18.10.23NHK EテレのハートネットTVで放送

10月23日(火)にNHK Eテレの「ハートネットTV」という30分間の番組で、「忘れられた病~筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の現実~」と題して、夜8時からME/CFSを取り上げて頂きました。重症患者の実態、福祉サービスを受けることの困難さ、診断が得られない苦しみ、行政の無理解に苦しむ患者、当法人の取り組み、神経系疾患としての研究、治療への取り組みなどを取り上げて頂きました。10月30日(火)13:05~13:35には、再放送されました。

東京都内に暮らすSさん(47)は、10年ほど前にME/CFSを発症しました。全身が鉛のように重く、音や光にも敏感なため、一日の大半を電気を消した部屋で横になって過ごしています。病気で動けないため、家事の多くは高校生の娘(17)が担っています。少しの音でも心臓や脳に突き刺さるように感じるため、お皿の出し入れも、音が出ないように気を付けています。ヘルパーを頼もうともしましたが、わずかな刺激でも体調が悪化してしまうため断念しました。

36歳で発症した時、Sさんはホームヘルパーとして働きながら、まだ幼い娘を一人で育てていました。ある時、肺炎にかかり微熱や倦怠感などがいつまでも続き、次第に起き上がれない日も増え、やむを得ず40歳で退職。治療に専念することにし、様々な病院を回り検査を受けましたが、異常は見つからず、体調はどんどん悪化していきました。「とにかく眠れず、光とか音とかに過敏になって、立っていられないし、もう寝てても横になっていてもしんどい」

たまたまある病院のスタッフから「慢性疲労症候群」という病気があると聞き、インターネットで患者会のホームページを調べると、そこには、自分とまったく同じ症状が書かれていました。患者会の資料を持って大きな病院を受診しましたが、血液などの検査結果には異常が見られないため、医師は資料を見ることもなく、「慢性疲労症候群っていうのはあるみたいだけど、あれってはっきり言って病気じゃないしね」と言われてしまいました。この病気を診てくれる医師はいないのか必死で探し、ある病院にたどり着いたのは発症から8年後、ようやく診断を受けることができました。

Sさんを診断した静風荘病院・特別顧問の天野惠子先生は、「筋痛性脳脊髄炎」の診断の難しさをこう語ります。「どんな病気でもそうですが、教科書に載らないと、なかなか一般のお医者さんがこの病気を認知することは無理なんです。検査をしても『何でもない、気のせいでしょう、もうちょっと様子みましょう』と言われ、その様子をみましょうが、あっという間に何年もたってという状況になります。その間にどんどん悪くなって、普段できていたことができなくなり、仕事を辞めることになります。教科書以外の色々な病気をひろって、患者さんを治してあげようという気持ちがない限りは、門前払いになります。」

ようやく診断がついても、根本的な治療法はまだ見つかっていません。Sさんは今もつらい症状に悩まされ、一人の時の食事は介護用の宅配弁当で済ませますが、指先の筋力が低下し、箸は使えません。食事をするだけで体力を消耗し、倒れ込んでしまいます。この3年間、通院以外で家の外に出たことはほとんどありません。日本の患者はおよそ10万人。その内の3割がSさんのように重症な人たちです。いまだに診断さえ受けられない人が少なくありません。

一方で、患者の置かれた状況を変えようとする取り組みが始まっています。患者会代表の篠原三恵子さんは28年前にこの病気を発症。8年前に患者会を立ち上げ、病気への理解を求めて活動しています。ドキュメンタリー映画の上映会では、情報を得られず困っている患者たちの姿もありました。現在、障害者手帳を取得し、ヘルパーの介助を受けながら生活していますが、篠原さんのように福祉制度を利用できる患者はまだ少ないのが現状です。患者会では国に対して病気の実情を知ってもらい、医療と福祉を充実させるように陳情を重ねてきました。「最終的な目的は、治療薬ができ、少しでも働けるようになるとか、学校に戻って勉強するとかが患者さんたちの本心ですので、それを目指したいと思っています。」

障害者手帳があれば、医療費の助成や車いすの支給などの様々なサービスを受けることができますが、意見書は法律で定められた指定医でなければ書けません。しかしこの病気を理解している指定医はまだわずかです。たとえ歩けたとしても、その後、回復できずに寝込んでしまう場合は、障害の程度を重く見なければならないと言います。困っている患者と出会ったのをきっかけに、3年前から意見書を書くようになったこの医師のもとには、全国から患者がやってきますが、これ以上の受け入れは難しいとも感じています。「患者さんを診て同情する、やる気のある医者が各都道府県にたった1人でもいてくれたら・・・」

今年の4月、国は新たな研究班を立ち上げて、病気の解明に乗り出しました。国立精神・神経医療研究センターでは、患者の血液からリンパ球を分離して解析。すると免疫を司る細胞に、明らかな異常が見つかりました。AMEDの「ME/CFSに対する診療・研究ネットワークの構築 」研究班の班長・山村隆先生は、病気のメカニズムを読み解くカギになると考えています。「免疫系が暴走して、脳の中に免疫系が入り込み、炎症を起こしているのではないかというのが一つの仮説です。血液を採るだけでこの病気の確率がどれくらいなのか、あなたは100%この病気にかかっています、と言えるような時代が来ると思っています。」

強い電磁石を頭にあてて、脳の表面に電流を発生させるrTMSと言われる新しい治療法の研究も始まりました。4年前に発症した女性は、一時は家事さえできずに、家で寝たきりでした。「浮き沈みはありますが、症状が悪化してから体調がベストの状態になってきてると思います。仕事とか、社会とつながりたい。」研究班ではこの治療の成果を検証し、全国に広めていきたいと考えています。

医療が進歩する一方で、時間との闘いをせまられている人たちがいます。新潟市に暮らすMさんは、9年前に発症し、今はほぼ寝たきりの状態です。病気で仕事を失い、生活保護を受けながら一人で暮らしています。新潟市内の病院では診断がつかず、知り合いの患者から富山にあるクリニックを紹介してもらいました。そこでは近くの医療機関と連携してrTMSにも取り組んでいます。Mさんは今年2月に受診し、ようやく診断を受けることができました。

定期的に受診したいたいと思い、新潟市に医療費の支給を申請しましたが、申請は却下されてしまいました。理由はクリニックが近くでないことと、対症療法は新潟市内でも行うことができるはずとされました。生活保護を受けている人は、健康保険に入れず、行政から医療費を支給されないと全額自己負担になります。現在、Mさんは弁護士を通じて処分の撤回を求めていますが、次に受診できる見通しはたっていません。全身の疲労感や筋力の低下が進み、体調は悪化し、最近は食事をとることも困難なため、栄養剤でしのいでいます。この2ヶ月で体重は10キロ以上、減ってしまいました。希望を見失いそうになる日々が続いています。

日本で患者が確認されておよそ30年。正しい診断と治療が受けられることを患者たちは願っています。