18.1.1Brain and Nerveに高橋良輔先生の記事掲載

18.1.1brain and nerveに記事掲載

医学書院発行の医学雑誌「Brain and Nerve」2018年1月号に、コマロフ先生の「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群における神経学的異常」と題する特別寄稿に対する解説「アンソニー・コマロフ教授と筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」が掲載されました。日本神経学会代表理事であり京都大学教授の高橋良輔先生、澤村正典先生、NCNPの山村隆先生によるものです。

ME/CFSはこれまで長年にわたって議論の対象になってきましたが、その議論の焦点は「ME/CFSは果たして本当の病気と言えるのか」という点でした。ME/CFSのバイオマーカーが存在しないために、その病因は謎に包まれ、多くの医師を含む社会がME/CFSを「本当の病気」と認知しないことは、「慢性疲労」という語感からは想像し得ない重篤な障害に苦しむ患者を偏見に暴し苦しめてきました。事実、ME/CFSに罹患して何年も寝たきりの患者が少なからず存在することは意外と知られていません。この状況に対してIOMは2015年、9000以上の過去の文献を調査し、ME/CFSは生物学的基盤を有する重大で複雑な疾患であることを明らかにし、精神症状はME/CFS発症後に現れる二次的なものであることを明言しました。

コマロフ教授はME/CFSの臨床的研究を専門とされており、本寄稿は2016年にコマロフ教授がNPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」の招きで来日された折の国際シンポジウムの講演に、筆者(高橋先生と山村先生)が感銘を受けたことに端を発します。コマロフ教授はこの総説で、過去の文献が脳内外での免疫系賦活を契機として炎症性サイトカインが放出されることでME/CFSが発症する可能性を指摘していることに焦点をを合わせて、次の仮説を提示しています。①脳内での感染による脳内の免疫系賦活、②全身・局所の感染や炎症に伴い、リポ多糖やグラム陰性菌抗原が血液脳関門透過性を亢進させた結果としての、血液循環を介した脳内での免疫系賦活、③腸管での感染や炎症をきっかけとする迷走神経を介したシグナル伝達による脳内での免疫系賦活、の3つのルートによる脳内免疫異常が原因ではないかというものです。

2017年に「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に17種類の炎症性サイトカインの変動がME/CFSの重症度に関連するという論文は発表され、コマロフ教授は「炎症がME/CFSの症状と相関する」との紹介論文を執筆されています。今回の論文では触れられていませんが、欧州では現在悪性リンパ腫治療薬である抗CD20抗体(リツキシマブ)のME/CFSに対する効果を検証する医師主導治験が行われています。第二相試験で有効性が示唆され、最近第三相試験も完了した模様です。ME/CFSの免疫病態の理解につながる研究であり、もし有効性が確認されれば、ME/CFSの医療現場に大きなインパクトを与えることが予想されます。

ME/CFSへの神経免疫学的アプローチが有効であることを提唱する本総説が、我が国の研究者や研究者を目指す学生、若手医師に、ME/CFSの研究への興味を呼び起こし、その病態解明を前進させるインパクトを与えることを心より祈念します。

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