柴田未央さんの卒業論文のご紹介

クロッカス埼玉大学教養学部教養学科現代社会専修フィールド科学専攻の柴田未央さんが、「慢性疲労症候群(CFS)/筋痛性脳脊髄炎(ME)~患者の社会的孤立はなぜ生じるのか」」と題して、卒業論文を発表してくださり、所属する学部・専攻の優秀論文に選出されました。4人の会員の方からインタビュー調査を行い、一般に公開されている情報だけでは見えにくい社会的課題を、当事者の声を聞くことを通して問題として明確にし、患者にどのような困難が生じているのか、どのように生じるのか、その背景にあるものを明らかにしています。

この病気によって生じる問題の共通点を、医療に関する問題(医師の病気に対する無理解、医師の診断書作成、専門医の不足、診断の遅れ、病名の問題)、行政に関する問題(行政窓口の対応、社会保障の判定基準、所得保障、申請主義の問題)、人間関係の問題、医療・行政・人間関係の問題を複合する問題(診断基準・病気の原因等の研究、病気の証明、病気の一般認知の問題)の4項目に分け、患者全体に共通して生じえる問題を明らかにしています。

各問題を見ていくと、社会において一定の権威を持つ人々の理解不足が問題発生のものにあることが見えてきます。また、患者の社会的孤立が生じる原因をたどって行くと、根本にある社会的な背景として、我が国の専門家支配の構造が浮かび上がります。専門家支配の構造が適切でないラベリングを招き、それが社会からの承認を得られにくい状況を作り出し、社会的承認の不足が患者への誤解を生み、周囲の人間関係を不安定なものにさせ、結果として患者の社会的孤立を生み出すという構造が見えてきます。

医療者や研究者、行政関係者を含む専門家が、患者のニーズや抱えている困難さよりも、この病気を重要な社会問題として扱うに値するかを、治療や研究の判断基準として考えている点に、専門家の権威主義的な側面がうかがえます。

当事者である患者だけでなく一般の人々も、専門的な情報を取得する際には、専門家の権威を絶対的なものとして発言を受容するのではなく、そこに絶対的根拠はないかも知れないと言う懐疑心を持ちつつ、それらの情報を選定しなければなりません。この行為が、この病気に関する誤った認知を少しでも正確な認知へと変えていくことに繋がり、この病気が社会的な承認を得られる契機となり得ます。

患者自身も専門家の意向にそのまま服するのではなく、十分に自立した地位を与えられ、自ら選択を行い自分の受けるケアに関して、一定の発言力を与えられることが必要不可欠であり、専門家が提供するケアに責任を持つことが重要です。

患者が社会的な孤立から救済されるためには、社会からの承認が必要であり、その承認のためには、行政からの助成を受け研究が進むことによって病気の本質をより明確にし、専門家から正しい情報が世間に提供されることが必要です。

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