVID-19に対する心配にかられていますが、“長引いている人々”のことは話題から抜け落ち、パンデミックを定義する数値から除外されています。ほとんどの人は軽症で短期間であるという理解が、持病のある人と高齢者だけが隔離される必要があり、他の人は皆、感染してそれでお終いという信じ込みを強めています。

フィオナ・ロウェンスタインは、退院してから9日後に、この病気で闘っている人々のために、Slackでサポートグループを開始しました。このグループはボディ・ポリティクスと呼ばれる団体と提携しており、“長引いている人々”が逃げ込む場となっています。症状が30日以上続いている人達の窓口となっており、3,700人以上のメンバーがいます。

COVID-19は多くの臓器に影響を与えることは、今では明らかになっています。3月に多くの“長引いている人々”が腸や心臓、脳の問題を伴って病気になった時には、まだこの病気は主に呼吸器系の病気だと考えられていました。今日まで、米国疾病要望管理センター(CDC)がCOVID-19の神経症状として記載しているのは唯一、味覚あるいは嗅覚消失だけです。しかし、ボディ・ポリティクスの調査に答えた“長引いている人々”の間では、他の神経系の症状がよくみられました。

多くの人は、咳や熱と同じくらいに「ブレイン・フォグ(頭の中に霧がかかったようで働かない)」や集中力低下を報告しています。幻覚やせん妄、短期記憶の喪失、表面を触れた時に奇妙な振動するような感覚などを経験している人もいますし、心臓の鼓動や呼吸のような無意識のプロセスをコントロールする交感神経系の問題を抱えた人もいます。

新型コロナウイルスは新しく、ウイルス感染の後遺症についても理解が不十分です。多くの病気は長期に及ぶ様々な症状の原因となりますが、流行が特に大きくなければ、傾向として気づかれないままになる可能性があります。「エボラ出血熱の患者のほぼ全員が、長期に及ぶ何らかの慢性合併症を抱えています」と、コロンビア大学医療センターのクレイグ・スペンサー先生は語ります。これらの持続的問題の中には、エボラ出血熱の集団発生の初期に認められたものもありますが、2013~2016年に西アフリカで28,600人の人が感染するまでは、広く認識されることはありませんでした。

“長引いている人々”の中には、友人や家族が病気が長引いていることを理解できないことに、イライラしている人がいます。「全て気のせい」とか「ただの不安」というメッセージを受け取ったと、ルクレークは言います。こうしたメッセージの多くは、医師や看護師から発せられます。ニューヨーク市のハナ・デービスは、記憶喪失とブレイン・フォグについて神経内科医に話すと、ADHDだと言われた時のことを話してくれました。「本当に恐ろしくなります。医師や看護師は、自分が真剣に助けを求めようとしている人達なのに、現実を理解できないのですから。」

ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの神経科学教授のアシーナ・アクラミは、2人の医師がストレスのせいであると示唆し、同僚の神経科学者達は、彼女に冷静になって抗うつ剤を飲むように言ったそうです。「私はとても冷静だし、体のどこかが悪いのに」と語るアクラミは、発症してから79日目です。

ミュージシャンであり作家であるサラ・ラミーは、長引いている人々”に共感できます。彼女の回顧録「不可思議な病気のためのハンドブック」の中で、耐え難い痛み、押しつぶされるような疲労、gastro-catastrophes、医療上のガスライティングなどによる、17年間に及ぶ苦しい体験について書いています。「孤立して家から出られず、途方もないほど経済的に不安で、政府は十分なことはしないし、検査も十分ではなく――これらすべては、私のような人が何十年間も生きて経験したことです。病気そのものが恐ろしく破壊的ですが、作り話だと何度も何度も言われるのは、はるかに最悪です」と彼女は語ります。

ラミーは公式にはME/CFSと複合性局所疼痛症候群にかかっており、非公式にはWOMIs(不可思議な病気の女性達)と称するグループの一員です。その病気とは、ME/CFS、線維筋痛症、体位性頻脈症候群などです。女性に圧倒的に多く、原因がはっきりせず、複雑で体を衰弱させる症状があるのに治療薬がなく、診断が難しく容易にほっとかれます。

ME/CFSのクラスターは、多くの感染性の集団発生後に起きていることは注目に値します。こうした時に、すぐに良くなる人もいますが、ウイルス感染後疲労にもっと長く悩まされる人もおり、数ヶ月後や数年後になっても苦しんでいる人もいます。一つのオーストラリアの研究では、ロスリバーウイルス、EBウイルス、Q熱の背後にある細菌に感染した人の11%が、6ヶ月後にME/CFSと診断されたとしています。2003年のSARSの流行の際に回復した233人の香港の住民の調査では、およそ40%の人が約3年後にも慢性疲労の問題を抱え、27%はCDCのME/CFSの診断基準を満たしていました。

多くの異なる急性の病原体が、同じ炎症反応の誘因となり、同じ慢性的な結末に達するようです。ラミーによれば、このコミュニティーの多くの人はCOVID-19のことを心配しています。「高い感染力を持つウイルスが世界中で蔓延しており、ME/CFSの症例が大幅に上昇しないとすれば珍しい」と。

ME/CFSは、一般的に症状が6ヶ月以上持続する時に診断されますが、この新型コロナウイルスは人間に感染してからそんなに経っていません。それでも、多くの“長引いている人々”の症状はME/CFSのコミュニティーの患者たちが経験しているのと全く同じように聞こえると、アドボカシー・グループ#MEActionの取締役であるジェニファー・ブレアは語ります。

ルクレークやアクラミや他の人達は、掃除、運動、ヨガをすることで、ある程度の体力を取り戻そうとすると、様々な症状が再発することに気が付きました。これはME/CFSを定義づける特徴である労作後の消耗で、短い散歩ほどの軽い活動後でも起きる、重度の多臓器のクラッシュです。ただの極度の疲労とは全く違います。

ME/CFSの症状は長い間、矮小化され、患者たちは疑われ、研究者は研究費が不足していました。パンデミックによって、ME/CFSの症状に似た様々な症状を抱えた大量の人を生み出したら、この病気や他の見過ごされてきた病気の研究のきっかけになるかもしれません。すでにいくつかの科学者チームは、COVID-19患者がME/CFSに移行するかどうか、そしてその理由を確かめるために、COVID-19患者の研究を計画しています。ブレア氏はそのように発展することを歓迎しますが、「この道を歩まなければならかもしれない人々に対する大きな悲しみと、過去40年間にこの病気を研究していれば、今、患者さん達をどう治療すれば良いかについてより良い理解を得られていたであろう、その時間を思って悲しみを感じています」と語ります。

※英語の原文はこちらからご覧頂けます