20.3.30米国NIHのナス先生のCOVID-19の論文

3月30日付けの米国神経学会誌Neurology(神経学)に、米国国立衛生研究所(NIH)・国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)の主任研究員であるアビンドラ・ナス先生による、「コロナウイルス感染症による神経系の合併症」と題する論文が掲載されましたので、一部を紹介します。ナス先生はNIHにおけるME/CFSの包括的研究の主任研究者です。

新しく出現した新型コロナウイルスは、一般の人々、医療従事者、患者、政治家、金融市場を恐怖とパニックに陥れた。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主な臨床症状は、肺合併症によるものだが、答えが見つかっていない疑問がたくさんある。頭痛はウイルス性髄膜炎を象徴している可能性があるだろうか。1人の患者の脳脊髄液からウイルスが検出されたという報告がある (www.encephalitis.info/blog/coronavirus)。無嗅覚症は嗅球が関与していることを示唆しているのか。コロナウイルス脳症のモデルマウスにおいて、ウイルスは嗅覚経路の神経を伝って脳に侵入できる。これゆえ、この比較的害のなさそうな症状は、もっと深刻な合併症の可能性を示しうる。呼吸器症候群は、脳幹が関与している可能性があるのではないか。ウイルスの影響を十分に理解するためには、脳画像や脳の病理学的評価が必要である。高齢者や免疫が低下している患者は、特に重症化のリスクが高い。

コロナウイルスには数種類ある。いくつかの急性の神経系の症候群は、コロナウイルスと関連付けられている。SARSのウイルスは脳症と急性呼吸窮迫症候群の患者の脳脊髄液から検出されている。MERSのウイルスは、重度の急性散在性脳脊髄炎と血管障害を引き起こしうる。ウイルス感染後脳幹脳炎とギランバレー症候群についても記述がある。

色々なコロナウイルスの抗体陽性は、脳症、視神経炎、多発性硬化症、パーキンソン病等の様々な神経系疾患で報告されている。多発性硬化症の患者たちの脳脊髄液や脳からウイルスは分離されている。関連するウイルスは、HCoV-229E、HCoV-293とHCoV-OC43である。これらはいたるところにあるウイルスで、上記の疾患の原因としてどのような役割を果たしているのかが立証されていないため、これらの研究結果の重要性は明らかではない。

20世紀に、様々な疾患の予防、診断、治療において、非常に大きな進歩を遂げた。脳症の原因となり多くの人々に惨状をもたらす何百というウイルスを、皆が認識しているが、ヘルペス脳炎以外は、これらのどの微生物に対しても治療法を持たない。我々は神経学における危機に直面していることを認める時である。行動すべき時は今だ。

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