18.11.25埼玉で山村先生が講演されました

11月25日(日)にさいたま市の「With You さいたま」において、一般社団法人埼玉県障害難病団体協議会(障難協)主催の第37回埼玉県民福祉講座が開催されました。障難協は、23の障害者や難病の団体が加盟しており、会員は約3200人で、埼玉県の委託事業として難病相談支援センターを開設しています。当日は障難協の代表理事、2人の副代表理事、理事や2人の難病相談支援員の方も出席して下さり、50名以上の方が出席して下さいました。

理事であり全国心臓病の子供を守る会の神永芳子会長が、司会を務めて下さいました。代表理事であり全国CIDPサポートグループの鍛冶屋勇・関東支部長のご挨拶に続き、当法人製作のドキュメンタリー映画「この手に希望を~ME/CFSの真実~」(監督:有原誠治)を上映して頂きました。休憩の後、当法人の篠原理事長より、どんな症状が24時間365日続くのか、患者会発足前はME/CFSを神経系疾患と認識している医師は日本にはおらず、患者たちはいかにひどい扱いを受けてきたか、その中で海外の最新情報を翻訳して患者会を発足させたことなどをお話ししました。

続いて、今年4月にAMEDにおいて発足した「ME/CFSに対する診療・研究ネットワークの構築」研究班班長の、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所の山村隆先生にお話し頂きました。

「ME/CFSの研究は進んでおり、恐らく新薬の治験も国内で実施されるだろうという予感がしています。新しいお薬が承認されるまでには、早くて4,5年かかります。最初は比較的軽い方で色々と良くコントロールした状況での、かなり小規模な治験になります。うまくいけば5年後くらいで全国で薬が使えるようになります。多発性硬化症に薬が5種類も必要なのは、ある最初のお薬で救える患者さんは3割か4割で、残りの患者さんはそれではうまくいかないので、次の薬が出てくるという形でどんどん増えていくからです。

日本では2,3年前まで神経内科医が全くこの病気にタッチしなかったのは、こういう病気があることを知らなかったからです。しかし、前日本神経学会代表理事の高橋良輔先生が、脳神経内科医が読む医学書院のBrain and Nerveという雑誌に特集を組み、そこにコマロフ先生(ハーバード大学教授でME/CFSの世界的権威である専門医)や私の論文も入れてくれました。もし担当医が全く理解がなければ、この雑誌のコピーを見せてあげたら良いと思います。これは重要な雑誌です。

私たちの研究班の角田先生(国際医療福祉大学市川病院副院長)が、磁気刺激を脳に与える治療(実際には磁気刺激で脳に電流が流れるようにする装置を使った治療)をすると、疲労の症状が劇的に改善されるという論文を発表されています。脳を刺激すると良くなるということは、やはり脳に問題があるということを意味していると思います。

私たちの成功例ですが、視神経脊髄炎という病気の上流には、IL6というサイトカインの上昇があることを見つけ、このIL6の阻害剤を治療に使い、大変よく効くことを実証しました。こういう特定の分子をターゲットに、一つの病気の原因になるような悪いところをピンポイントでやっつけるような薬が出てくると、本当に良く治ります。だからME/CFSもピンポイント攻撃の方に行かなければならないことは確かです。

多発性硬化症の領域では免疫学がどんどん重要になり、免疫学のおかげでこの病気は難病ではなくなりつつあります。ME/CFSも免疫学で攻めていかなければいけないと思っています。NCNPで患者さんを診て最初に驚いたのは、免疫関連疾患との合併例が結構多く、ご家族の中にも免疫の病気のある方が多いことでした。家族歴にこういう免疫疾患の方が多いというのは、多発性硬化症とそっくりで、これはもう免疫の病気だなとすぐに思いました。

ノルウェーの研究者たちが試しているリツキシマブという薬は、B細胞を殺す薬です。私たちはリツキシマブが効くという情報を別の方法で確認するために、患者さんの血液中のB細胞を解析しています。リンパ球の特徴をフローサイトメーターという機械で調べることができますが、B細胞が全体として増えているということをすぐに確認できました。一部の患者さんでプラズマブラストというリンパ球が増えていること、ME/CFSが重症の人ほどこのプラズマブラストが増えているということも分かりました。このプラズマブラストは、最初の10年は増えていて、その後、減るということも分かりました。ですから恐らく最初の10年にB細胞の非常に強い活性化が起こっていて、この時に病気が一挙に悪くなるのだろうと思います。ですからこの時期が一番、治療として重要な時期ではないかと思います。

私たちはリンパ球の中でも、数十種類をさらに分けて調べています。制御性T細胞は、免疫の暴走を抑えるブレーキ役のリンパ球で、これが減ると免疫病になります。ME/CFSの患者の制御性T細胞を詳しく調べたところ、有意に減っているということが分かりました。この減り方は多発性硬化症と同じようなレベルです。制御性T細胞という免疫の暴走を抑える細胞が減っているので、免疫系が勝手に活性化して、色々なことをやっているということが考えられます。

B細胞の受容体の遺伝子解析も今では比較的簡単にできます。簡単に言いますと、B細胞はそれぞれ抗原受容体というバーコード(遺伝子)を持っていますが、それを次世代シーケンサーという、遺伝子を高速で調べる機械で読んだところ、ME/CFSの方と健康な方では、明らかにそのバーコードに違いがあることが分かりました。ME/CFSの方のB細胞では、6種類のタグをもったバーコードが増えていることが分かりました。ロジスティク解析という方法で調べたところ、今言った6種類のタグを計れば、ME/CFSを診断できる、その信頼性は9割くらいに到達するということが分かりました。さらにもう一つマーカーを追加しますと、信頼性95%でME/CFSが診断できるという時代になったわけです。ですから、客観的診断基準に当然、使えますし、今までこの病気の実態を信用しないドクターが全国にいるわけですが、もうそういう時代は終わると思っています。

20例のME/CFSの患者さんを最新のMRI拡散イメージング手法を用いて、脳内の構造評価を行い、微細な構造に異常があるということが分かりました。これは論文が最近でました。色々な解析を加えましたが、右上縦束などに異常信号があることが分かりました。右上縦束の異常というのは、多分、この病気の本質的なものではないかと思います。20例の結果で発表しましたが、今、50~60例で解析し、もっときれいな結果が出ており、それをまた発表したいと思っています。ME/CFSは脳神経内科で診るべき病気だということは、一連の解析で明らかになったと思います。

たった3年でここまで研究が進んだのは、今まで多発性硬化症で研究してきたノウハウの蓄積があり、それをすぐに使えたからです。この病気は神経免疫学的にアプローチすれば、あっという間に結果が出るという感じがしています。新しい指標も見えてきていると思います。最後に、多発性硬化症では、日本人のデータと欧米人のデータの結果が乖離しています。ですからME/CFSも日本できちんと研究する必要があり、欧米人に任せておけばよいという感覚は絶対に間違っていますので、日本人として頑張っていきたいと思っています。」

質疑応答の時間に、「脳に異常があるので、内分泌系や神経系などに異常が出るのですか」「副腎の機能低下がこの病気に関与していますか」「感染症がこの病気の引き金になるのですか」「筋痛性脳脊髄炎、線維筋痛症、シェーグレン症候群はどう違いますか」等の質問が出されました。最後に当法人の岡本理事より、社会の無理解を変え、山村先生の研究を応援するために、患者会に任せっきりにするのではなく、行政や議員等への働きかけに協力して頂けるよう、患者や家族の方にお願いがありました。