16.12.15毎日メディカルに申理事の記事掲載

16-12-15mmj%e3%81%ae%e8%a1%a8%e7%b4%99医学誌ランセットに2016年4月16日付けで、「慢性疲労症候群患者の自殺リスク 一般集団の7倍」と題する記事が掲載されました。毎日メディカルジャーナルはその論文を取り上げ、論文の要約と、当法人の申偉秀理事による「慢性疲労症候群は器質的疾患~神経難病として認知し、公的支援拡充を」と題する解説を掲載しました。

【論文の要約】
2007年1月~13年12月の7年間に英国のイングランドとウェールズにおいて、慢性疲労症候群(CFS)患者、がん患者、一般住民の全死因における死亡率を比較しました。CFS患者における全死因死亡率、またはがん患者の死亡率は、性・年齢別標準死亡率において、有意な差が認められず、解析から自殺による死亡を除いても結果は変わりませんでした。ところが、CFS患者の死亡率については、有意な上昇が認められました。%e8%a8%98%e4%ba%8b%e3%81%ae%e7%94%bb%e5%83%8fp1

結論として、CFS患者の全死因による死亡率の増加は認められませんでしたが、自殺による死亡率の大幅な増加が示されました。このことは、臨床医がCFS患者において自殺既遂のリスクが増加していることを認識し、自殺傾向を適切に評価する必要性を明らかにしています。

【申理事の解説】
ME/CFSは、WHOで神経系疾患(ICD-10 G93.3)と分類されており、脳と中枢神経に影響を及ぼす複雑な慢性疾患です。機能障害は全身に及び、患者の生活の質を著しく低下させる神経難病で、現在のところ有効な治療法はありません。厚労省の実態調査において、患者の約3割は寝たきりに近いという深刻な実態が明らかになりました。mmj%e3%81%ae%e8%a8%98%e4%ba%8b%e3%81%ae%e9%ae%ae%e6%98%8e%e7%94%bb%e5%83%8fp2

世界的に最も信頼されている「カナダのME/CFSの臨床症例定義」において、一次性精神疾患は除外すべきとされており、CFSにおけるうつ状態は疾患罹患による二次性のものであり、視床下部-下垂体-副腎軸の動態からも区別されます。本疾患は、一般検査によっては異常が認められず、臨床診断に頼ることなどから、しばしば心因性疾患、または詐病と扱われることも多く、周囲の無理解と偏見による患者の苦しみは大きく、ほとんどの患者が職を失うにも関わらず、社会保障を受ける道を閉ざされています。このような状況において、将来を悲観して自殺を選択せざるをえない状況に患者を追い詰めている実態が、社会に知られていません。著者らも、患者がうつ病の内因性要素を持っているのではないとしています。

2016年2月に米国国立衛生研究所(NIH)は、国立神経疾患・脳卒中研究所が主導して行う多施設研究の詳細を発表しました。ウィルス感染が引き金となって感染後ME/CFSを発症し、その結果、免疫介在性脳機能障害が起きるという総体的仮設を立て、免疫機能障害を標的にした治療薬の効果を確かめ、国の承認を得ることを目指しています。その論拠として、B細胞を枯渇させるモノクローナル抗体であるリツキシマブを使用した治療後に、患者に遅発性の臨床効果があったことを示すノルウェーの2つの論文をあげています。日本においても、2015年より国立精神・神経医療研究センター神経研究所において、本格的な研究が開始されました。また、和温療法rTMS(反復的経頭蓋磁気刺激法)などの治療法の研究も進んでいます。

結論のごとく、本疾患患者の自殺傾向を十分評価することが肝要なのは間違いありませんが、そのためには患者を追い詰める原因の除去が基本です。1)本疾患が器質的疾患であることを社会及び医療者が認識する、2)専門科である神経内科医による診断と評価、3)一般医による日頃のケア、神経難病としての公的支援の拡充、4)神経難病としての研究の促進と治療薬開発に向けた臨床治験の国内での推進が、難治性といわれ将来を閉ざされている患者に希望を与え、自殺を減らす確実な道であることを銘記すべきです。

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