18.1治療ガイドライン(案)に対する様々な意見

「慢性疲労症候群に対する治療法の開発と治療ガイドラインの作成」研究班が今春に出版予定の「日本における筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)治療ガイドライン」案に対して、当法人は外部評価を求められましたが、2017年12月には一般からのパブリックコメントを募集していました。いくつかの団体・個人から、研究班に送った意見を共有して頂きましたので、意見の一部をご紹介致します。

星槎大学副学長 細田満和子先生

「2012年にME/CFSの会と共同で行った調査によると、47パーセントの患者が、診断を得るまでに6か所以上の医療機関を受診していた。診断を受けたとしても、患者は家族や友人からも理解を得られず、怠けているのではないかという眼差しを向けられて、誤解と偏見に苦しむことになる。今回出された治療ガイドラインは、患者会が指摘しているように問題が多く、ME/CFSを知らない医療関係者にさらなる誤解を広げることになる。ぜひ、信頼できる診断基準や治療法を基に再考されることを期待する」

日本学術振興会特別研究員 野島那津子さん

「患者が望んでいるのは、どの国であれME/CFSの病態解明や治療法の開発が行われ、偏見なく治療に専念でき、治癒や寛解、あるいは少しの改善でもいいから、今よりもよい状態になることだと思います。病者に害を与えるようなことは、臨床行為以外においてもあってはならないと思います。なぜなら、発症、診断、治療など、これらすべてにともなう苦悩は、実際には患者と家族だけが、より正確に言えば、患者だけが引き受けなければならないものだからです。もちろん、研究にともなうリスクは不可避です。しかし、そのリスクは可能な限り縮減されなければならないでしょう。これは治験や臨床試験に限ったことではありません。治療ガイドラインの作成は、より効果的な治療法の研究が進んでからでも遅くはないのではないでしょうか。少なくとも、患者や一般市民や他の専門領域の研究者も交えたパネル会議すら行われない中で、原案の治療ガイドラインをリリースすることには強い違和感を覚えます」

NPO法人医療制度研究会理事長 中澤堅次先生

「本疾患のように病気の実態がまだ明らかになっていない疾患に対して行われる診療では、時を経て実態が解明されたのちに初めて、行われた医療や政策が真の評価を受けることになります。なかには良かれと思って行った治療が人権問題になることもあり、注意が必要と思います。推奨グレードAの治療法がないのならば、現在は治癒に結び付く治療法はないということを明確に書かなければならないと思います。その断りが書かれていないので、多くの臨床医はこの重要性に気づかず、疾患悪化の可能性もあるB評価の段階的運動療法を選ぶと思います。そして疲労を伴う疾患に運動負荷をかけることが普及し、悪化した場合でも、結果は報告されず、経験の集積にも使われず、治療費を払った罹患者の苦痛を残すことだけのものになる可能性があります」

日本社会事業大学特任教授(障害者福祉論) 佐藤久夫先生

「結論的には、現在はまだME/CFS治療ガイドラインを決定する条件が整っていないと思います。理由の一つは、ガイドライン(案)で唯一グレードBとして推奨されている段階的運動療法(GET)の有効性が、近年揺らいでいると思われることです。ME/CFSにとってのGETの有効性に疑問がでて、しかも有害だとの報告まで出ている中では、拙速を避けるべきだと思われます。もう一つの理由は、国内のME/CFS患者団体がこのガイドライン(案)について強く反対している現状にあることです。ガイドライン(案)にも指摘されているように、欧米で有効な治療方法が医療制度もスタッフの配置も異なる日本で有効であるとは限りません。日本でのRCTを、患者団体の理解と参加を得て進めるための取り組みが開始されるようご期待いたします」

障害者の生活保障を要求する連絡会議参与 太田修平さん

「当事者団体が、「欧米では否定されている治療法を採用しようとしている」との強い批判を展開しています。医療は、それを提供する者と、受ける者との信頼関係が基礎ですから、国内の当事者団体の異議申し立てに対して、真摯な姿勢を取ることが重要です。医学的に説明がつかなくても、状態を最もわかっているのは本人です。当事者の生活実態に基づく治療ガイドラインが策定されるよう、筋痛性脳脊髄炎当事者団体の参画を強く望みます。病気に詳しい医師の往診、通話やインターネットでの遠隔診療など、状態に応じた仕組みも検討されるべきと考えます。また本人の生活ニーズを把握し、その必要性があれば障害と認められ、障害福祉施策との連携も必要との認識が、医療者をはじめ、関係者、行政に求められるところです」

日本カトリック障害者連絡協議会会長 江戸 徹さん

「日本も障害者権利条約を批准していますので、作成過程に当事者の参画がなかったことは問題だと考えます。この病気をきちんと神経系疾患であると捉えて作成したのかどうかが大いに疑われることが、このガイドラインの根本の問題であるように感じます。神経内科医が一人も作成委員に入っていないことも、それを物語っています。患者達は今でも偏見と誤解に苦しんでいますから、ガイドラインの出版がこれ以上、病気の誤解を広げないばかりか、正しい認知を広げることに寄与することを願います。世界の研究の最新の知見を基に、日本でも臨床の現場でデータをきちんと取りながら、丁寧にガイドラインを作成すべきだと考えます。世界の研究動向を踏まえ、真に患者のためのガイドラインを作成して頂きたいと思います」

株式会社医薬分子設計研究所 板井昭子先生

「一般的に治療ガイドラインでは、対象疾患の明確な定義と診断基準に基づいて重症度に応じた治療法が推奨されるべきであり、さらに鑑別すべき疾患やその方法の記載が必要である。しかし、このME/CFS治療ガイドライン案にはそれらが欠けているため、今後ME/CFSの診療に当たるであろう医師にとって役に立たず、今後のME/CFS研究に有害でさえある。ME/CFSはウイルス感染後の神経系の身体的器質的異常をきっかけとする自己免疫疾患で強い慢性疲労と筋肉痛が特徴であるが、CFSは長い間ME/CFSだけでなく、うつ病など心因性の慢性疲労、さらには怠け病や仮病まで含み得る幅広い概念の疾患名として用いられてきた。CFS患者の中で最も重症で最も予後が悪い患者集団であるME/CFS患者は、CFSと同じ慢性疲労症候群という疾患名のために著しい不利益を蒙ってきた。本治療ガイドライン(案)にはこの疾患名をめぐる議論とME/CFSに定まった経緯、及びME/CFSとCFSの違いを記述する必要があり、さらに我が国において世界的な潮流を無視して身体的疾患であるME/CFSを心因性の慢性疲労を含むCFSと同一カテゴリーとして扱う理由を明確にすべきだと思う。そうでないと全国の医師が文献等を当たる場合に混乱するからである。今後のME/CFS治療ガイドライン作成には神経内科や膠原病科等の専門の医師を委員に入れることを要望する」

細田満和子先生の意見はこちらからご覧頂けます
野島那津子さんの意見はこちらからご覧頂けます
中澤堅次先生の意見はこちらからご覧頂けます
佐藤久夫先生の意見はこちらからご覧頂けます
太田修平さんの意見はこちらからご覧頂けます
江戸徹さんからの意見の意見はこちらからご覧頂けます
板井昭子先生の意見の意見はこちらからご覧頂けます

 

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