15.11 ランセットの論文の撤回を求める動き

ランセットの掲載記事2011年の医学誌ランセットに、ME/CFSの治療法として段階的運動療法と認知行動療法が有効であるとする論文(PACE trial)が掲載され、世界中の患者の間で大きな論争を巻き起こしました。この論文により、ME/CFSは考え方を変えれば治るかのような誤解を広がり、器質的疾患としての認知を妨げていました。黙っていてはこの論文の内容を容認したと受けとられかねませんので、ランセットの読者の通信欄に投書し、採用されたことを覚えていらっしゃる方もあるかと思います。

この論文に重大な欠陥があることは、患者や権利擁護者は何年も前から知っていましたが、今年10月にデビッド・チューラー博士による、「誤りによる治験: PACEによるCFSの研究の厄介な真相」と題する詳細な報告記事がVirology Blog(ウィルス学ブログ)に掲載されて以来、この研究結果の確実性、信頼性、完全性に対して著しい懸念が欧米から表明されました。イギリスの「インベスト・イン・ME」という患者団体は、ランセットの編集長に対して、論文を撤回するか論文のデータを独立して再解析することを求めており、アメリカのME・アクションという団体は、米国疾病予防管理センターと医療研究品質局に送るために、HP上で署名を集めています。

イギリスとアメリカの6人の研究者が、統計と研究デザインに広範な専門知識を持ち高い評価を受けている査読者によって、適切な感度分析をした上で、治験参加者個々人レベルでPACE trialのデータを独立して再解析することを求めた、ランセットの編集長に宛てた11月13日付けの公開書簡を訳しましたので、ご紹介致します。論文の重大な欠陥として、「疲労と身体機能の2つの主要項目について、開始基準よりも健康度が悪化している場合でも正常の範囲内とする解析が含まれていた」「200人以上の参加者がまだ臨床評価中に、先入観を抱かせるニュースレターを発行していた」「治験の途中で、疲労と身体的機能の2つの主要項目のアセスメント方法のプロトコールを変更した」「研究者は主観的な結果のみに基づいて治療の効果を主張」「ヘルシンキ宣言を遵守せず、研究者達は保険業界との関連を参加者に知らせなかった」

また、アメリカの12の患者の権利擁護団体は、上記の6人の研究者の提案に賛成すると共に、米国疾病予防管理センターと医療研究品質局に対して、PACE trialの確実性を詳しく調べ、患者を保護するために適切な処置を取るよう求めましたので、11月15日付けの手紙をご紹介致します。この論文の欠陥として以下をあげています。「6ヶ月間の疲労以外には他の症状は何も必要とされないオックスフォード診断基準にを使用して対象が選ばれた」「開始基準、改善/回復基準、データの解析方法のすべてが治験開始後に変更された」「エントリーの際のスコアより悪化していても、2つの重要な評価項目について『回復した』と数えられた」「治療が効果的であったとする主張は客観的尺度によって裏づけられてない」「参加者に先入観を抱かせる危険が非常に高い非盲検臨床試験において、規則に大いに反する行為があった」「一部の研究者に経済的利益相反があるかどうかについて参加者に明らかにされなかった」

イギリスME協会は、1428人の患者を対象に認知行動療法・段階的運動療法・ペースの調整療法を比較した294ページに及ぶ報告書を、2015年5月に発行しており、ペースの調整療法だけが有効と結論付けています。また、2015年6月の国立衛生研究所の報告書においても、2015年8月の米国CFS諮問委員会の報告書においても、同様の発表がありました。

6人の研究者の公開書簡はこちらからご覧いただけます。
患者の権利団体からの手紙 はこちらからご覧いただけます。

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