19.11.10三鷹で上映会を開催しました

11月10日(日)に東京都三鷹市の三鷹産業プラザにおいて、東京都の後援を頂き上映会を開催致しました。当日は中村ひろし都議会議員を含む、85名以上の方が出席して下さいました。

当日の司会は篠原理事長が務め、まず当法人製作のドキュメンタリー映画「この手に希望を~ME/CFSの真実~」を上映致しました。休憩後、2015年より山村隆先生と共にME/CFSの研究を開始して下さり、2019年4月にAMEDにて発足した「ME/CFSの血液診断法の開発」研究班研究開発代表者の国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所免疫研究部室長の佐藤和貴郎先生に、「ME/CFSの最新の研究について」と題してお話し頂きました。

私は国立精神・神経医療研究センターに勤めており、研究所の免疫研究部で研究しながら、病院で患者さんを診療しています。専門は神経免疫学で、脳神経内科医です。ME/CFSは、感染症の後に発症することが多く、女性に多いですが、膠原病という自己免疫の病気も女性に多いという特徴があります。ME/CFSには客観的診断基準がないために、医学会・研究者や行政が、この病気をきちんとした枠組みによって捉えられないでいます。今までは病気が複雑に見え、血液検査や画像検査などのバイオマーカーがないために、中々患者さんを診断できず、治療薬の開発が進まないという悪循環が起きたのではないかと思います。

中核症状を見ますと、ほとんどが中枢神経、脳の機能異常が関係するものです。一般の医師や研究する側にとって難しいのは、似て非なる病気がたくさんあることです。精神疾患や他の免疫の病気など、区別すべき疾患が色々あります。認知行動療法が一時期、イギリスの研究で有効であると言われましたが、それは実は間違いで、脳の認知によって治るような病気ではないことがはっきりしましたので、きちんと情報提供していかなければいけないと思っています。

国立研究開発法人(AMED)から、2つの研究支援を頂いて研究を進めており、100名以上の患者さんのリンパ球解析やMRIの画像解析をすることができました。患者さん全体と健常者の脳画像の統計解析によって、患者さんに特異的な異常が見つかってきました。その場所は上縦束と呼ばれる、脳の様々な機能をつなぐ中継点のようなところで、ここがうまく働かないと、情報処理が遅くなり、言語の処理がうまくいかないといった認知機能障害が起こりうるところですので、合理的な結果だと考えています。ただ、現時点ではMRI検査で一人一人を診断できませんので、さらに開発が必要です。

神経免疫疾患のなかには、自分自身の脳を攻撃する抗体が作られる病気もたくさんあり、私達はその原因となる抗体をつくるB細胞に注目して研究しています。リツキシマブという名前の薬は、元々は抗がん剤で、B細胞を血液中からほぼ0にする薬剤です。ノルウェーでこの薬によるB細胞除去療法を行ったところ、約3分の2の患者さんで治療効果がありましたので、第三相試験も行われましたが、統計学的にはきちんと治療効果を証明できませんでした。ME/CFS以外の患者さんも含まれていた可能性もあり、治療薬でない偽の薬(プラセボ)を受けた患者さんが、この薬が効くと思っただけで、ある程度効いてしまうところがありますので、それが結果に影響したのかもしれません。いずれにせよ、リツキシマブの効果が全くないと結論づけることはできず、B細胞を中心とした研究を進めなければならないと思っています。

リンパ球解析をしますと、抗体を作るB細胞が患者さんでは全体的にみて増えている方が多いです。抗体を産生するプラズマブラストが、一部の患者さんでは非常に増えており、プラズマブラスの機能を調べると、機能にも異常があるということをつかんでいます。免疫が暴走するのを抑える細胞である制御性T細胞は減っているようで、ブレーキ役の細胞が減っているのは、多くの自己免疫疾患で共通してみられますので、この病気も自己免疫疾患と共通するものがあるのではないかと考えられます。

B細胞の多様性の偏りをみますと、ある種のBリンパ球が患者さんで増えており、こうしたものが6つ見つかりました。この6つの情報を使うと、かなりの精度で診断できるのではないかという結果を得ています。現在、この結果が本当かどうか、さらに重要なレパトアが何かということを知るために追加の解析をやっているところで、血液の診断法として使えるかもしれないと思っています。

最近のNHKの「人体」という番組のキャッチフレーズは、「ネットワーク医学」でした。今の医学は循環器科、神経内科、感染症科などの臓器別に分かれています。本当はネットワークで全体を見なければならず、医学はその方向へ確実に向かいつつありますので、この病気の研究は医学の最先端であると私は感じるようになってきました。そういう観点を含め、周りの脳神経内科医に話したり、臨床免疫学会などで発表したりしております。ご清聴ありがとうございました。

続いて、9年前からME/CFSの診療をして下さっている、東京保険医協会理事の申偉秀先生に、「ME/CFSの対症療法とセルフケア」と題してお話し頂きました。

都内で内科のクリニックを開業しており、篠原理事長の訳したカナダの診断基準をはじめとする小冊子等の医学監修もしています。9年前に診療を始めたころは、和温療法と、「クラッシュ」を避けるために、自分のエネルギーの余裕を知って温存し、脈や体温が上がる前に休むという対処法(ペースの調整)が主な治療法でした。その後、患者さんが少しでも改善するよう、色々な対症療法をやるようになりました。

カナダの診断基準の小冊子の最後に「症状の重症度と重症度の序列のプロフィール」が掲載されていますので、それを使って体調を管理しましょう。ニュージーランドの先生が、日常生活の過ごし方を書いた「生活の手引き」を参考にして下さい。ノルウェーのリツキシマブの治験がきっかけになり、アメリカでは免疫の観点から本格的な研究が進んでいます。

私のクリニックでは、鼻の奥の上咽頭と呼ばれる箇所に薬をぬる上咽頭擦過療法(Bスポット)をやっています。上咽頭の部分の炎症を抑え、上咽頭のところのリンパ節をきれいにし、体をリラックスさせて体調を良くします。目力が強くなる、鼻づまりや睡眠が改善、起きていられる時間が長くなる、感染症にかかりにくくなる、アトピー性皮膚炎が良くなるなどの効果があります。血液検査でACTHが上がりますので、脳の機能が良くなっていると考えられますし、脳血流を調べると改善が見られます。ツボや経絡を中心に脳の血流や自律神経をよくする遠絡療法もしています。

根治療法ができるまで、上咽頭擦過療法や和温療法、その他のセルフケアをやって頂ける先生たちを増やして、患者さんがクラッシュしないようにしていきたいと思います。

質疑応答の時間ほはほとんど取れませんでした。最後に篠原理事長より、約400名の神経内科医に映画の医療関係者向け短縮版DVDを送るプロジェクトや、それを英語に翻訳して海外に発信するプロジェクトを進めていることを紹介し、募金のお願いをさせて頂きました。
※写真がうまく撮れずに残念でした。

ウェスレー財団から助成を受けて開催致しました。