「国際的合意にもとづく診断基準」の共著者・三羽邦久先生のつぶやき

当会で翻訳・刊行した「筋痛性脳脊髄炎のための国際的合意に基づく診断基準」は、13カ国の26人の医師や研究者によって書かれたもので、その中に日本人の医師の方が一人おられます。富山県のミワ内科クリニック(内科・循環器内科)の三羽邦久先生です。新しい診断基準を翻訳したことをお伝えしますと、とても喜んでくださり、翻訳版を期待している患者さんや病院のスタッフにも、配布してくださるというメールをいただきました。 

クリニックのホームページには、「院長のつぶやき」というコーナーがありますが、119日の「つぶやき」を本欄に転載する許可をいただきましたので、次にご紹介致します。119日のNHKの「おはよう日本」を見て下さったこと、慢性疲労症候群の病名や診断基準がなぜできたのか、新しい筋痛性脳脊髄炎の診断基準の作成経緯などが述べられています。その中には、下記のように書かれています。 

「慢性疲労症候群」の診断基準では多くの軽症例が含まれてしまい、重症例と同じように扱われてしまうこと、また、明らかな精神化疾患例(心の問題、特にうつ病)が多数、紛れ込んでしまう、と言った問題点が指摘される様になりました。そして、「今後も問題意識を強め、積極的に取り組んで行きたいと思っております」と、結ばれています。


院長のつぶやき
http://www.miwa-naika.com/img/tubuyaki.pdf ) 

今朝のNHKのニュース番組で7時40分頃から、「慢性疲労症候群」が取り上げられていました。日常生活に介助を要するほどの重症女性患者の例が紹介されました。10数年前にアメリカ留学中に発症されたそうです。現在は、患者会の代表をされています。「慢性疲労症候群」という病名では、普通の人がちょっと疲れた程度にしか認識してもらえず、身動きするのもやっとの状態が理解してもらえないと述べられました。早く原因疾患を見つけて、しっかりした病名をつけて欲しい、治療に繋げて欲しいとの願いをおっしゃっていました。更に、最近、カナダ、イギリスやアメリカの一部で、原因疾患として「筋痛性脳脊髄炎」が提唱されているとのお話が、鈴木アナウンサーからありました。

少し、補足説明、解説を加えてみたいと思います。かつて、原因不明の長期続く慢性疲労の原因は、EBウイルス感染であるとされていた時代がありました。しかし、その後の研究から、多くの慢性疲労患者の疲労の原因をEBウイルスに求めることには無理があるとのことが判明しました。そこでまず、原因不明という原点に返ろうということで「慢性疲労症候群」という概念が出てきたわけです。1988年にアメリカのCDC(疾患予防管理センター)から診断基準が出され、1994年に改訂され、更に簡便なものになりました。日本でも比較的最近になって、これを取り入れた形で厚生省の診断基準が出ました。

この「慢性疲労症候群」という病名、診断基準は、多くの患者をできるだけもらさずに診断するということでは評価してよいのではないかと思います。また、世界的にもこの統一した診断基準による患者を対象として、暗中模索の状態から劇的に研究が進み、慢性疲労の本質に一歩一歩、近づいてきたように思われます。ただ、一方で、「慢性疲労症候群」の診断基準では多くの軽症例が含まれてしまい、重症例と同じように扱われてしまうこと、また、明らかな精神化疾患例(心の問題、特にうつ病)が多数、紛れ込んでしまう、と言った問題点が指摘される様になりました。

そこで、新たに出てきたのが、「筋痛性脳脊髄炎」という名称です。元々はカナダの委員会が発展し、国際的な委員会を組織し、「筋痛性脳脊髄炎」の診断基準を提唱し、昨年11月に、Journal of Internal Medicineという、権威ある内科雑誌にMyalgic Encephalomyelitis: International Consensus Criteriaという題名で公表しました。慢性疲労の本質は、中枢神経系の機能異常であり、これを基盤として、自律神経を含めた神経系、循環器系、消化器系、呼吸器系、内分泌系、免疫系の調節異常を来たし、多彩な症状を引き起こすというのが基本的な疾患概念です。最終的には治療にも繋がる大きな突破口になることが期待されます。

なお、昨年7月26日のお知らせにもありますように、この「筋痛性脳脊髄炎」の国際委員会に、日本からただ1人、小生が名前を連ねさせてもらっております。診断基準には、小生が特に力を入れて取り組んでいる「起立不耐症」も入っており、また、本文では、スモールハートと心拍出量の低下についても言及されています。

「慢性疲労」には、今後も、問題意識を強めて積極的に取り組んで行きたいと思っております。

 
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