16.2.15「すべての人の社会」の巻頭言執筆

2016_02篠原 三恵子
JD(日本障害者協議会)の機関誌「すべての人の社会」428号に、「『ランセット』誌の論文撤回を求める動き」と題して巻頭言を書かせて頂きました。「すべての人の社会」の巻頭言は、JDF(日本障害フォーラム)とJDの理事の方々が、毎月交互に担当しています。

ME/CFS患者の3割が寝たきりに近いことが、厚労省の実態調査によって明らかになりました。これほど深刻な病気であるにも関わらず、患者たちは詐病扱いされて苦しんできました。その上、2011年の医学誌「ランセット」に、ME/CFSの治療法として認知行動療法と段階的運動療法とが有効であるとする論文が掲載され、世界中でME/CFSは考え方を変えれば治るかのような誤解が広がりました。

昨年10月に米国コロンビア大学のブログに、論文の重大な欠陥についての記事が掲載されました。治験開始後にデータの解析方法が変更され、この病気以外の患者も含んでしまう診断基準によって参加者が選ばれており、調査の主要研究者が障害保険会社と経済的関係や顧問関係を持っていたこと等が明らかにされたのです。英国・米国の研究者患者の権利擁護団体は、データの再解析や論文の撤回を求めています。

そんな中、10月に米国の医学研究拠点である国立衛生研究所(NIH)は、ME/CFSの研究を前進させ、国立神経疾患・脳卒中研究所が主導して研究を行うと発表しました。WHOの国際疾病分類において神経系疾患と分類されているこの病気の研究の中心が、神経疾患のセクションに移されたことは画期的で、当然、日本においても神経系疾患として研究が促進されるべきです。考え方を変えても、神経難病が治るはずがないからです。

いずれランセットの論文は撤回され、病名も研究が進み、病態解明が進めば変更されるでしょう。最近、日本でも神経内科医による本格的な研究が開始されました。患者たちはたとえどんなに障害が重くとも、仕事に復帰したい、何らかの社会貢献をしたいと願っています。4月には障害者差別解消法が施行されようとしていますが、こうして一つひとつ障壁を取り除き、私達も胸を張って他の人と平等に社会参加できるよう、働きかけていくつもりです。

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