野島那津子さんの研究論文のご紹介

img045大阪大学大学院人間科学研究科博士課程の野島那津子さんが、「季刊家計経済研究Autumn号」に、「『病気』と見なされにくい病を生きることの困難~筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の病気行動に着目して」と題して、報告論文(10ページ)を発表してくださいました。野島さんは全国の8人の会員の方を訪問して、インタビュー調査を行いました。 病気行動とは、「病気であると感じている人が、自分の健康状態を規定し、適切な救済策を発見しようとする行動」だそうです。

患者数が少なく、死亡率が低く、一般の人々の関心も高くない疾患は、必要な資源が投入されず、解決されるべき問題が社会的に共有されにくい状況にあるといえます。特にMUS(何らかの身体疾患が存在するかと思わせる症状が認められるが、適切な探索を行っても、その原因となる疾患が見出せない病像)のような、疾患としての地位が必ずしも確立していない病の場合、問題がより顕在化しにくい状況にあります。

ME/CFS患者の病気行動が複雑化するのは、医療者によって訴えを否定されたり、心ない言葉を浴びせられたりするほか、医療者の無知・怠慢によって各科をたらいまわしされたりするといった背景があります。ドクターショッピングという一見過剰な行動の背景には、怠惰や精神疾患との「不敵切な」ラベルを払拭したいという患者側の機微だけでなく、バイオマーカーの存在しない疾患に対する無知・疑義・無理解という、医療者側の問題も指摘されねばなりません。

患者は診断を覆されたり周囲に「病気」とみなされなかったりすることで、「患者」であることの根幹が揺らぐような経験をしています。また、確定診断だけではME/CFSとう確固とした「病気」だと認められにくく、医療/医学的な正統性の付与だけでは社会的には「病気」と認められにくい状況にあり、確定診断後も患者としての地位が不安定なME/CFS患者は、活動的な患者となって病の正当性を自ら獲得しなければなりません。

確定診断後も「病気」と見なされにくく、症状に見合った配慮を得られない現状では、患者は家の中での移動や食事を摂ることすらままならない状態にあるにも関わらず、ただまっとうな患者として扱われ、患者として治療を受け休養することを許可されんとして、やむなく活動的な患者になるのであって、周囲から同情や援助を過剰に引き出そうとしているのはないことは、付言しておかなければなりません。

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