17.2.1保団連誌の診療研究に申理事の記事掲載

17-2-1%e6%9c%88%e5%88%8a%e4%bf%9d%e5%9b%a3%e9%80%a3%e3%81%ae%e8%a8%ba%e7%99%82%e7%a0%94%e7%a9%b62016年10月の保団連医療研究フォーラムにおける、当法人の申偉秀理事の発表が優秀演題に選定され、保団連(全国保険医団体連合会)の月刊誌(全国10万人以上の医師・歯科医師が購読)への投稿を依頼されました。この度、保団連誌の「診療研究」に、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の日常診療~実態調査概要と今後の治療も踏まえて」と題して、5ページにわたって記事が掲載されましたので、ご紹介致します。

申理事のプロフィール:1990年東京大学大学院医学系研究科修了。1989~1991年文部省学術振興会特別研究員、1991~1994年ハーバード大学血管内科研究員、1995~2001年東京大学保健センター助手を経て、2001年から関町内科クリニック院長。

ME/CFSは、脳と中枢神経に影響を及ぼす多系統にわたる複雑な慢性疾患であり、患者のQOL を著しく低下させる重大な疾患であるにもかかわらず、客観的診断指標がないために、医療者から心因性、詐病扱いを受けてきた。また患者数が多いとの理由により指定難病の対象外とされ、患者は疾患による苦痛に加え、社会から疎外され孤立している。かかりつけ医として、現状を打破するために患者会活動に参加した内容を報告する。

米国NIHは、「ME/CFSはいかなる種類の労作でも激しい症状の再発につながる全身性の労作不全を特徴とする、後天的な多系統にわたる慢性疾患であり、免疫障害・神経機能障害・認知機能障害、睡眠障害、自律神経系の機能障害を含み、激しい疲労を伴う著しい機能障害が引き起こされる。また、広範囲の筋肉痛・関節痛・咽頭痛・リンパ節圧痛や頭痛などがみられ、ある罹患時期に4分の1の患者は寝たきりか家から出られず、多くの患者では発症前のレベルの身体機能を取り戻すことはない」とHPに発表している。

このように極めて重篤な疾患であるのに、日本では医療関係者ですら正しく理解しておらず、診療にあたる医師もごく限られ、患者は医療機関から疎外され、社会からも孤立していた。1990年米国留学中にME/CFSを発症、帰国後2006年から寝たきりに近い1人の女性患者が、2008年に国内で困難の下で生きている他の患者と出会い、翌年ME/CFSを題材にした米国映画を翻訳・上映し、2010年に数人で患者会「慢性疲労症候群をともに考える会」を立ち上げ、2012年にはNPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」となった。

英国では1955年に集団発生があり、1956年に筋痛性脳脊髄炎(ME)という病名が「ランセット」に提案された。1980年代に集団発生があった米国では、CDCが研究を始めたが、心因性疾患との認識が医療人や社会で根強かった。その後、治療とされた認知行動療法や段階的運動療法の有効性は否定された。米国で1988年に命名された「慢性疲労症候群(CFS)」は病態を表さず、現在は世界的にME/CFSと呼ばれることが多い。

米国では、2015年に大増額された予算でNIHが国立神経疾患・脳卒中研究所が主導する多施設研究を行うと発表。その背景には、近年ME/CFSに特異的な脳画像所見が報告されるようになったこと、ME/CFSに特異的な免疫異常も多く報告され、並行してノルウェーでの免疫調整剤リツキシマブを用いた臨床試験が顕著な効果を示していることがある。

患者会ではこれら知見をもとに、ME/CFSの病態解明と治療法開発に神経内科の関与の必要性を、2015年の日本神経学会総会で訴え、視神経脊髄炎を免疫調整剤で治療した実績を持つ国立精神・神経医療研究センターの山村隆先生の協力を得ることができた。また、脳卒中後麻痺に効果のある経頭蓋磁気刺激法で実績のある国際医療福祉大学の角田亘先生の協力も得られ、実際症状の改善を得ている。患者会では重症心不全の高度先進医療である和温療法を用いた入院治療(静風荘病院天野顧問)を推奨しており、ME/CFS患者で顕著な効果を報告している。

2010年に篠原患者会代表が東京保険医協会を訪問、協会として支援を開始した。筆者は一開業医として、篠原代表が翻訳した海外文献、診断基準、講演録などの医学監修、上映会での講演、医師会・保険医協会での発表、厚労省、東京都など行政要請行動での医学的説明、研究協力者との打ち合わせなどをしながら、徐々にME/CFS患者の外来治療を始めた。

患者会では2016年10月に米国のME/CFS専門家、国立精神神経医療研究センターの山村隆先生、鄭忠和前鹿児島大教授(和温療法開発者)を招請して「ME/CFSも治療の時代へ」と題する国際シンポジウムを開催した。ハーバード大コマロフ教授は、米IOM(医学研究所)が全世界9000以上の論文をレビューし、「ME/CFSは生物学的ベースの疾患である」と結論付けたことが米国医学会を納得させ、国を挙げて研究に動き出した経緯を報告。前国際ME/CFS学会長のクライマス教授は、ME/CFSの基礎・臨床面での知見と現在進行形の臨床試験について報告し、同疾患が神経免疫疾患であることを強調した。講演内容と共に患者に勇気を与えたのは、日本神経学会代表理事の高橋良輔京都大教授の開会あいさつであった。高橋教授は、コマロフ教授と山村先生と共同で、ME/CFSの神経系異常についての論文を執筆し、日本神経学会誌へ掲載する予定である。

今まで患者たちは、病院を受診しても普通の検査では異常が認められないために「心因性」疾患として心療内科、精神科へ紹介されることも多々あった。見慣れぬ疾病の診療には腰が重いものであるが、治療法の開発、診療拠点の構築の途において、是非日常診療への参与を諸先生へお願いしたい。

全文はこちらからご覧いただけます。HPから全文をダウンロードする許可を下さった保団連に感謝致します。

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