20.4.6Globe and MailにCOVID-19とMEの記事

4月6日付のThe Globe and Mail(カナダ最大の全国紙)に、「新型コロナウイルス感染症が一部の患者に神経系の合併症を引き起こす可能性を科学者は警告している」と題する記事が掲載されました。米国国立衛生研究所(NIH)を構成する20の研究所の一つである米国国立神経疾患・脳卒中研究所の臨床部長であるアビンドラ・ナス先生が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復後も神経系の影響が残るかどうか長期間にわたって追跡調査をする必要を語っています。ナス先生は、NIHにおけるME/CFSの包括的研究の主任研究者です。

新型コロナウイルスが呼吸器系疾患の原因となることが知られていますが、一定の患者において脳と神経の損傷をもたらす可能性について示唆している科学者の方々もいます。新型コロナウイルス感染症の典型的な症状の他に、脳卒中、痙攣発作、無嗅覚症(すなわち嗅覚消失)、脳症(脳の損傷や機能障害を表す広義語)を含む数々の神経系の不調を併発した感染患者の症例を、世界中の医師たちが報告しています。

「今までこれらの報告は記述的な症例研究にとどまっていますので、様々な神経系の症状がウイルスのせいであるかどうかを判断するには早すぎますが、一般の方や医療提供者がこの可能性について知っていることが大切です」と、カナダのサスカッチワン大学の神経内科のJ・テレズ-ゼンテンノ教授は語ります。「ウイルスが脳に到達する可能性がありますので、神経内科医だけではなく最前線の医師たちも、神経系の合併症が起こりうることを認識し、診断できるよう備え、もし治療法があるのであれば治療できるよう準備していなければなりません。」

多くの感染者が無嗅覚症を経験するという事実は、ウイルスが脳に到達し得る一つのルートを指し示している可能性があります。「ネズミの研究では、新型コロナウイルスが嗅覚器系を通って鼻から脳に入り込むことが示されています。人間においては、ウイルスが嗅覚神経の末端の損傷の原因となるだけで、一時的に嗅覚を失う以外、何も深刻な結果をもたらさないかもしれませんが、これが脳に侵入する経路となる可能性もあります」と、米国国立神経疾患・脳卒中研究所の臨床部長であり、神経系の感染セクションの主任であるアビンドラ・ナス先生は語ります。「ウイルス感染から回復した後も長期にわたって、持続的な神経系の影響の兆候がでないかどうかをみるために、徹底した患者の追跡調査を行うことが役立つでしょう。」

ナス先生は米国神経学会誌Neurology(神経学)というジャーナルに発表した最近の論文で、新型コロナウイルス感染症による呼吸器症状は、呼吸をコントロールする脳幹の損傷から生じているかもしれないという疑問を投げかけました。「呼吸器症状のある患者の中には、主に神経系が関与している可能性を真剣に考える必要があり、可能であればCTやMRIを撮るべきです」と語ります。

「慢性的な神経系の不調は、過去に別のタイプのコロナウイルスと結びつけられてきました」と、コロンビア大学公衆衛生大学院の疫学准教授であるマディ・ホーニング先生は語りました。「例えば、SARSやMERSにかかった患者の中には、ME/CFSを発症した症例が報告されています」と注意を促しました。「特にこうしたタイプのコロナウイルスに関しては、神経系のカテゴリーにおける慢性的影響を詳細に探さなければなりません」と語ります。

「普段、私達の脳は血液脳関門で守られていますが、「サイトカインストーム」、すなわち一定の患者に見られる激しい免疫反応が出た時に、血液脳関門は破壊される可能性があります」と、マクマスタ―大学の精神神経免疫学の専門家であるボリス・サキック先生は語ります。

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